災害事例研究

No.1


グラップルで伐倒木をつかんで旋回した際、つかんでいた木が枝払い中の作業者に激突した

◆災害の概要◆

現場は民有林の皆伐伐採現場で、冬期施工中であった。被災者らは前日までに伐倒したまま置いてあった木の枝払いをしていた。
伐倒木は雪に埋もれたり、枝を下にして倒れたりしているものが多く、そのままでは作業しにくいものがあり、グラップル運転者が倒れた木をグラップルでつかみ、チェーンソー作業者が作業しやすいように移動させながら、共同で行っていた。
作業が進行し、木の移動をしていたグラップルが伐倒木(シラカバ、元口27p、長さ15.8m)をつかんで、被災者らが枝払いを行っている場所に旋回したところ、つかんでいた木が伐倒木の枝払い中であった被災者の頭部右側に激突した。

◆災害発生の状況◆

  1. 現場は針葉樹と広葉樹が混生した民有林で、農地への日照障害を防ぐため、約1haの範囲を皆伐する現場であった。立木は被災前日までに伐倒作業を終えており、当日から倒れている木の枝払いをまとめて行って、50mほど離れた土場まで搬出する予定であった。
  2. 被災当日、現場では、被災者を含むチェーンソーで枝払いを行う2名と、伐倒木を枝払い作業がしやすいように移動するグラップルの運転者1名の3名が共同で枝払い、搬出作業に当たるほか、土場で玉切りをするグラップルソーの運転者(兼現場責任者)1名の合計で4名が作業に当たっていた。
  3. 林業機械は、このほかに、土場までの搬出用にブルドーザー1台を置いていた。
    午前中、グラップル運転者とチェーンソー作業者は、
    (1)
    グラップル運転者が伐倒してある木のうち、枝が下側となって倒れていたり、雪に埋もれたりしていてそのままでは枝を払いきれない木を、グラップルでつかんで枝を払う場所に移動し枝を払う側を上にして4、5本そろえて置き直す。
    (2)
    チェーンソーで枝払いを行う者2名がそろえた木の枝を払った後、グラップルで搬出用の場所に移動。
    (3)
    これらの処理した数量がまとまった都度、ブルドーザーで土場まで搬出の手順で作業を繰り返していた。
  4. 午前中は順調に仕事が進み、休憩。午後の作業にかかり、上記の手順で1回目、まず5本の枝払いを終えた。
  5. 次いで2回目の作業を開始。グラップルの運転者は、1回目の枝払いが終わった5本を搬出用の場所に移動した後、枝払いをする場所に次の木を置くため対象木の移動を始めた。
  6. グラップルの運転者は枝払いをする場所に4本目の木を置き、続けて5本目をつかんで旋回移動させたところ、被災者ともう1名がすでにこの場所に置かれた4本の木の枝払い作業を開始しているのが目に入った。
  7. 被災者の位置がグラップルと10m程まで接近していて危険なため、グラップルの運転者は急いでグラップルの旋回を止めたが、慣性力でつかんでいた5本目の木が振れ、被災者の頭部右側に激突した。
  8. 現場責任者は携帯電話で事業体事務所に救急車の手配を要請。被災者は救急車から救急ヘリコプターに乗り継いで病院に搬送されたが、脳挫傷により死亡した。

図:災害事例研究No.01
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◆災害発生の原因◆

この災害の問題点は、接触危険範囲にある人と林業機械の共同作業に関する安全作業手順について、共同作業に当たる枝払い作業者とグラップルの運転者間で上記3に記したような手順で一応の認識があったものの、4本あるいは5本といった一度に処理する数量について、明確に取り決めを行っていなかったため、作業者間では時によりそれぞれの判断で作業が行われ、意思の疎通を欠いていたことが直接原因と考えられるが、この外に

  1. 木をつかんで旋回を始める前に、指差し呼称をして安全を確認しなかったこと。
  2. グラップルの旋回速度が速いため、急停止しても装置の振れ、つかんでいた木の振れが大きかったこと。
  3. 林業機械を使用するに当たっての作業計画を策定していないこと。

が原因として考えられます。

◆災害防止対策◆

  1. 高性能林業機械等大型林業機械による伐出作業を行う際は、作業についてリスクアセスメントを行い、作業にかかる場所の広さ及び地形、林業機械等の種類及び能力、伐倒木の種類及び形状等に適応する作業計画を定めて、それらの計画を基に作業を行うこと。
  2. 枝払い作業等で林業機械等と労働者が同一場所で作業に従事する際は、作業手順や作業者相互の合図を定め、接触災害の防止を図ること。

災害が発生した作業方法は、皆伐現場で、一斉に伐倒を行い、倒した木は数日後まとめて枝払いして土場に運搬しようとするものです。
林業機械を用いて行うこの種の作業においては、人と林業機械の作業域を分画し、両者の接触・接近を防止することを第一に、上記の対策を推進していくことが重要でしょう。
災害事例のグラップルは従来機種の林業機械ですが、一方、林業の現場では近年、プロセッサーやハーベスターなどの高性能林業機械の普及が進んでいます。
林業が労働集約的産業の域をようやく脱して、これまで人力に頼っていた危険で効率の悪い伐木造材等の作業の多くが機械化されることと、それにより人と林業機械の作業域が分画されて安全化することが期待されます。
しかし、林業機械の安全はその構造上のリスクもあります。また、作業が効率重視に偏ると林業機械と人との接近、接触が避けられない落とし穴として常に存在することを心得ておかなければなりません。

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