災害事例研究

No.104


【林業】つるがらみの木を伐倒、幹が裂けて元口が跳ね上がり激突

 つるがらみのカシノキの木を伐倒したところ、幹の元口が裂けて跳ね上がり裂けた元口部分が被災者に激突し死亡。
 被災者は急傾斜地で伐倒作業中、先に伐倒したミズメの木と次に伐倒したカシノキが、つるがらみになっていて、つるで強く引っ張られていたため、カシノキの追い口を2分の1程度まで切ったところ、幹が裂けて元口から上方に3メートル程度跳ね上がり、被災者の胸に激突した。

◆災害発生の原因◆

  1. つるがらみの難しい木であったが、熟練者に相談せずに自己の判断で作業したこと。
  2. 退避が不十分であったこと。
  3. つるがらみの木の伐倒方法が適切ではなかったこと。

◆災害防止対策◆

  1. 伐倒する前に、伐倒木や隣接木との状態等(立木の傾き、枝がらみ、つるがらみ、重心の位置等)をよく観察すること。危険が予想されるときは、事業者の指示を受け、熟練者の指導のもとに作業を行うこと。
     なお、裂けやすい樹木と判断した場合は、事前にワイヤロープ、麻ロープなどで追い口の上部に4~5回強く巻き付けるなど裂け防止の措置をしてから行うこと。
  2. 立木が倒れはじめたら、あらかじめ選定してある退避場所に速やかに退避すること。
     退避場所は伐倒方向の反対側の斜面上方で3メートル以上離れた箇所とし、できるだけ立木などの陰を選ぶこと。
     なお、危険が予想される場合は、チェーンソー等の道具をその場に置いてとにかく急いで退避すること。
  3. つるがらみの多い林分の伐採を2年~3年前から計画している場合は、事前につる切りを先行して行い、つるが枯れてから伐倒作業を実施することが望ましい。
     やむを得ずつるがらみの立木を伐倒するときは、立木の重心の位置、材の腐れ、つるがらみ、枝がらみ等の状況等に応じて伐倒方向の決定、作業方法を選択すること。
     また、つるがらみの木の伐倒は、事前につるを切り、除去しておくことが必要であるが、つるは1本の木にからまっているだけでなく、立木の上部で隣接木と絡み合っていることが多く、注意が必要である。
     (注)つる類のうち、フジツル、ヤマブドウ、クズ等は、枯れても強い材質を保持しているものもあり、根元を事前に切っておいたからといって安心できないので注意を要する。
     なお、裂けやすい樹種としては、シオジ、セン、ケヤキ、クリ、キハダ、ミズメ、ウダイカンバ、ヤチダモ、ハンノキ、カラスザンショウ、ネムノキなどがある。
     
     当該事例のように、すでに伐倒した木と伐倒予定の立木とが、つるがらみになっているときは、なた、おの等でつるを切り離すことができるので、必ず、伐倒対象木を伐倒する前につるを切断しておくこと。
     つるがらみの木の伐倒による労働災害は、毎年、林業死亡災害の約1割程度を占めている。これらの災害を分析すると、伐倒木と隣接するつるがらみの立木が枯れている場合、上部の状況を確認しないで、つるがらみを認識しないまま伐倒する場合、つるがらみを認識していながら適切な伐倒方法を講じることなく伐採した場合等状況判断が不完全な場合等が多くみられる。
     つるがらみを軽く見ないで、伐倒木のみならず、からんでいる立木の状態を十分見極めた対策が必要である。
     

<参考>

林業・木材製造業労働災害防止規程(抜粋)

(伐倒作業前の準備)
第55条 会員は、伐倒作業に当たり、作業者に次の事項について事前に確認させ、必要な措置を行った後に伐倒させなければならない。
 (2) 立木の樹種、重心、つるがらみや枝がらみの状態、頭上に落下しそうな枯損木、枯れ枝等の有無を確認すること。
(枝がらみの木、つるがらみの木の伐倒)

第56条
2 会員は、つるがらみの木を伐倒する場合には、作業者に、できる限り伐倒前につる類を取り除かせなければならない。事前に取り除くことができない場合には、同じ方向に同時に伐倒することとし、まず、伐倒方向の側にある木の受け口を大きめに作り、追い口を切り、くさびを打って重心を移動させておき、次に他の木を、先にくさびを打ったままにしておいた木の方向に倒し、同時に伐倒させなければならない。
(障害物の取り除き)
第57条 会員は、伐木の作業を行う場合には、作業者に、それぞれの立木について、かん木、枝条、つる、ささ、浮石等で伐倒等の際に危害を受けるおそれのあるものを、あらかじめ、取り除かせなければならない。
(追いづる切り)
第58条 会員は、偏心の程度が著しい立木又は裂けやすい木では、追いづる切りにより伐倒させなければならない。
(退避場所の選定)
第59条 会員は、伐木の作業を行う場合には、作業者に、あらかじめ、退避場所を選定させ、かつ、伐倒の際に迅速に退避させなければならない。
2 会員は、前項の退避場所は、伐倒方向の反対側で、伐倒木から十分な距離があり、かつ、立木の陰等の安全なところでなければならない。ただし、上方向に伐倒する場合、その他やむを得ない場合は、退避場所を伐倒方向の横方向とすることができる。路肩、傾斜地等であって、車両系木材伐出機械の転倒又は転落により運転者に危険が生ずるおそれのある場所においては、転倒時保護構造を有し、かつ、シートベルトを備えたもの以外の車両系伐木機械を使用しないよう努めるとともに、運転者にシートベルトを使用させるように努めなければならない。

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