災害事例研究

No.107


【林業】架線集材作業中、荷掛材を吊り上げた時に原木が岩盤上を横滑りして激突

 被災者は急傾斜地で、林業架線作業による全幹集材のため、先山で荷掛け作業をしていた。元口直径40cm、末口直径14cm、長さ21mのスギ原木の荷掛けをした後、荷上索を巻くように集材機運転者へ無線連絡した。
 荷掛材の元口が吊り上がり始めた時に、末口側が露出していた岩盤上を滑り始め、被災者は横滑りした荷掛材に激突して死亡した。

◆災害の発生状況◆

 災害発生当日、被災者と同僚2名は林業架線作業(エンドレスタイラー式)及びプロセッサーによる造材作業に従事していた。
 被災者は土場から300m程離れた先山(傾斜約45度)で荷掛け作業を1人で行っていた。
 集材現場は急傾斜地に地面が盛り上がったような岩盤が散在していた。
 横取り集材木の巻き上げ時に集材木が岩盤に接触しないように、巻き上げを一旦止めてキャレジの位置を変え、再度巻き上げる方法が採られていた。
 集材機運転者は被災者と無線合図により、荷上げ索を巻き始めた時、被災者から「ストップ」の合図を受けて、巻上げを停止した。
 その後、被災者からの合図がなく、呼び掛けにも応じなくなった。
 荷掛けしていた現場は、同僚2人からは見えない位置であり、直ちに同僚が荷掛け現場へ行ったところ、荷掛材の元口から16mの位置と、斜面下方の切り株との間に挟まれ、意識がない状態で倒れている姿が発見された。
 被災の状況について、他の目撃者もいないため、発見された状況から推測すると、災害発生時の集材機の巻き上げ時に集材木が岩盤に接触しそうになったので、「ストップ」の合図を集材機運転者に送ったと思われるが、ストップした直後に、集材木の先端部分が露出していた岩盤の上を被災者の方向へ横滑りして、激突したと推察される。

◆災害発生の原因◆

 被災者の退避場所は特定できないが、荷掛けされた原木と被災位置から推察すると、被災者は荷掛けした後に、荷掛材の斜め下方にある盛り上がった岩盤付近に退避していたため、原木の先端部分が岩盤の上で横滑りが始まった時には、避けることができなかったものと推察される。

◆災害防止対策◆

  1. 荷掛け者の退避場所は、集材木直下や斜面の下方へは退避せず、斜面の上側に十分な距離を確保した場所を選定すること。
  2. 荷掛け者から集材機運転者への合図は、事前に選定した安全な退避場所に退避してから運転者に「巻き上げヨシ」の合図を送ること。
  3. 荷掛け者は、退避場所から「ストップ」の合図を送った後は、荷上げ索の完全な静止、集材木や他の伐倒木等の安定を確認してから次の行動に移すこと。

◆多発する荷掛け時の災害◆

 林業架線作業による全幹集材作業が増える傾向が見られる。
しかしながら、林業架線作業を行う事業者は少なく、架線作業に必要な技能者も不足しており、災害の発生が懸念される。
 特に急傾斜での伐倒、伐出作業は災害リスクが高いため、リスクアセスメントを丁寧に行って、災害を回避することが肝要であると考える。
 集材木の横滑りの予測は、作業経験が豊富な者であればできるものと思われる。
 経験や教育で災害防止に必要な知識を備えた架線集材作業の熟練者を育てることが、急務となっている。

<参考>

林業・木材製造業労働災害防止規程

(立入禁止)

第186条 会員は林業架線作業を行う場合には、次の各号のいずれかに該当する箇所には、立ち入りを禁止する旨の明確な表示を行い、第2項に定める場合を除き、作業者を立ち入らせてはならない。
  (1) 略
  (2) 原木等を荷掛けし、又は集材している下方で、原木等が転落し、又は滑ることにより、作業者に危険を及ぼすおそれのあるところ

(荷掛け作業)

第211条 会員は、荷掛け作業を行う場合には、作業者に次の各号に掲げる事項を行わせなければならない。

2 会員は、リスクアセスメント実践マニュアル等を活用して、定期的にリスクアセスメントを行うように努めなければならない。
 (1) 略
 (2) 巻き上げの際には、安全な箇所に退避した後、巻き上げの合図をすること。

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