災害事例研究

No.111


【林業】牽引具で引きながらスギを伐倒中、かかり木になったので、さらに強く牽引したところ、かかり木は外れたものの、元口が被災者の右足に跳ね、足首を挟まれた

 被災者は間伐のため同僚とチルホールで牽引しながらスギを伐採したところ、かかり木になった。かかり木を外すため、さらにチルホールで強く牽引したところ、かかり木は外れたが、その反動で引っ張っている方向に元口が1.8メートル跳ね、退避していた被災者の右足に当たり、跳ねた元口と隣接した立木に右足首を挟まれた。

◆災害の発生状況◆

 午前8時に現地に集合し被災者は同僚1名と森林整備現場に入り、牽引具を使用して伐倒をしていた。午前10時30分に作業中の写真を撮るために現場指揮者が合流した。
 しばらく打合せをして作業に入り、同僚が牽引具を引き、被災者がチェーンソーで伐倒作業を行っていた。樹高27メートル元口31センチのスギがかかり木になったので、処理方法の打合せをしてから、もう一度チルホールで強く引くとかかり木の先端部が外れ倒れた。反動でかかり木の元口が1.8メートル引っ張っている方へ跳ねた。約1.8メートル離れた場所に退避していた被災者の右足が跳ねた元口と立木に挟まれた。

◆災害発生の原因◆

  1. 伐倒者が十分退避していなかったこと。
  2. 伐倒者と牽引者の合図はアイコンタクトで実施されており、コミュニケーションが不足していたこと。
  3. 現場指揮者が現場にいたにもかかわらず、かかり木処理による危害を防止するための必要な事項を指示していなかったこと。

◆災害防止対策◆

  1. 退避場所は、立木の陰などの安全なところを選ぶこと。本事例のように牽引方向と退避する方向が同じ場合は、かかり木の元口の跳ねっ返りなどを考慮して退避場所を選定すること。
  2. 大きな声で合図確認と指差し呼称を実施すること。
  3. かかり木の処理業務は、指示を要する伐木であり、危害を防止するための必要な事項(作業方法、作業手順、退避場所等)を指示させること。

林業・木材製造業労働災害防止規程〈抜粋〉

(指示を要する伐木)
第53条 会員は、次の各号に掲げる業務に就かせる場合には、安衛則第36条第8号に係る特別教育修了者のうちから技能を選考のうえ、会員が指名した者に、伐倒による危害を防止するための必要な事項を指示させなければならない。
(1)~(5) 略 
(6) かかり木の処理の業務
(退避場所の選定)
第59条 会員は、伐木の作業を行う場合には、作業者に、あらかじめ、退避場所を選定させ、かつ、伐倒の際に迅速に退避させなければならない。
2 会員は、前項の退避場所は、伐倒方向の反対側で、伐倒木から十分な距離があり、かつ、立木の陰等の安全なところでなければならない。ただし、上方向に伐倒する場合、その他やむを得ない場合は、退避場所を伐倒方向の横方向とすることができる。
(合図確認と指差し呼称)
第64条 会員は、チェーンソーによる伐木の作業を行う場合には、作業者に、次の各号に掲げる事項を行わせなければならない。
(1) 予備合図を行うこと。
(2) 他の作業者が退避したことを応答合図により確認すること。
(3) 本合図及び指差し呼称による確認を行った後、伐倒者以外の作業者が、立入禁止区域より確実に退避したことを確認してから伐倒すること。
(4) 伐倒を完了した後、終了合図をすること。

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