災害事例研究

No.122


【林業】かかり木を放置したまま、別の木の枝払いを行っていたところ、かかり木が外れて被災者に激突した

 被災者はチェーンソーを用いてハンノキ(胸高直径30 cm、樹高17.9m)を伐倒したところ、トドマツ(胸高直径22cm、樹高18m)にかかり木となった。被災者はハンノキのかかり木を放置したまま、前に伐倒していたストローブマツ(胸高直径22.9cm、樹高14.5m)の枝払いを行っていたところ、かかり木のハンノキが落下し、被災者は下敷きとなったと推察された。

◆災害の発生状況◆

 当該現場では、災害発生の3日前から、ストローブマツ等の間伐作業を行っていた。 間伐方法は、チェーンソー作業者がその都度伐採する木を選木し、伐倒していた。
災害発生当日

  1. 午前7時頃事業場代表者と6人の作業者が現場に到着し、代表者からかかり木に気をつけること等の作業上の注意が行われた。
  2. 午前7時15分頃、各自は持ち場に向かい、作業を開始した。チェーンソー作業者は、被災者を含め2名で、離れた場所で作業をした。
  3. 土場で昼食休憩後、午後0時30分頃作業を開始した。
  4. 午後2時45分頃、各自の作業場所で休憩。
  5. 午後3時頃、作業を開始した。チェーンソー作業者の同僚は、午後3時以降、被災者が操作するチェーンソーの音を聞いていない。
  6. 午後4時30分頃、作業が終了した。被災者が土場に戻ってこなかったので、全員で探したところ、土場から約100メートル離れた場所で、被災者がハンノキの下敷きとなっているのが発見された。
     発見時、被災者の息はなく、衣服や周囲に血痕はなかった。
     チェーンソーは被災者の頭部付近にあったが、エンジンは止まっていた。
  7. ハンノキと交差する状態で、伐倒されていたストローブマツの枝払いが、交差箇所まで終わっていた。

立木の状態について

  1. かかり木となったハンノキ(広葉樹)
    ・受け口は、南方向に切られていた。
    ・受け口下切りの深さは10センチメートルと伐根直径45cm の5分の1程度であり、チェーンソーの刃を何度か入れ直した痕跡が認められた。
     受け口の斜め切りの角度はほとんどなく、ほぼ水平に切られていた。
    ・追い口は、受け口とほぼ同じ高さであった。
    ・つるは、有効に機能したとは認められなかった。
  2. 枝払いを行っていたストローブマツ(針葉樹)
  3. 受け口は、南方向に切られていた。
    受け口の下切りの深さは8センチメートル、伐根直径30cmの4分の1程度であった。
    ・追い口は、受け口より4センチメートル高い位置で切られていた。
    ・つるは、有効に機能したことが認められた。

◆災害発生の原因◆

  1. 被災者が、かかり木の下に立ち入ったこと。
  2. かかり木となったハンノキの伐倒方向が、予定の方向とずれ、かかり木となったこと。その原因として、受口が浅く、つるが機能しなかったことが考えられる。
  3. かかり木処理等伐木作業に係る安全教育が不十分であったこと。

◆災害の防止対策◆

  1. 関係労働者をかかり木の下に立ち入らせないこと。
  2. 立木の伐木作業を行なう際は、適切な受け口を作り、つるを機能させ、予定伐倒方向に伐倒させること。
  3. 労働安全衛生規則「伐木作業における危険の防止」、「かかり木の処理の作業における危険の防止」及び「チェーンソーによる伐木等作業の安全に関するガイドライン」の周知を図り、伐木作業に係る教育を徹底すること。

〈労働安全衛生規則〉

(伐木作業における危険の防止)
第477条 事業者は、伐木の作業(伐木等機械による作業を除く。
以下同じ。)を行うときは、立木を伐倒しようとする労働者に、それぞれの立木について、次の事項を行わせなければならない。
一~二 略
三 伐倒しようとする立木の胸高直径が二十センチメートル以上であるときは、伐根直径の四分の一以上の深さの受け口を作り、かつ、適当な深さの追い口を作ること。この場合において、技術的に困難である場合を除き、受け口と追い口の間には、適当な幅の切り残しを確保すること。
2 立木を伐倒しようとする労働者は、前項各号に掲げる事項を行わなければならない。
(かかり木の処理の作業における危険の防止)
第478条 事業者は、伐木の作業を行う場合において、既にかかり木が生じている場合又はかかり木が生じた場合は、速やかに当該かかり木を処理しなければならない。ただし、速やかに処理することが困難なときは、速やかに当該かかり木が激突することにより労働者に危険が生ずる箇所において、当該処理の作業に従事する労働者以外の労働者が立ち入ることを禁止し、かつ、その旨を縄張、標識の設置等の措置によつて明示した後、遅滞なく、処理することをもつて足りる。
2  事業者は、前項の規定に基づき労働者にかかり木の処理を行わせる場合は、かかり木が激突することによる危険を防止するため、かかり木にかかられている立木を伐倒させ、又はかかり木に激突させるためにかかり木以外の立木を伐倒させてはならない。
3  第一項の処理の作業に従事する労働者は、かかり木が激突することによる危険を防止するため、かかり木にかかられている立木を伐倒し、又はかかり木に激突させるためにかかり木以外の立木を伐倒してはならない。

〈チェーンソーによる伐木等作業の安全に関するガイドライン〉

1~4 略
5 (1)~(3) 略
(4) 基本的伐倒作業
ア 伐倒作業は、正しい受け口切り及び追い口切りによって、つるを正しく残し、2個以上の同一形状のくさびを使用して行うことを原則とすること。
イ  受け口切り
(ア) 略
(イ) 受け口の下切りの深さが伐根直径の1/4以上となるように水平に切ること。(以下略)。
(ウ) 受け口の斜め切りは、下切りに対して30度から45度までの角度で行うこと。このとき、下切り及び斜め切りの終わりの部分を一致させること。
(エ) 略
ウ 追い口切り
(ア) 追い口切りは、受け口の高さの下から2/3程度の位置とし、水平に切り込むこと。
(イ) 追い口切りの切込みの深さは、つる幅が伐根直径の1/10程度となるようにし、切り込みすぎないこと。

林業・木材製造業労働災害防止規程〈抜粋〉

(かかり木の処理)
第54条 会員は、かかり木が生じた場合には、作業者に当該かかり木を速やかに処理させるとともに、次の各号に掲げる措置を講じなければならない。
(1) 当該かかり木の処理の作業について安全な作業をさせるため次のアからオまでの事項を行わせること。
ア~ウ 略 
エ  かかり木が生じた後、やむを得ず当該かかり木を一時的に放置する場合を除き、当該かかり木の処理の作業を終えるまでの間、当該かかり木の状況について常に注意を払うこと。
オ 略
(2) 作業は、できるだけ2人以上の組となるように調整すること。
(3) 略

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