災害事例研究

No.123


【林業】正確な受け口、追い口切り、つるの切り残しをしなかったため、受け口を切った伐倒方向からの風により、伐倒方向とは反対の方向に倒れ、被災者に激突

 被災者は、スギ皆伐現場において胸高直径が20mのスギ立木の受け口、追い口を切ってから手で押して倒していたが、伐倒方向からの風等により倒れなかった。
 被災者は倒れなかったスギをそのままにして、斜面上方の別の立木を利用して、倒れなかったスギを浴びせ倒しにより倒そうと受け口を切っていたところ、倒れなかったスギが被災者の方向に倒れ、激突された。

◆災害の発生状況◆

 傾斜が緩やかなスギ林において、3名で伐出作業を行っていた。
 被災者がスギ立木のチェーンソー伐倒作業を行い、他の2名がプロセッサーによる造材作業とフォワーダによる運搬作業に従事していた。
 11時頃、伐倒者のチェーンソーの音がしなくなったことに気付き、探したところ、胸高直径20、樹高18mのスギ立木(以下「加害木」という。)の下敷きになり、うつ伏せ状態で倒れている被災者を発見した。
 同僚の証言、加害木等及び周辺の状況から推察するに、被災者は、受け口、追い口を作成した後に、手で押してスギ立木を倒すようにしていたが、当該加害木については伐倒方向からの向かい風もあり、倒れなかった。そこで、被災者は、当該加害木の伐根の位置から斜面の上方に2.6m離れた別のスギ立木(胸高直径18cm)を利用して浴びせ倒しにより倒そうと考え、別のスギの受け口を切っている作業中に、風で押された加害木が被災者の方向に倒れ、直撃したものと推察された。

◆災害発生の原因◆

  1. 正確な受け口、追い口、つるが作られていなかったこと。
    ・加害木の受け口、追い口とも伐倒方向から伐根を見て左下がりになっており、被災者は腰高のままチェーンソーを操作し、基本である水平切りが実施されていなかったこと。
    ・受け口の斜め切りと水平切りの会合線が一致しておらず、水平切りの終点は、斜め切りの終点より2.5cm深く切られていたこと(イラスト参照)。
    ・追い口の終点は、本来の受け口の会合線となるべき部分の上部まで切り込まれていたため、つるは全く残っていない状態であったこと。
  2. くさびを使用せず、手で押し倒すことを常態として行っていたこと。
    ・作業場所の径級が20cm程度とあまり太くないことと、作業を急いでいたこと等から、くさびを使用せず、手で押して倒していたこと。
  3. 受け口、追い口を切って不安定な状態となっている立木を一時的にでも、放置し他の作業を行ったこと。
  4. 風の向き、風の強さに対して注意を怠ったこと。
    ・伐倒方向からの風が吹いていたのに、風上の方向に伐倒しようとしたこと。
    ・受け口と追い口を切った危険な立木の風下で、さらに浴びせ倒しの作業に取りかかっていたこと。

◆災害の防止対策◆

  1. 伐倒方向の決定は、気象条件、立地条件及び伐倒木の特質等を見極め、慎重に決定すること。
  2. 伐根直径の1/4以上の受口及び適当な深さの追口切りを行い、適当な幅のつるを確保すること。
  3. 胸高直径が20cm以上の場合には、くさびを用いて確実な重心移動を行って倒すこと。
  4. 常に風の向き、風の強さについて注意を払い、安全な伐倒方向を選択すること。

林業・木材製造業労働災害防止規程〈抜粋〉

(伐倒作業前の準備)
第55条 会員は、伐倒作業に当たり、作業者に次の事項について事前に確認させ、必要な措置を行った後に伐倒させなければならない。
(1)林道、歩道等の通行路及び周囲の作業者の位置、地形、転石、風向、風速等を確認すること。
(2)~(5)略
(受け口及び追い口)
第61条 会員は、チェーンソーによる伐木の作業を行う場合には、作業者に、それぞれの立木について、次の各号に掲げる事項を行わせなければならない。
(1) 受け口の深さは、伐根直径(根張りの部分を除いて算出するものとする。)の4分の1以上とすること。ただし、胸高直径が70センチメートル以上であるときは、3分の1以上とすること。
(2)  略
(3) 追い口の位置は、受け口の高さの下から3分の2程度の高さとし、水平に切り込むこと。
(4) 追い口切りの切り込みの深さは、つるの幅が伐根直径の10分の1程度残るようにし、切り込み過ぎないこと。
(くさびの使用)
第62条 会員は、チェーンソーによる伐木の作業を行う場合において、伐倒しようとする立木の重心が偏しているもの、あるいは、胸高直径が20センチメートル以上のものを伐倒しようとするときは、作業者に、同一形状かつ同じ厚さのものを組みにして、くさびを2本以上用いること等立木が確実に伐倒方向に倒れるような措置を講じさせなければならない。
2 会員は、作業者に第1項の作業を行わせる場合には、次の各号に掲げる事項を行わせるよう努めなければならない。
(1) くさびは立木の大きさに応じて本数を増やすこと。
(2) くさびの打ち込み時のずれ及び凍結時の抜けの防止のため、表面を滑りにくく加工したくさびを使用すること。

〈労働安全衛生規則〉

(伐木作業における危険の防止)
第477条 事業者は、伐木の作業(伐木等機械による作業を除く。以下同じ。)を行うときは、立木を伐倒しようとする労働者に、それぞれの立木について、次の事項を行わせなければならない。
一~二 略
三  伐倒しようとする立木の胸高直径が二十センチメートル以上であるときは、伐根直径の四分の一以上の深さの受け口を作り、かつ、適当な深さの追い口を作ること。この場合において、技術的に困難である場合を除き、受け口と追い口の間には、適当な幅の切り残しを確保すること。
2 立木を伐倒しようとする労働者は、前項各号に掲げる事項を行わなければならない。

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