災害事例研究

No.127


【林業】ハーベスタで掴み損ねた材が斜面を滑落し、被災者に激突

 当日、被災者は荷掛けが完了した旨を無線でハーベスタの運転者に知らせた後、急斜面の上側の作業道に向かって歩道を登っていった。
 ハーベスタの運転者は、作業道から付属ウインチで集材作業を開始し、作業道脇まで荷揚げしたところで、ハーベスタで集材木を掴んだままスリングロープを外して、集材木を集積するために、ハーベスタで掴み直そうとしたところ、掴み損なったため、集材木が斜面を滑落し、斜面の下から歩道を登ってきた被災者に激突した。

◆災害の発生状況◆

 災害発生場所は、竹が混在している傾斜40度の杉林の皆伐作業の現場であった。
 作業は3名で行っており、使用重機はハーベスタ(0.45t)ウインチ付き、グラップル機、トラックを使っていた。
 災害発生当日は、荷掛け作業を被災者が行い、運転手Aはハーベスタのウインチと掴み具を操作して集材し、運転手Bはハーベスタが集積場に集積した原木を木材グラップル機でトラックに積み込む作業を行っていた。
 午後3時頃にAはトラックで積み込まれた材を運搬するために現場を離れた。
 その後、Bは、ハーベスタを操作して集材作業を始めた。被災者とBは無線機で連絡を取りながら作業を行っていた。
 作業終了時間が近づいた午後5時ごろ、被災者は最後の全幹集材木(欠損木で元口径50㎝、長さ25m)の荷掛けを行い、Bへ荷掛けが完了したことを連絡した。
 Bは作業道脇まで集材作業を行った後、集材木をハーベスタで掴みながら、スリングロープを外した。
 その後、集材木を傍に集積するため、掴み直そうとしたが、掴み損なったため集材木が傾斜地を滑落した。
 その時、傾斜地を斜面の下側の歩道を登って来た被災者の所へ材が滑落して激突した。

◆災害発生の原因◆

  1. ハーベスタが作業している下側斜面に被災者が立ち入ったこと。
  2. ハーベスタの運転位置から荷掛け中の被災者を目視できなかったので、無線機で連絡をしていたが、被災者がどのルートで作業道まで登ってくるのかハーベスタ運転手は確認していなかったこと。
  3. ハーベスタによる掴み損ないが起きても、集材木が滑落しない場所で掴み直しをしなかったこと。
  4. 車両系木材伐出機械を使用するにあたって作業計画書が作成されていなかったこと。

◆災害の防止対策◆

  1. 視界に入らない作業では上下作業が生じ易くなるので、ハーベスタ運転手は荷掛け作業者の退避の確認等を無線で確認すること。
  2. ハーベスタでの集材作業では、作業開始、終了する都度その旨を連絡するなど安全確認を徹底すること。
     また、安全確認の内容については、作業マニュアル等で明確にしておくこと。
  3. 2については、作業開始時に確認方法を作業者間で日々確認しておくこと。
  4. 集材木が滑落するような場所での集積作業は行わない。ただし、やむを得ず集材木が滑落するような場所で集積作業を行う場合は、滑落防止対策を講ずること。
  5. 歩道等は作業の進捗状況に応じて日々使用する場所が変わるので、作業開始前に安全な通路を確保(ルートの確認)しておくこと。
  6. 車両系木材伐出機械を使用する作業では、地形に応じた作業方法等、綿密な作業計画を作成し、作業者全員に周知をすること。

◆進まない傾斜地の滑落防止対策◆

 傾斜地での集材作業は広く行われており、荷掛け側と集材する側の連携に絡んだ災害は後を絶ちません。
 通常時の連絡体制はできていても、作業終了間際における安全確認が万全でなかったことが懸念されます。
 今回の災害では状況から双方の思い込みに原因があると思われます。
 林業は危険がいたるところ潜んでいるため、連携した作業では双方が安全確認をどこまで実施するかが課題と思われます。

林業・木材製造業労働災害防止規程〈抜粋〉

(合図等)
第152条 会員は、簡易架線集材作業を行うときには、簡易架線集材装置の運転者と荷掛け、又は荷外しをする者を指名して、その者に作業を行わせなければならない。
2 会員は、作業者間の連絡を確実にするため、トランシーバー又は電話等の通信装置を設け、又は一定の合図を定めて、当該合図を行う者を指名して、その者に合図を行わせなければならない。
簡易架線集材装置の運転者は、指名を受けた者による指示又は合図に従わなければならない。
(立入禁止)
第153条 会員は、簡易架線集材作業を行うときは、次の箇所に作業者を立ち入らせてはならない。
(1)原木等を荷掛けし、又は集材している場所の下方で、原木等が転落し、又は滑ることにより、作業者に危険を及ぼすおそれのあるところ
(2)~(3)略

(調査及び記録)
第138条 会員は、簡易林業架線作業(簡易架線集材装置の組立て、解体、変更若しくは修理の作業又はこの設備による集材をいう。以下同じ。)を行うときは、集材機の転落、地山の崩壊、支柱の倒壊等による作業者の危険を防止するため、あらかじめ当該作業に係る場所について広さ、地形、地盤の状態、支柱とする立木の状態及び運搬する原木等の形状等を調査し、その結果を記録しなければならない。

(作業計画)
第139条 会員は、簡易林業架線作業を行う場合はあらかじめ前条の調査により知り得たところに適応し、次の各号に掲げる事項を含む作業計画を定め、かつ、当該作業計画に基づき作業を行わなければならない。
(1)支柱及び主要機器の配置の場所
(2)~(4) 略
(5) 簡易林業架線作業の方法
2  会員は、第1項の作業計画を定めたときは、同項(1)(2)(3)及び(5)について、関係作業者に周知させるとともに、当該計画により作業を行わせなければならない。

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