災害事例研究

No.12


【林業】立木を山側に伐倒したが、左斜め上方にあった立木の枝に掛かって倒れなかったため、伐倒方向を谷側に変更して伐倒したところ、伐倒木の元口が跳ねて直撃された

 スギ人工林の間伐作業地において、傾斜約40度の斜面にあったスギを山側に伐倒したが、左斜め上方にあった立木の枝に掛かって倒れなかったことから、伐倒方向を谷側に変更して伐倒したところ、伐倒木の「ツル」が引きちぎれて伐倒木の元口が横に跳ねた。このため、伐倒者が背中を直撃されて転倒し、近くにあった立木に激突した。

◆災害発生の状況◆

  1. 被災者は、同僚2名とスギ人工林(林齢約50年生)の間伐作業に従事していた。
  2. 被災当日、被災者は、作業道から約31 m下方の傾斜約40度の斜面にあったスギ(樹高16 m、伐根長径46 cm、伐根短径36 cm)を山側に伐倒するにあたり、伐倒方向の規制を確実にするために、山際から約1 . 9 mの位置に台付けロープを掛け、作業道上から、スイングヤーダ機能を備えたプロセッサによりけん引することとした。
  3. 被災者は、山際から約50 cm の位置に、受け口切りを行い、追い口切りを行った後、プロセッサの運転者にスイングヤーダのワイヤロープを巻き上げるよう合図を行った。
  4. ワイヤロープを巻き上げ、伐倒木をけん引したところ、左斜め上方約3mの位置にあったスギの枝が伐倒方向に張り出していたことから、これに伐倒木の樹幹が掛かり、引き倒すことができなかった(写真①)。
  5. このため、被災者は、プロセッサの運転者にワイヤロープを緩めるように合図を行うとともに、伐倒方向を谷側に変更するため、谷側につくった追い口の切り込みを下切り面に利用して、受け口切りを行い、山側の受け口の高さの約2倍上方の位置に、追い口切りを行った(写真②、③)。
  6. 伐倒木が谷側に傾きかかったときに、突然、「ツル」が引きちぎれ、緩めておいたスイングヤーダのワイヤロープが緊張したため、伐倒木の元口が横に跳ねて被災者の背中を直撃し、転倒した際に近くにあったスギに激突した(写真④)。

図:災害事例研究No.12

◆災害発生の原因◆

  1. 本災害の「直接の原因」は、現地調査の結果から、伐倒方向を変更して谷側に伐倒する際における次の作業行動によるものであると推定される。
    ① 当該地は、傾斜約40 度と急傾斜地であり、かん木等も多く、足場も悪かったにもかかわらず、谷側に伐倒する際に、退避場所を選定し直し、かん木等を事前処理して退避路を確保しておかなかった。
    ② スイングヤーダでのけん引を取り止め、スイングヤーダのワイヤロープを緩めた際に、台付けロープからワイヤロープのフックを外しておかなかった。
    ③ 谷側に伐倒するに際して、山側に伐倒する際に作った追い口の切り込みを下切り面に利用して「受け口切り」を行ったことから、下切りが極端な切り込み過ぎの状況にあったため、当該個所では「ツル」が機能せず、山側に伐倒する際に作った伐倒方向と反対側の受け口部分の「ツル」が、早い段階で引きちぎられた。
  2. また、本災害の「誘因」としては、山側に伐倒するにあたり、「ツル」の機能を発揮するため、受け口切りと追い口切りは、おおむね適切に行うとともに、伐倒方向をより確実に規制するために、作業道上からスイングヤーダ機能を備えるプロセッサでけん引するなど、慎重な対応を行ったものの、傾斜約40 度の斜面の約31 m 上方の作業道からけん引するにあたって、山際から約1 . 9 mと極めて低い位置に台付けロープを掛けたことが考えられる。

◆災害防止対策◆

  1. 退避場所は、必ず、あらかじめ、選定するとともに、退避に支障となる、かん木、枝条、浮石等を事前処理し、退避路を確保しておくこと。
  2. けん引具等によるけん引を取り止め、他の方法により伐倒する場合は、必ずワイヤロープを伐倒木から外しておくこと。
  3. 受け口の下切りと斜め切りの切り終わりは、必ず一致させること。
  4. 受け口の斜め切りは、木が倒れる際に重要な役割を果たす「ツル」を壊さないための空間を確保するために行うものであるということを認識し、所要の角度を確保するよう安定した作業姿勢で慎重に行うこと。
     なお、谷側への伐倒は、伐倒木と下方斜面とのなす角度が大きいため、早い段階で「ツル」が引きちぎれやすいことから、伐倒速度のコントロールが困難となり、幹や枝が飛来するおそれがあるなど、他の方向に伐倒する場合に比べ、極めてリスクが大きいことを認識し、他の方向に伐倒することが困難な場合に限定して行うようにすること。
     やむを得ず、谷側に伐倒せざる得ない場合は、リスクが大きいことを十分に認識の上、安定した作業姿勢で、より慎重に作業を行うことが重要である。
     また、立木の状況や地形等に即して、適宜、受け口の斜め切りの角度を大きくするなど、「ツル」が容易に壊されないように留意するとともに、伐倒に当たっては、「クサビ」を使用し、追い口が浮き始めたら、あらかじめ選定した退避場所に、迅速かつ確実に退避するようにすること。
  5. 伐倒方向をより確実に規制するため、又は、かかり木処理(元口移動による処理を除く。)を行うために、けん引具等によりけん引して伐倒木を倒す場合は、樹高の3分の1程度の高さにワイヤロープを掛け、伐倒者とけん引具の操作者との緊密な連携の下に、慎重に作業を行うこと。

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