災害事例研究

No.133


【林業】広葉樹の伐倒で枝絡みになった隣接木の上部が裂け、これが落下して激突された

 被災者Aはチェーンソー、同僚Bはくさび打ちをそれぞれ担当して伐倒をしていた。Aはスギの伐倒方向にあるカシ(胸高直径26cm、樹高15m)でスギがかかり木になると考えてカシを伐倒することにした。Aが受け口、追い口を切り込み、Bがくさびを打った後にカシは倒れ始めたが、カシの上部が傍に立っているシイ(胸高直径18cm、樹高18m)に枝絡みの状態となっていたため、シイの上部が引っ張られ、根本から約8mの高さで折れ、折れた上部が落下して被災者Aの頭部を直撃した。

◆災害の発生状況◆

 災害発生当日、午前8時頃、現場に現場責任者(当日は代理の者)と被災者A、同僚Bの3人が集合して、作業打ち合わせの後に作業を始めた。
 現場責任者は木材グラップル機で集材作業、AとBは伐倒作業を担当した。
 Aはチェーンソー、Bはくさび打ちをそれぞれ担当して協同して伐倒作業を行った。
 午前8時30分頃、Aがスギを伐倒しようとする斜面の下側にカシ(胸高直径26cm、樹高15m)があり、スギがかかり木になるおそれがあったのでカシを先に伐倒することにした。
 Aは受け口を切り、追い口を切り込むと、カシから山側に1m離れた場所に退避をした。次にBがくさびを1本打ち込むと、カシが倒れ始めた。
 この時にカシの上部の枝が山側に1m程離れて立っていたシイ(胸高直径18cm、樹高18m)に枝絡みとなっていたため、シイの木が引っ張られて、根元から8m 付近で折れ、折れたシイの上部が落下して傍にいた被災者Aの頭部を直撃した。落下したシイは元口側の直径15cm、長さ10m(推定重量200kg)であった。
 Aが退避した場所は、カシの伐倒方向の右側に1m程度しか離れていなかった。

◆災害発生の原因◆

  1. 被災者は、特別教育未修了者であったこと。
  2. 伐倒時に枝絡み等の上部の安全確認ができていなかったこと。
  3. 被災者は安全な退避場所へ退避していなかったこと。
  4. 70haの広大な現場作業にもかかわらず、調査及び記録、作業計画は作成されておらず、作業を進めるための事前の安全対策ができていなかったこと。

◆災害の防止対策◆

 
  1. 伐木等作業に従事する者は、法定の特別教育を修了させること。
  2. 退避は3m以上離れた場所とすること。
  3. 現場責任者は作業開始前のミーティング時に、作業計画で定めた作業手順、作業方法、作業の留意事項等について確実に指示を行うこと。
  4. 伐倒作業を行う時には作業現場の調査及び記録並びに作業計画を作成すること。
  5. 作業計画に基づく作業の指揮を行わせるために、作業指揮者を選任すること。
  6. 作業計画作成時にはガイドラインに基づき、リスクアセスメントを実施するとともに、その結果に基づく低減対策等の措置を行い、その内容を関係作業者全員に周知し、共有すること。

◆その他の参考事項◆

 本件は、被災者Aがチェーンソーによる伐倒作業を、同僚Bがクサビ打ちをそれぞれ担当して伐倒していたとのことであるが、本来、伐木作業を行う場合は、伐倒木等が激突することによる危険を防止するため、伐倒しようとする立木を中心として、当該立木の高さの2倍に相当する距離を半径とする円形の内側には、他の労働者を立ち入らせてはならないこととなっている(安衛則第481条第2項)。
 本災害事例では、その目的や役割などの詳細が不明であるが、より安全に伐木の作業を行うこととなる相当の理由がない限りこうした2人作業による伐倒は行わないこと。

(相当の理由に係る通達・ガイドライン)
 ①  「労働安全衛生規則の一部を改正する省令等の施行について」(平成31年2月14日付け基発第0214第9号)
5 立入禁止(安衛則第481条)
(1)のイ(一部抜粋)
「なお、伐木の作業に従事する労働者の人数に関わらず、より安全に伐木の作業を行うことを規定する趣旨であり、複数の労働者が協同して伐木の作業に従事することを禁止するものではないこと。」
②  「チェーンソーによる伐木等作業の安全に関するガイドライン」(令和2年1月31日付け基発第0131第1号)
7 -(2) 作業に伴う立入禁止区域及び退避等(一部抜粋)
ウ  「なお、伐倒者以外の労働者が伐倒する労働者に必要な安全指導・支援等を行うことにより、より安全に伐倒作業を行う場合には、当該伐倒者以外の労働者が上記の区域内に立ち入ることを禁止するものではないこと。」と規定されている。

 なお、本事例のように、伐倒者とクサビを打つ者の2人作業では、過去に数件の死亡災害が発生しているところであり、安衛則第481条第2項にそった作業が望まれる。

〈労働安全衛生法〉

第59条 事業者は、労働者を雇い入れたときは、当該労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、その従事する業務に関する安全又は衛生のための教育を行なわなければならない。
2  略
3  事業者は、危険又は有害な業務で、厚生労働省令で定めるものに労働者をつかせるときは、厚生労働省令で定めるところにより、当該業務に関する安全又は衛生のための特別の教育を行なわなければならない。
〈労働安全衛生規則〉
(特別教育を必要とする業務)
第36条 法第59条第3項の厚生労働省令で定める危険又は有害な業務は、次のとおりとする。
1~7 略
8  チェーンソーを用いて行う立木の伐木、かかり木の処理又は造材の業務
(立入禁止)
第481条第2項(抜粋)
事業者は、伐木の作業を行う場合は、伐倒木等が激突することによる危険を防止するため、伐倒しようとする立木を中心として、当該立木の高さの2倍に相当する距離を半径とする内側には、他の労働者を立ち入らせてはならない。
〈「チェーンソーによる伐木等作業の安全に関するガイドライン」〉(一部抜粋)
6 作業計画等
(1)調査及び記録
(2)リスクアセスメント及びその結果に基づく措置の実施等
(3)作業計画
(4)作業指揮者
7-(1)-イ 立木の樹種、重心、つるがらみや枝がらみの状態、頭上に落下しそうな枯れ枝の有無等を確認すること。
7-(2)作業に伴う立入禁止区域及び退避等

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