災害事例研究

No.18


【林業】元玉切りで外そうとしたかかり木の先端部が落下し激突された

 サワグルミにかかり木となっていたカラマツの枯損木を元玉切りにより処理中、樹幹落下の衝撃により先端部が折損落下し、処理作業中の作業者に激突した。

◆災害発生の状況◆

  1. 被災当日午前中、被災者(班長)は民有林内の間伐現場において、間伐材搬出のための準備作業として、同僚の班員3名とともにスイングヤーダを回送し、もともと倒れて作業道を塞いでいたカラマツ数本の除去作業を行った。
  2. その後、昼食をとり午後の作業に取りかかったところ、作業道脇に枯損木(カラマツ:推定樹高21m、胸高直径25cm、樹皮なしの状態)がサワグルミ(広葉樹)に倒れかかり、かかり木状態になっているのを発見した。
  3. 当該枯損木は、間伐木搬出の支障となるため処理をすることとしたが、近くに停めてあった作業道上のスイングヤーダに当たると懸念し、被災者が班員Aに対しスイングヤーダを離れた場所へ移動するように指示した。
  4. 一方、被災者は、当該かかり木の処理を始めたが、元玉切り(推測)を数回行ううちに、樹幹落下の衝撃で先端部(長さ2.9m、径15cm)が折損落下、被災者の頭部を直撃した。
  5. なお、スイングヤーダを離れた場所へ移動中の班員Aの位置からは被災者が伐倒している位置が見えなかったが、班員Aが停留予定箇所へ着きスイングヤーダを旋回させ被災者の方を振り向くと、折れたカラマツの先端部が落下したのが見えると同時に衝撃音がしたので、スイングヤーダを降り、被災者の元へ駆けつけたところ、被災者はすでに意識のない状態で倒れていた。
  6. すぐに他の班員2人へ連絡するとともに救急車を手配、到着後ドクターヘリを要請し、病院へ搬送したが15時55分に死亡が確認された。

◆災害発生の原因◆

  1. かかり木となっている枯損木カラマツの1回目の伐採点(元玉切り)が地上より1.7mの高さで、加えて当該カット面は受け口、追い口の処理がない斜め切りであったこと。
  2. 1回目のカットでかかり木が解消されず、2回、3回と禁止されている元玉切りを繰り返すごとに、樹幹落下が続き、かつ、枯損木であったため、その衝撃が先端部折損の遠因となったこと。
  3. 伐倒に入る前に、伐倒木の上方の確認が十分でなかったこと。   なお、災害発生は7月で、サワグルミの枝の葉が繁茂し、かかり木となっていたカラマツ枯損木の上部が確認しにくい状況があった。

図:災害事例研究No.18

◆災害防止対策◆

  1. 伐木の基本的事項
    今回の災害の原因となった枯損木の伐倒は、伐採点(元玉切り)が地上より1.7 mの高さであり、加えて、当該カット面は受け口、追い口の処理がない斜め切りであったため、的確な伐倒方向が規制できない状態であった。 伐倒に当たっては、受け口、追い口、つるの3要素を念頭に基本に従った伐採を行うこと。斜め切りは絶対行ってはならない。 なお、枯損木は一般的には受け口は浅く、角度は大きめにとる。追い口は、普通の高さより高めとし、腐れの部分で減殺されるつるの機能をカバーすること。 つるの幅は作業者側の幅を小さく、反対側を大きくし、作業者側へ倒れることを避ける等の手段を尽くすこと。
  2. かかり木処理における禁止事項
    最初に切り込みを入れた後も、サワグルミにかかり木になったまま解消されなかったため、禁止事項となっている元玉切りを2回、3回と続けて処理したこと。かかり木処理に当たって、禁止事項となっている元玉切りは決して行ってはならない。 加えて、当該かかり木は枯損木であり、元玉切りを行うごとに樹幹が落下し、先端部に衝撃を与えたことが折損の原因となったと考えられる。枯損木のかかり木処理に当たっては衝撃を与えないように特に留意すること。 なお、カラマツの枯損木は折れやすい性質をもっていることから、特に注意すること。
  3. 安全な作業方法でかかり木処理を行うこと
    一般的なかかり木処理は、フェリングレバー等の木回し器具や、チルホール等の器具を使って行うこととされているが、本件事案の場合、枯損木であったことから、いつ折損するか分からない危険要因がある。このため、チルホールを使って遠隔よりけん引する等の措置が必要である。   なお、当該現場ではすぐそばにスイングヤーダがあったことから、これらの重機を活用し、かかり木の処理を行うべきであった。

    かかり木処理に当たっては、フェリングレバー、チルホール、ターニングストラップ等の処理器具の他、近くに高性能林業機械等の重機や、林業架線集材施設があれば、極力これらを活用し、安全にかかり木の処理を行うこと。

  4. 伐倒に入る前に、伐倒木の上方の確認が不十分だったことから、先端部の折損が予測できなかったものであり、これら枯損木の処理に当たっては上方の確認を特に念入りに行うこと。

[参考]

【林業・木材製造業労働災害防止規程】

(受け口及び追い口)
第25条 会員は、伐木の作業を行う場合には、作業者に、それぞれの立木について、次の各号に掲げる事項を行わせなければならない。

(1)
受け口の深さは、伐根直径(根張りの部分を除いて算出するものとする。)の4分の1以上とすること。ただし、胸高直径が70センチメートル以上であるときは、3分の1以上とすること。

(2)
受け口の下切り面と斜め切り面とのなす角度は、30度以上45度以下とすること。

(3)
追い口の位置は、受け口の高さの下から3分の2程度の高さとすること。


(かかり木の処理)
第20条 会員は、かかり木が生じた場合には、作業者に、速やかに次の各号に掲げる事項を行わせなければならない。ただし、やむを得ずかかり木を一時的に放置する場合は、当該かかり木による危険が生ずるおそれがある場所に作業者等が近づかないよう、標識の掲示、テープを回すこと等の措置を講じさせなければならない。

(1)
事前踏査の際に、かかり木に係る事項についても実地調査を行い、その結果に基づき、携行が必要な機械器具等を決定する等必要な準備を行うこと。

(2)
作業前には十分な打合せを行い、安全な作業方法を決定すること。

(3)
作業は、できるだけ2人以上の組で行うこと。

(4)
機械器具等は、次のイからハまでに掲げる場合に応じて使用し、安全な作業方法により処理すること。

かかっている木の胸高直径が20センチメートル未満であって、かつ、かかり木が容易に外れることが予想される場合は、木回し、フェリングレバー、ターニングストラップ、ロープ等を使用して、かかり木を外すこと。

かかっている木の胸高直径が20 センチメートル以上である場合又はかかり木が容易に外れないことが予想される場合は、けん引具等を使用し、かかり木を外すこと。

林内作業車、機械集材装置、高性能林業機械等を使用できる場合には、原則として、これらを使用して、かかり木を外すこと。

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