災害事例研究

No.27


【林業】台風により傾斜・湾曲した偏心木を伐倒中、材が割け上がり落下した樹幹が伐木作業者に激突した

 台風により倒伏、折損等の被害木整理作業のため樹幹が傾斜・湾曲したスギ材を伐倒中に、追い口から割け上がり、先端部が接地。湾曲が戻る反動で樹幹が落下し、退避しようとしていた被災者を直撃した。

◆災害発生の状況◆

  1. 当日、被災者は林地の平均傾斜約25度、林齢58年生のスギ、ヒノキ人工林内において台風により発生した台風被害木の整理作業を行っていた。
    被災者はスギ樹幹全体が傾き、上方が湾曲した胸高直径40cm、樹高29mのスギの伐倒作業を排気量59cc、ガイドバー50cmのチェーンソーを用いて実行していた。
  2. 伐採対象木は、林地傾斜に対して横方向に傾いており、伐倒後の材の定置作業等の便も勘案。斜面の上側から屈曲側に深さ15cmの受口を切り、次いで追口を受口の水平面から高さ6.5cmの位置に背切り(ガイドバーの上側)で切り進めた。
  3. 追口を24cm切り込んだところで、バシッと音をたてて元口から割け上がり、傾斜木の先端部が林地上に落ちた。同時に伐根上に割け残った材幹の傾きが被害前の状態に戻る反動で切断されて持ち上げられた樹幹が、退避が遅れて伐根の傍らにいた被災者の背中に落下・激突したものである。

◆災害発生の原因◆

  1. 傾斜・湾曲によって重心が著しく偏っている立木の伐採であるにも拘らず、伐倒後の作業利便性を優先して、伐倒方向を重心方向そのままとしたこと。
    また、受口の水平切りと斜め切りの切り終わりの線が一致せず、水平切りを2cm弱切り込み過ぎた結果、つるの確保が不十分となりつるの機能を低下させたこと。
  2. 追口切りで受口水平面との高低差をより大きく確保する配慮に欠けたこと。 加えて、突っ込み切りが可能な伐根径であったにも拘らず、追いづる切りを選択しなかったこと。
  3. 始業時から、お昼の休憩直前という災害発生時まで使用してきたソーチェーンが摩耗し切削能力が著しく低下した状態であったことが、伐根周辺に残されていた粉末状となった微細な鋸屑により確認された。
    要は、ソーチェーンが摩耗すると鋸断時に鋸道が曲がったり、切削スピードが遅くなるので目立てをマメに行う必要がある。
  4. 挙動予測が困難な傾斜・歪曲した台風彼害木の処理にも拘らず、退避行動には好都合な位置での作業であったため、最悪の事態に備えた対処方策がとられていなかったこと。

図:災害事例No.27

◆災害防止対策◆

  1. 極端な偏心木の伐倒では、伐倒方向を重心線から30度位まで左右に変更して偏心度合いの軽減を図ることが有効である。
  2. 受口の水平切りと斜め切りの切り終わりの線は一致させなければならない。これを怠るとつるの機能が低下して引き抜けや裂けを起こすことがあるので注意が必要である。
  3. 偏心した伐倒木の伐根直径に突込み切りが可能な大きさがある場合には、追いづる伐りを選択すること。また、追口面を通常より高くし、つるの形状を大きくすることによってスムーズな伐倒を期待できる。
  4. 機械、器具類の点検・整備は定期的に行うとともに、作業状況に応じて随時実施する必要がある。特に、チェーンソーや刈払機等の切削能力は作業能率を左右するだけでなく、作業の安全性にも大きく影響する。今回の事例でも、チェーンソーの切削スピードが十全なものであれば重大な事態は避け得たかも知れない。
  5. 危険が伴う困難な作業を行うに当たっては最悪の事態を想定し、事前に危険の洗い出しを行い、危険の対処方法を講じて臨む必要がある。

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