災害事例研究

No.54


【林業】複数人でバックホウを用いて伐倒作業中、合図者が伐倒木の下敷きとなった

 バックホウを用いて、コジイ(広葉樹、胸高直径約26cm、樹高23m)の伐倒作業を、3名(合図者〈被災者〉、伐倒者、バックホウ運転者)で行っていた。
 バックホウのアームにワイヤロープを掛けて引っ張りながら伐倒作業を行っていたが、合図者(被災者)が何らかの理由で伐倒方向に移動。12〜13m移動した時点で伐倒木が倒れて、その下敷きとなり、脳挫傷で死亡した。

◆災害の発生状況◆

 災害発生場所は、コジイを中心とした広葉樹林(約50年生)で、孟宗竹が多く侵入している場所である。伐倒木は、隣接林分との境界付近の急傾斜部分にあり、伐倒方向は、この急傾斜部分とは反対方向で、緩やかに傾斜している(図参照)。 なお、労働災害は本事業の終了直前に発生したものである。

─発生経過─

  1. 当日は朝より、3名一組で伐採搬出作業を行っていたが、作業員の配置状況は以下の通りである(図参照)。
     作業者A─伐倒者 作業者B─バックホウ運転者 被災者─合図者
  2. 午前中の作業は終了し、昼休みを挟んで伐採搬出作業を再開した。
  3. 当該木の伐倒は、被災者が合図者として伐倒木の近くに位置して、バックホウ(伐倒木を引き倒すためにワイヤロープで引っ張り)運転者及び伐倒者に合図を送りながら作業を行った。
  4. 伐倒作業中に被災者が何らかの理由で移動を開始したが、他の作業者への合図や確認が十分行われたかは不明。
  5. 被災者が伐倒方向に12〜13m移動した時点で伐倒木が倒れて、その下敷きとなる。
  6. すぐに病院へ搬送したが、脳挫傷で死亡が確認された。

◆災害発生の原因◆

  1. 伐倒の際、危険区域外(伐倒木樹高の1.5倍以上)に、伐倒作業者以外に被災者と作業者Bの2名とも退避しなかったため、被災者が伐倒木に激突された。
  2. 被災者が伐倒作業中に伐倒作業者Aと十分な合図や確認をしないままに、伐倒方向に移動した。
     なお、伐倒作業者Aは少し下がった位置で伐倒を行ったものと考えられ、伐倒側へ緩やかに傾斜していることを考えると、被災者が移動したことにより、お互いの確認が十分にできていない状況であったものと考えられる(図参照)。
  3. 3名とも安衛則で定める伐木等業務に係る特別教育が未受講であったため、伐倒の基本、そして、危険区域の認識、合図、退避が励行されなかったことが考えられる。
    ① 追い口の高さが受け口と同じであり、ツルが見られず、芯抜けを起こしている
    ② 受け口は根張り部分から設けられており、受け口の切込み深さが不足している
  4. バックホウのアームにワイヤロープをかけて引っ張り伐倒するなど、車両系建設機械の目的外使用を行った。
     車両系建設機械であるバックホウのアームにワイヤロープを掛けた状態でのけん引であり、目的外使用とともに、伐倒に当たって十分なワイヤロープ操作ができないことが考えられる。

災害事例研究54 図解

◆災害防止対策◆

今回の災害は、伐倒作業における安全管理の基本ができていないことが主な要因であり、事業者として行うべき安全管理の事項について今一度再認識し、確実な実施を徹底することが重要である。

〈事業者として行うべき安全管理事項〉

  1. 伐木等の業務に係る特別教育の実施
    ・事業者に定められた以下の安全衛生教育の確実な実施
     @ 雇い入れ時教育(従業員を新たに雇い入れた時に実施)
     A 変更時教育(作業内容などを変えた場合に実施)
  2. 伐倒技術の習得及び向上に向けた安全教育の実施及び教育指導体制づくり
     伐倒のための基礎知識教育を実施の上、現地での技能教育を行い、安全な伐倒技術の取得を目指す。そのためには、安全衛生推進者や現場責任者など必要な人材を配置し、林業事業場の教育指導体制を構築する必要がある。

〈適正な伐倒作業のための基本〉

@ 適正な受け口切り、追い口切り

A 根張りがある場合の事前の取り除き(本誌『林材安全』平成26年1月号─安全な伐木作業に求められる、「受け口切り」と「追い口切り」の基本動作─参照)

  1. 林業作業における車両系木材伐出機械等の適正使用

    ・ 使用目的以外の使用禁止と適正な車両系木材伐出機械及び作業の管理
     事業着手前に、伐採個所の調査及び記録を行い、作業計画を立て、適正な山割、伐木作業に当たっての留意事項(伐木等業務に係る特別教育修了者の配置)、車両系木材伐出機械の使用目的、安全対策等を明記した作業計画書を作成し、作業者に周知徹底する。

災害事例研究 バックナンバー

▲ページのトップへ