災害事例研究

No.88


【林業】地ごしらえ作業でブル・ドーザーを急斜面に停車させ、一旦降りて作業した後、ブル・ドーザーに乗り込むため履帯の上に乗った際、ブル・ドーザーが動き出し轢かれた

 町有林の地ごしらえ作業において、ブル・ドーザーを傾斜約40度の斜面に停車させ、斜面に降りて、ボサ(末木、枝条等植付の支障となるもの)をブル・ドーザーの前に集めていた被災者が、再びブル・ドーザーに乗り込もうと履帯(クローラ―)の上に乗った際、ブル・ドーザーが逸走し、轢かれたもの。

◆災害の発生状況◆

(1)作業開始から災害発生までの経過
 災害発生当日の午前中、被災者等9名の作業者は、ボサ(末木、枝条、寝木等植付の支障となるもの)集めを行った。
 昼休み休憩後、午後1時頃、被災者は、ブル・ドーザーを運転して、斜面上方に停車させて、ブル・ドーザーから降りた。降車後、被災者と他の労働者2名は、ブル・ドーザー付近に取りこぼされているボサを、ブル・ドーザーの前に集めた。約5分間ボサ集めを行った後、被災者がブル・ドーザーに乗り込もうと履帯の上にあがったところ、ブル・ドーザーが動き出したことにより、履帯が回転して、被災者が履帯に巻き込まれた。
 ブル・ドーザーは約40メートル下方まで逸走し、被災者は斜面中腹に倒れていた。被災者は、頭蓋骨粉砕骨折により、死亡が確認された。

(2)被災場所周辺状況について
 地ごしらえ場所は、以前に皆伐が行われており、残っている小さな木や、笹等の全刈も災害発生日以前に終えていた。

(3)ブル・ドーザーについて

  1. 寸法全長4.2メートル、全幅2.13メートル、履帯幅0.4メートル
  2. ブル・ドーザーは、エンジンをかけたまま、変速レバーは中立、フットブレーキはロックの状態で停車されていた。
  3. 災害発生3か月前に、特定自主検査が実施されており、不良個所はなく、補修等は行われなかった。月例点検でも、ブレーキに関する異常は認められなかった。作業開始前点検でも、異常は認められなかった。
  4. 作業計画は、作成されていなかった。

(4)資格について
 被災者は、災害発生の10年以上前に車両系建設機械運転技能講習を修了し、当該事業場でも5年以上ブル・ドーザーの運転をしていた。

◆災害の発生原因◆

  1. 急斜面に、ブル・ドーザーを停車させたこと。
  2. 被災者がブル・ドーザーの運転位置から離れる時に、エンジンを止めなかったこと。
  3. ブル・ドーザーを停車させる際、ブレーキをロックする以外の逸走防止措置を講じなかったこと。
  4. 作業前に、あらかじめ地形等を調査し、その結果に対応するブル・ドーザーの作業計画を作成していなかったことと、作業者を直接指揮する作業指揮者を定めていなかったこと。
  5. 車両系建設機械運転従事者安全衛生教育(車両系建設機械運転技能講習を修了して概ね5年経過した者を対象とする教育)が実施されていなかったこと。

◆災害の防止対策◆

  1. 急斜面では、ブル・ドーザーを停車させないこと。
  2. ブル・ドーザーの運転者は、運転位置から離れる時に、必ずエンジンを止めること。
  3. ブル・ドーザーを停車させる際には、フットブレーキをロックする以外に、排土板を地面に接地させる、車止め等のブル・ドーザーの逸走防止措置を講じること。
  4. 作業前に、あらかじめ地形等を調査し、その結果に対応するブル・ドーザーの作業計画を作成するとともに、造林作業を指揮する作業指揮者を定め、作業計画に基づき、作業の指揮を行わせること。
  5. 車両系建設機械運転業務に従事している者に対して、定期(概ね5年ごと)に車両系建設機械運転業務従事者安全衛生教育を実施すること。

 傾斜地での車両系の逸走災害を防止するためには、運転者が運転席を離れる場合、排土板を接地させ、エンジンを止め、ブレーキをロックし、車止めをする等、基本的な作業手順を遵守しなければならない。
 今回の災害事例では、これらの基本的な作業手順が普段から実施されていなかったと考えられる。
 このような基本的な作業手順は、日常の作業の中で習慣化されるまで、繰り返し指導することが必要である。

<参考>

[労働安全衛生規則]

(調査及び記録)
第154条
 事業者は、車両系建設機械を用いて作業を行うときは、当該車両系建設機械の転落、地山の崩壊等による労働者の危険を防止するため、あらかじめ、当該作業に係る場所について地形、地質の状態等を調査し、その結果を記録しておかなければならない。
(作業計画)
第155条
 事業者は、車両系建設機械を用いて作業を行なうときは、あらかじめ、前条の規定による調査により知り得たところに適応する作業計画を定め、かつ、当該作業計画により作業を行なわなければならない。
(運転位置から離れる場合の措置)
第160条
 事業者は、車両系建設機械の運転者が運転位置から離れる時は、当該運転者に次の措置を講じさせなければならない。
 一  バケット、ジッパー等の作業装置を地上におろすこと。
 二  原動機を止め、かつ、走行ブレーキをかける等の車両系建設機械の逸走を防止する措置を講ずること。

[造林作業の作業指揮者等に対する安全衛生教育について(昭和60年3月18日 基発第141号)]

(造林作業の作業指揮者等安全衛生教育実施要領)
1 目的
 林業における下刈り、地ごしらえ等の造林作業における安全の確保と健康障害の防止を図るため、造林作業を指揮する者等に対し、当該職務の遂行に必要な知識等を付与する。
2 対象者
 造林作業の現場で、造林作業従事者に対し、現に作業の指揮を行っている者又は新たに当該作業を指揮する者として選任される予定の者とすること。

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