令和5年の年頭に当たって
林業・木材製造業労働災害防止協会
会長 中崎 和久
新年を迎え、謹んでお慶びを申し上げます。
令和5年の年頭に当たり、林材業における労働災害防止活動にご尽力いただいております会員事業場の皆様をはじめ、当協会の事業運営にご指導、ご支援をいただいております関係行政機関並びに関係団体の皆様方に心から感謝申し上げます。
新型コロナウイルス感染症は、引き続き感染対策の徹底と日常生活を両立させながら、社会経済活動を維持していくことが求められているところです。
私たち協会は、どのような状況下にあっても、林材業における労働安全衛生分野の専門家集団として林材業の作業特性を的確に捉え、長年にわたり蓄積した労働災害防止の知見とノウハウを活かして、安全で健康な林業、木材製造業の職場づくりのため、会員の皆様とともに、林材業の労働災害ゼロを目指して取り組んでまいります。
さて、昨年は、国の第13次労働災害防止計画を踏まえた林材業労働災害防止計画(5カ年計画)(平成29年度~令和4年度)の最終年でありました。林材業における労働災害発生件数は、皆様方のたゆまぬご努力の成果もあり、長期的に減少を続けておりますが、労働災害発生率をみますと他産業に比べ林材業は未だに高い水準で推移しているところです。
5カ年計画では、令和4年において死亡災害は39人(林業34人、木材木製品製造業5人)を下回ること、休業4日以上の死傷者数は平成29年と比べ令和4年までに5%以上減少させることを計画の目標として、労働災害防止対策を推進して取り組んでまいりました。
令和4年12月の速報値でみると、死亡災害は、林業は目標を下回る状況にありますが、木材製造業が目標を大幅に超えており、林業、木材製造業全体としての目標達成が危ぶまれる状況にあります。また、死傷災害は、木材製造業が目標を上回る状況で、林業は目標を下回る状況にあります。
「労働災害は決してあってはならない」ものであり、今なお労働災害により多くの尊い命が失われているという事実を重く受け止め、私ども協会に課せられた使命を果たすべく、林材業年末年始無災害運動をはじめとした労働災害防止活動を全力で推進していかなければならないという思いを新しい年の初めにあらためて肝に銘じております。
本年は、国が策定する第14次労働災害防止計画がスタートします。当協会におきましても、第13次災防計画期間中における労働災害の分析結果とこれまで進めてまいりました対策の効果の検証結果を踏まえ、林業における伐木等作業の激突され災害や木材製造業におけるはさまれ巻き込まれ災害などを中心とした災害防止対策の徹底を図るとともに、国の法令等の改正に則し、今後5年間にわたり目指す目標や重点的に取り組むべき重点取組事項を定めた、新たな林材業労働災害防止計画(5カ年計画:令和5年度~令和9年度)を策定いたします。
そして、新たな林材業労働災害防止計画に基づく労働災害防止対策を進めるため、令和5年度の事業運営に当たりましては、次に掲げる事業を中心に取り組んでまいります。
一つ目は、林業の中でも重篤な災害が発生する割合が高い伐木等作業における労働災害撲滅を図るための取組です。林野庁と連携した災害防止の対策、林業・木材製造業労働災害防止規程の遵守徹底、リスクアセスメントの普及促進のほか、安全管理士及び林材業労災防止専門調査員の専門家による個別指導や集団指導会などを引き続き進めてまいります。
特に、伐木等作業に係る労働安全衛生規則等の一部改正に伴い関係ガイドライン(令和2年1月31日)で示された車両系木材伐出機械及び伐木等作業に係る作業計画については、作業計画の作成に関する安全衛生教育の機会を設けるため、カリキュラムや教材の作成、講師の養成を進め、各事業場で円滑に取り組めるよう支援を行うとともに、安全な伐倒方法やかかり木処理の方法などの安全対策が事業場で確実に実施されるための周知徹底を図ってまいります。
また、伐木等作業の中でもとりわけ死亡災害発生率が高い高年齢労働者と新規就業者に対する再発防止対策に取り組んでまいります。
さらに、調査研究検討については、伐木等作業者に対する技能レベルに応じた講習制度等を含め、事業場等において安全衛生教育を進めていく上での新たな課題について検討を進めてまいります。
二つ目は、事業場の安全衛生管理活動を支援するための支援・指導事業の取組です。
安全管理士等の労働安全衛生の専門家による現場安全パトロール、個別安全指導、集団指導により、個々の事業場への安全管理体制の整備充実や、地域の労働安全衛生活動の水準向上への支援を行うとともに、高年齢労働者を雇用する事業場には「高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン」を踏まえ、安全衛生管理状況に応じた災害防止のための支援を行います。さらに、非会員を含めた業界全体に対する技術支援と指導により自主的な安全衛生活動の底上げを図る事業を進めてまいります。
三つ目は、災害の未然防止を図る有効な手法であるリスクアセスメントの定着に向けた取組です。
協会が林材業作業特有の災害を踏まえ開発した「簡易リスクアセスメント記録書」を活用した「リスクアセスメント実践マニュアル」を用いた集団指導会の中で、3D動画を活用して参加者の関心を高めるなど新しい手法を取り入れた方法で実施するとともに、現場への定着を目指したフォローアップなどの対策に取り組んでまいります。
四つ目は、林業・木材製造業労働災害防止規程の変更と遵守徹底への取組です。
災防規程については、前回変更から5年を経て、その間に改正された関係法令の内包や近年の災害発生状況を踏まえた上乗せ条項を整備して、令和5年度中の認可変更を目指しております。認可変更後は会員事業場への変更内容の周知を行うとともに、安全パトロールや個別指導を通じて、正しい作業手順と安全な作業方法について遵守の徹底を図ってまいります。
五つ目は、労働者の安全と健康を守る上で中核となる安全衛生教育事業です。
最新の専門家の知見や法令改正を的確に捉え、安全衛生教育用教材の作成と改訂を行うとともに、的確な講師の選定と適切な講習方法に基づいた安全な教育研修の実施により、林業、木材製造業に携わる方々に向けた安全衛生水準の向上の支援を進めてまいります。
六つ目は、チェーンソー等の振動工具による振動障害をはじめとする職業性疾病の予防対策です。
未だに多くの発生をみている振動障害を予防するため、特殊健康診断の確実な実施のための受診勧奨や巡回特殊健康診断の実施を引き続き進めていくこととしています。また、腰痛など林業、木材製造業に特有な職業性疾病についても、予防対策の周知を行ってまいります。
以上の対策が効果的かつ強力に進められるよう、本部・支部が一体となって会員事業場の皆様をはじめ、林材業関係者の皆様への支援、援助を図ってまいりますので、本年も当協会の活動に対し引き続きご支援とご協力を頂きますよう、お願い申し上げます。
最後になりましたが、皆様方のご安全とご健康を祈念し、新年のご挨拶とさせていただきます。