蜂に注意
蜂の種類とその対策
1.刺す蜂の種類
蜂の巣や蜂がえさをとっているとき等は、近づかないこと。
- 我が国で刺す蜂の代表的な種類は、次の通りです。
アシナガバチ類は、セグロアシナガバチ、キアシナガバチ、キボシアシナガバチ
スズメバチ類は、オオスズメバチ、クロスズメバチ、キイロスズメバチ
ミツバチ類は、ニホンミツバチ、セイヨウミツバチ
マルハナバチ類は、トラマルハナバチ、コマルハナバチ - 蜂は、いずれも働き蜂(メス蜂)が鋭い毒針をもっていて、人を刺します。
- 蜂に刺される一番危険な時期は、蜂の巣が最も発達し、蜂の数が多い時期です。アシナガバチは7~8月、スズメバチは、7月~10月、
ミツバチは、一年中危険です。
草が繁茂し、草刈りの必要な時期が、蜂に刺される最も危険な時期です。 - 蜂・ダニ刺されについては、「蜂・ダニ刺されの予防と対策」(林材業労災防止協会発行)の教本を参照してください。
2.蜂の攻撃
蜂が近づいてきたら、速やかに危険区域から遠ざかること。
蜂は、無差別に人に攻撃をしかけるわけではありません。スズメバチの攻撃は、次の4段階に分けられます。
- 巣に接近する人に対する警戒・ 巣の出入口や表面にいる蜂は、人や動物を注視する一方で、一部は巣を離れて周囲を飛び回ります。
- 巣に接近する人に対する威嚇・ 警戒していた蜂が高い羽音を発して飛び回ります。オオスズメバチは、大顎を噛み合わせ、空中でカチカチという威嚇音を発します。
- 巣に間接的刺激を与えたときの攻撃・ 蜂の威嚇を無視したり、これに気がつかないとき、また、巣に振動を与えたとき等は、巣内から多くの蜂が飛び出して大騒ぎとなります。
- 巣に直接的刺激を与えたときの攻撃・ 巣を直接に刺激したり、巣を破損した場合は、入口にいた蜂とともに、巣内から多くの蜂が一斉に巣の外へ飛び出してきて、文字通り、「ハチの巣をつついた騒ぎ」になります。興奮の激しいときは、相手の体に噛みつき、何度も毒針を突き立てます。
3.攻撃を受けやすい色、服装等
スズメバチは、黒地の着衣、毛皮等は、巣の近くでは攻撃を受けやすいので、蜂を刺激するような衣類、匂い等は避けること。
- スズメバチは、黒い物にもっとも激しく反応し、攻撃を加えます。ただし、ミツバチは、色にはあまり反応しません。
- 蜂は、ヘアスプレー、ヘアトニック、香水等の化粧品、体臭等に対して、敏感に反応します。特にミツバチは、巣の近くに関係なく、各種化粧品の匂いに興奮をすることがあります。
- スズメバチは、衣類だけでなく、黒い長靴、カメラ等も攻撃します。
- 野外でジュースを飲むときも蜂に注意します。ジュースや飲料水の残りの液をえさにしているスズメバチを多く見受けます。飲んでいるとき、近寄って来て缶の中にもぐり込み、口や唇を刺されることがあります。
4.防蜂網の着用
蜂が毎年発生する場所で作業をするときは、顔面を保護するための防蜂網を着用すること。
- 蜂は、頭部や顔部をねらって来るので防蜂網は効果があります。特に蜂アレルギーの人は、必ず着用し、防護手袋等も使用します。
- 蜂にもっとも刺され易いのは、腕や手で、次に顔、頭部等で、いずれも身体の露出部分が真先にねらわれます。
蜂に刺されたときの症状と対策
1.蜂に刺されたときの症状
蜂に刺されたときの症状には、刺された場所のまわりにだけ現れる局所症状と、体中にでる全身症状とがあるので、症状をよく観察し、直ちに緊急処置を行うこと。
軽い全身症状では、顔や体が酒を飲んだ時のように赤くなり、全身にかゆみが起こり、なんとなくだるい、苦しいといった症状があらわれます。
中ぐらいの全身症状では、軽い全身症状に加えて、喉がつまったような感じがして胸苦しくなったり、口が渇き、口のなかがしびれたような感じがします。また、腹痛、下痢、吐き気を起こしたり、さらに頭痛、目まいがしたり、全身がむくんだりします。
重症症状では、息をするのも苦しくなり、物を呑み込めなくなり、声がしわがれて、全身の力が抜け、その場にうずくまってしまいます。また、目が見えなくなったり耳が聞こえなくなったりして、意識がはっきりしなくなったりしますので、一刻を争って緊急処置をとらなければ、死亡してしまいます。
2.蜂に刺されたときの処置
蜂に刺されたときは、次のように処置すること。
- 刺された場所から離れ、木陰や冷たい水の流れている沢の付近に退避し、刺されているところをきれいな水で洗います。
- 赤く腫れはじめたところに、抗ヒスタミン軟膏を塗ります。
- 手や足を刺された場合は、心臓に近い方を止血ゴム管等でしばります。ただし数分間隔でゆるめます。
- 初期症状として、発疹、流涙、せき、嘔吐、下痢等の症状が見られる場合は、一刻も早く医師の手当てを受けるようにします。
- 患者を移送するときは、決して背負わないで担架で救急車まで移送します。
蜂刺され対策用の自己注射器について
蜂刺されによる死亡災害は、林業など蜂との接触機会の多い山で働く人はもとより、近年特に国民の自然にふれあう機会の増加や住居の山間部への接近などから、一般の人々にも蜂刺されの被害が多くなってきており、厚生労働省の人口動態統計によると、増減はあるものの近年は全国で毎年20~30人が亡くなっています。
蜂刺され被害は、蜂毒に起因するアナフィラキシーショックによるもので、この補助治療剤としてアドレナリンの自己注射器(商品名:エピペン®)があります。
この治療剤については、国有林において平成7年から「治験的扱い」として当時製造・販売されていた米国から輸入し、現場職員に所持させ、効果を上げていまし た。このため、民有林においても自己注射器の使用について強い要望が出され、平成15年8月1日に、厚生労働省から承認され、販売が開始されました。
このことにより、自己注射器の使用が、民有林の作業従事者も使用可能となり、蜂刺され死亡災害の発生が抑えられています。
なお、エピペンに関する情報連絡等については下記のとおりです。
[エピペンに関する情報入手方法]
○エピペン専用のウェブサイト エピペン専用ウェブサイトへリンク
※ここでは、エピペンの使用方法等を知ることができます。
アナフィラキシー医療機関検索サイト
<アナフィラキシーってなあに.jp>※「お近くのお医者さんを調べる」から条件で検索
「蜂毒アレルギー診察可」の□にチェック後、エリアに都道府県名を選んで出てくる施設はアナフィラキシーやエピペンに関する相談を受け付けています。
また、平成15年8月の承認の内容は次のとおりです。
- 効能・効果
蜂毒に起因するアナフィラキシー反応に対する補助治療(アナフィラキシーの既往のある人またはアナフィラキシーを発現する危険性の高い人に限る) - 対象者
アナフィラキシー反応を起こす危険性が高い体重30kg以上の成人。 - 用法・用量
2の該当者で希望するものは、医師の処方に基づき、本剤を所持し、蜂刺され事故が発生した場合に本剤を使用してエピネフリン0.3mgを筋肉内自己注射する。 - その他
今回の承認は、成人での蜂毒によるアナフィラキシー反応のみに限定されており、食物や薬物等によるアナフィラキシー反応や小児への適用については継続審査となっています。
(注1)薬液名「エピネフリン」は、現在、「アドレナリン」と呼称されています。
(注2)平成17年4月に、上記4の継続審査が終了し、承認されました。それによりエピペン0.15mg(体重15㎏以上30㎏未満の患者用)も処方されるようになりました。