「指差し呼称」の進め方(林業)
1 「指差し呼称(ゆびさしこしょう)」とは
作業を安全に誤りなく進めるため、危険を伴う作業の要所要所で確認すべき対象を、しっかり見つめ、背筋をただして、腕を伸ばし、指を差し、「伐倒方向、ヨシ!」「退避場所、ヨシ!」などと、大きな声で唱えて確認するのが指差し呼称です。
2 指差し呼称の効果
指差し呼称は、危険を伴う作業の要所要所で、集中力を高め、「うっかり、ぼんやり」などの人間のエラーによる事故を防ぐのに非常に有効です。
3 指差し呼称の基本型
指差し呼称は、次のように行います。
- 目は…確認すべきことを、しっかりと目で見る。
- 腕・指は…左手は横から腰に当てる。
右腕を伸ばし、右手は人差し指を伸ばして対象を差し、「伐倒方向」といい、その後、指を、耳元まで振り上げて、「ヨシ!」で振りおろす。 - 口は…大きな声で、「伐倒方向、ヨシ!」などと唱える。
- 耳は…自分の声を聞く。
なお、(2)の腕や指は、「型」にこだわる必要はなく、各々の現場で話し合って、最も適切なものをきめます。
4 注意すべきこと
- 動作には適度の緊張が必要で、正しい姿勢で、節度をつけ、キビキビと行うことが必要です。
- 声を出すのをいやがって「指差し確認」だけにとどめたり、声は出しても、腕、指の動作を怠ったりすると、効果が落ちます。できるだけ「指差し」をして「呼称」することが大切です。 右手に物をもっているときなど、どうしても「指差し」できない場合には「呼称」だけとなるケースもあります。
- 必要以上に大声を出す必要はありませんが、「恥ずかしさ」「テレくささ」などを吹っ切るために、大声で行うようにしましょう。
5 指差し呼称の項目
何を呼称するかは、それぞれの現場で話し合って、必ずこれだけはやろうという項目にしぼりましょう。
次は、各作業における「指差し呼称」の例としてあげたものです。このうちから3~5項目程度をとりあげて、指差し呼称をしましょう。
- (1) 伐木作業
〔伐倒前〕- イ 伐倒作業に取りかかる前に、伐倒予定木の上方をみて、「上、ヨシ!」
- ロ 受け口を切る前に、伐倒方向をきめたら、「まわり、ヨシ!」
- ハ 受け口を切る前に、退避場所をきめ、退避路を確保したら、「退避場所、ヨシ!」
- イ 受け口を切ったら、「受け口、ヨシ!」
- ロ 受け口の点検が終わったら、「伐倒方向、ヨシ!」
- ハ 追い口を切る前に、「追い口の位置、ヨシ!」
伐倒作業が終わったら、「上、ヨシ!」 - (2) 先山での造材作業
- イ 枝払い作業をはじめる前に、「安定、ヨシ!」
- ロ 玉切り作業をはじめる前に、「転落防止、ヨシ!」
- (3) 機械集材装置による集材作業
- イ 荷かけ作業が終わったら、材の引き出し作業の前に(荷かけ者)、「退避、ヨシ!」
- ロ 荷はずし作業に取りかかる前に(荷はずし者)、「着地、ヨシ!」
- (4) 林内作業車による集材作業
- イ 材にワイヤロープをかけ、引き寄せ作業の前に(荷かけ者)、「退避、ヨシ!」
- ロ ウィンチによる引き寄せ作業の前に(運転者)、「引き寄せ方向、ヨシ!」
- (5) 刈払機作業
- イ 刈払い作業中、足場の悪いところでは、「足元、ヨシ!」
- ロ 5メートルの範囲内に他の作業者が接近していないことを確認して、「まわり、ヨシ!」
- (6) プロセッサ作業
- イ 危険区域に他の作業者等がいないことを確認して(運転者)、「まわり、ヨシ!」
- ロ 危険区域から退避して(作業者)、「退避、ヨシ!」