令和3年労働基準局長年頭所感
厚生労働省労働基準局長 吉永 和生
あけましておめでとうございます。
新年を迎え、心からお慶び申し上げます。本年も何とぞよろしくお願い申し上げます。
令和三年の年頭に当たり、改めて日頃の労働基準行政への御理解と御協力に感謝申し上げますとともに、今後の労働基準行政について述べさせていただきます。
第一に、新型コロナウイルス感染症対策についてです。
昨年は、特に新型コロナウイルス感染症の問題が非常に大きなテーマになっており、当局においても、「職場における新型コロナウイルス感染症の拡大を防止するためのチェックリスト」等を作成し、関係団体に対し、累次の協力依頼を行うなどの対応を行ってまいりました。
今後は、ウィズ・ポストコロナにおける働き方を見据えた新しい働き方について考えていく必要があります。テレワークについては、労働時間管理の在り方、作業環境や健康状況の管理・把握、メンタルヘルス等に関する昨年の検討会での議論を踏まえ、できる限り早く、ガイドラインの見直しなど必要な対策を講じ、良質なテレワークの普及に取り組んでまいります。
また、フリーランスについては、安心して働ける環境整備のための政府のガイドラインにおいて、現行法上「雇用」に該当する場合は、契約形態にかかわらず、労働関係法令が適用されることについて明確化してまいります。併せて、フリーランスの方に対する労災保険の適用について、労災保険特別加入制度の対象範囲の見直し等に向けて議論を行ってまいります。
そして、副業・兼業については、昨年九月に改定したガイドラインの内容を丁寧に周知し、引き続き企業も労働者も安心して副業・兼業を行うことができる環境を整備してまいります。
第ニに、過労死等防止対策についてです。
過労死等防止対策推進法に基づき定める「過労死等の防止のための対策に関する大綱」の見直しについて、現在過労死等防止対策推進協議会で議論を始めたところです。働くことで命を落としたり、健康を損なったりすることは、あってはならないものであり、「過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることの出来る社会」を実現するための取組を着実に進めてまいります。
第三に、働き方改革についてです。
働き方改革関連法については、これまでに、時間外労働の上限規制や、年次有給休暇の年5日の確実な取得などが、順次施行されており、引き続き、周知や働き方改革推進支援センター等による支援に取り組んでまいります。
時間外労働の上限規制の適用が猶予されている事業・業務については、令和6年度からの適用に向け、長時間労働を是正するための環境整備に、引き続き、関係省庁と協力しながら、取り組んでまいります。特に、「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」の見直しに当たっては、今年度中に実態調査の結果を取りまとめ、来年度以降、関係労使に引き続き御議論いただき、検討を進めてまいります。また、医師の働き方については、昨年十二月に「医師の働き方改革の推進に関する検討会」において中間とりまとめを行ったところであり、必要な法令整備に向け、医療行政と連携して取り組んでまいります。
第四に、最低賃金についてです。
最低賃金の引上げに当たっては、中小企業・小規模事業者が賃上げしやすい環境整備が不可欠であり、中小企業における設備投資やIT化等の生産性向上の取組に対する支援や、下請事業者の取引環境の適正化などに取り組んでまいります。
第五に、労働安全衛生対策についてです。
近年の労働災害による死亡者数は、長期的に減少しているものの、労働災害による休業四日以上の死傷者数は、高年齢労働者の増加やサービス産業化の進展などの就業構造の変化等により、増加傾向にあります。
このため、高齢者の労働災害を防止するための取組の推進、メンタルヘルス対策の推進を図ることなどにより、労働災害防止対策に取り組むとともに、疾病を抱える方が治療を受けながら安心して働き続けることができるよう、治療と仕事の両立支援を進めてまいります。
以上の施策を中心に、経済環境が厳しい中、労働条件が確保できるよう、職員一同全力を挙げて取り組んでまいりますので、今後とも、一層の御理解、御協力を賜りますようお願い申し上げ、新年の挨拶とさせていただきます。