令和5年 労働基準局長年頭所感
令和5年労働基準局長年頭所感
厚生労働省労働基準局長 鈴木 英二郎
新年を迎え、心からお慶び申し上げます。本年も何とぞよろしくお願い申し上げます。
令和五年の年頭に当たり、改めて日頃の労働基準行政への御理解と御協力に感謝申し上げますとともに、今後の労働基準行政について述べさせていただきます。
第一に、賃金の引上げについてです。
賃上げについては、物価上昇に負けない継続的な賃上げに向けて取り組むことが重要です。
最低賃金については、昨年、全国加重平均で三十一円引上げの九百六十一円となり、昭和五十三年度に目安制度が始まって以来最大の引上げ幅となりました。引き続き、できる限り早期に全国加重平均千円以上となることを目指していきます。
また、最低賃金の引上げに当たっては、特に中小企業が賃上げしやすい環境整備が重要であり、最低賃金引上げへの対応を支援するための業務改善助成金による支援を続けていきます。さらに、賃上げに向けて、各種支援策・好事例等の周知広報、下請事業者の取引環境の適正化などに取り組んでまいります。
第二に、働き方改革に関する対応についてです。
中小企業については、月六十時間を超える時間外労働に係る割増賃金率の引上げの適用猶予が本年三月末に終了し、割増賃金率が五十%になります。施行に向けて、引き続き集中的な周知に取り組んでまいります。
また、これまで時間外労働の上限規制の適用が猶予されていた一部の事業・業務について、令和六年四月から当該規制が適用となります。
このうち建設業については、災害時の復旧・復興工事を除き、一般則の時間外労働の上限規制が適用されることから、各事業者に円滑に対応いただけるよう、施行に向けて、国土交通省と連携しながら、人材確保、人材育成、魅力ある職場づくりのための支援を行うとともに、丁寧な周知等に取り組んでまいります。
自動車運転者については、過労死等防止の観点から改善基準告示の改正を行い、上限規制の適用開始に向け、運送事業者や荷主等の関係者に対して改正内容等を幅広く周知してまいります。
第三に、労働安全衛生対策についてです。
現在、令和五年度からの次期労働災害防止計画の策定に向けて、安全衛生分科会で議論しています。策定に当たっては、労働災害が多く発生している中小事業者等の安全衛生対策の充実が重要と考えています。また、安全衛生対策に意図して取り組まない事業者への厳正な対応を継続することに加え、事業者の自発的な取組を促すため、安全衛生対策への取組が社会的に評価される環境整備も必要です。こうした観点も踏まえ、本年二月に次期計画の策定を予定しており、新年度からはこの計画に基づき、労働災害防止対策に取り組んでまいります。
第四に、労災補償における対応についてです。
フリーランスとして働く方等の労働者ではない方を対象とする労災保険特別加入制度について、令和元年十二月の労災保険部会の建議等を踏まえ、関係団体からのヒアリング等を行い、特別加入制度の対象として、昨年四月にあん摩マッサージ師・はり師・きゅう師を、昨年七月には歯科技工士を追加しました。
引き続き、特別加入制度の対象範囲の見直し等に向けて議論を行ってまいります。
第五に、新型コロナウイルス対策です。
これまでに「取組の5つのポイント」や「職場における新型コロナウイルス感染症の拡大を防止するためのチェックリスト」等を用いた関係団体への累次の協力依頼や、企業の方・労働者の方向けの「新型コロナウイルスに関するQ&A」を厚生労働省ホームページに掲載し、休業手当や休暇の考え方等について周知等の対応を行ってまいりました。
引き続き、感染状況を注視しつつ、職場における新型コロナウイルス対策の推進に取り組んでまいります。
以上の施策を中心に、よりよい労働環境の整備に向けて、職員一同全力を挙げて取り組んでまいりますので、今後とも、一層の御理解、御協力を賜りますようお願い申し上げ、新年の挨拶とさせていただきます。