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第2編 林業 第2章 チェーンソーによる作業 第3節 チェーンソーによる伐木作業(第59条‐第80条)

第1款 通則

(伐倒作業前の準備)
第59条
会員は、伐倒作業に当たり、作業者に次の事項について事前に確認させ、必要な措置を行った後に伐倒させなければならない。
  • (1) 林道、歩道等の通行路及び周囲の作業者の位置、地形、転石、風向、風速等を確認すること。
  • (2) 立木の樹種、重心、つるがらみや枝がらみの状態、頭上に落下しそうな枯損木、枯れ枝等の有無を確認すること。
  • (3) 跳ね返りや落下、倒木等による危険の可能性のある立木、枝、枯損木等については事前に確認すること。
  • (4) かん木、枝条、ササ、つる、浮石等で、伐倒の際その他作業中に危険を生ずるおそれのあるものを確認すること。
(伐倒方向と伐倒方法の選択)
第60条
会員は、伐倒方向及びそれに応じた伐倒方法について、次の方法を選択するよう努めなければならない。
  • (1) 皆伐等の伐倒方向を自由に選択できる場合において、伐倒方向は、斜め下方向又は横方向を選択すること。
  • (2) 伐倒方向を下方向又は上方向とする場合は、選択した方向に伐倒した場合の特質を十分理解して伐倒すること。
    • ア 下方向への伐倒においては、他方向への伐倒に比べて、伐倒木が倒れるときの速度が最も速くなることから、安全に伐倒を行うため、追いづる切りにより伐倒すること。
    • イ 上方向への伐倒においては、伐倒木が倒れるときに元口が跳ね上がることから、受け口と追い口の間の切り残し(以下「つる」という。)の強度を確保するため、つるを切り過ぎないようにすること。
(障害物の取り除き)
第61条
会員は、伐木の作業を行う場合には、作業者に、それぞれの立木について、かん木、枝条、つる、ささ、浮石等で伐倒等の際に危害を受けるおそれのあるものを、あらかじめ、取り除かせなければならない。
(退避場所の選定)
第62条
会員は、伐木の作業を行う場合には、作業者に、あらかじめ、退避場所を選定させ、かつ、伐倒の際に迅速に退避させなければならない。
2 会員は、前項の退避場所は、伐倒方向の反対側で、伐倒木から十分な距離があり、かつ、立木の陰等の安全なところでなければならない。ただし、上方向に伐倒する場合、その他やむを得ない場合は、退避場所を伐倒方向の横方向とすることができる。
(退避路の整理)
第63条
会員は、前条の退避場所に通ずる退避路について、作業者に、次の各号に掲げる事項を行わせなければならない。
  • (1) 枝条、ささ等で退避の際に危害を及ぼすおそれがあるものを取り除くこと。
  • (2) 積雪がある場合には、雪を十分踏み固め、退避が円滑にできるようにすること。
(伐倒合図)
第64条
会員は、チェーンソーによる伐木の作業を行う場合には、伐倒について予備合図、本合図、終了合図を定め、かつ、作業者に、これらの合図を周知させなければならない。
(合図確認と指差し呼称)
第65条
会員は、チェーンソーによる伐木の作業を行う場合には、作業者に、次の各号に掲げる事項を行わせなければならない。
  • (1) 予備合図を行うこと。
  • (2) 他の作業者が退避したことを応答合図により確認すること。
  • (3) 本合図及び指差し呼称による確認を行った後、伐倒者以外の作業者が、立入禁止区域より確実に退避したことを確認してから伐倒すること。
  • (4) 伐倒を完了した後、終了合図をすること。
(受け口及び追い口)
第66条
会員は、チェーンソーによる伐木の作業を行う場合には、作業者に、それぞれの立木について、次の各号に掲げる事項を行わせなければならない。
  • (1) 受け口の深さは、伐倒しようとする立木の胸高直径が20センチメートル以上であるときは、伐根直径(根張りの部分を除いて算出するものとする。)の4分の1以上とすること。ただし、胸高直径が70センチメートル以上であるときは、3分の1以上とすること。なお、胸高直径が20センチメートル未満の立木であっても、適切に受け口、追い口及びつるを作ることができる場合は、受け口を作ること。
  • (2) 受け口の下切り面と斜め切り面とのなす角度は、45度を基本とし、少なくとも30度以上とすること。受け口の下切りと斜め切りの終わりの部分を一致させ(以下、この一致した線を「会合線」という。)、かつ、会合線は水平とすること。
  • (3) 追い口の位置は、受け口の高さの下から3分の2程度の高さとし、水平に切り込むこと。
  • (4) 追い口切りの切り込みの深さは、つるの幅が伐根直径の10分の1程度残るようにし、切り込み過ぎないこと。
(くさびの使用)
第67条
会員は、チェーンソーによる伐木の作業を行う場合において、伐倒しようとする立木の重心が偏しているもの、あるいは、胸高直径が20センチメートル以上のものを伐倒しようとするときは、作業者に、同一形状かつ同じ厚さのものを組みにして、くさびを2本以上用いること等立木が確実に伐倒方向に倒れるような措置を講じさせなければならない。
2  会員は、作業者に第 1 項の作業を行わせる場合には、次の各号に掲げる事項を行わせるよう努めなければならない。
  • (1) くさびは立木の大きさに応じて本数を増やすこと。
  • (2) くさびの打ち込み時のずれ及び凍結時の抜けの防止のため、表面を滑りにくく加工したくさびを使用すること。
(立入禁止)
第68条
会員は、立木を伐倒する場合は、伐倒しようとする立木を中心として、当該立木の樹高の2倍相当の距離の範囲内に他の作業者を立ち入らせてはならない。
2 会員は、近接して伐倒作業を行う場合は、高い方の樹高の2.5倍相当の距離の範囲内に他の作業者を立ち入らせてはならない。また、それぞれの伐倒者の退避場所の選定の際には、前項の立入禁止区域内に入らないように、退避場所を確保させなければならない。

第2款 かかり木処理作業

(作業計画に基づく実施)
第69条
会員は、第50条第1項第2号において、かかり木処理の作業方法を作業計画に定めたときは、当該作業計画に定めた機械器具等を用意して、作業現場に配置しなければならない。
2 会員は、かかり木が発生したときは、速やかに当該作業計画に定めた作業方法でかかり木処理を行わなければならない。
3 会員は、当該作業計画に定めたかかり木処理の作業方法では十分な安全を確保できないときは、作業指揮者の指示の下、その他の安全な方法により対処しなければならない。ただし、それが困難な場合には、第70条第1項第1号オの措置を講じなければならない。
(かかり木の処理における安全な作業の徹底)
第70条
会員は、既にかかり木が生じている場合又はかかり木が生じた場合には、作業者に当該かかり木を速やかに処理させるとともに、次の各号に掲げる措置を講じなければならない。
  • (1) 当該かかり木の処理の作業について安全な作業をさせるため次のアからオまでの事項を行わせること。
    • ア 当該かかり木の径級、状況、作業場所及び周囲の地形等の状況を確認すること。
    • イ 当該かかり木が生じた後速やかに、当該かかり木により危険を生ずるおそれのある場所から安全に退避できる退避場所を選定すること。
    • ウ 当該かかり木の処理の作業の開始前又は開始後において、当該かかり木がはずれ始め、作業者に危険が生ずるおそれがある場合、イで選定した退避場所に作業者を退避させること。
    • エ かかり木が生じた後、やむを得ず当該かかり木を一時的に放置する場合を除き、当該かかり木の処理の作業を終えるまでの間、当該かかり木の状況について常に注意を払うこと。
    • オ 速やかに、かつ、確実にかかり木を処理することが困難で、かかり木をやむを得ず一時的に放置する場合には、当該かかり木による危険が生ずるおそれがある場所に当該かかり木の処理の作業に従事する作業者以外の作業者等が近づかないよう、標識の掲示、テープを回すこと等の立入禁止の措置を講じさせること。
  • (2) 作業は、できるだけ2人以上の組となるように調整すること。
  • (3) 機械器具等は、次のアからウまでに掲げる場合に応じて使用し、安全な作業方法により処理すること。
    • ア 車両系木材伐出機械(伐木等機械、走行集材機械及び架線集材機械(機械集材装置又は簡易架線集材装置の集材機として用いている場合を除く。)をいう。以下同じ。)、機械集材装置、簡易架線集材装置等を使用できる場合には、原則として、これらを使用して、当該かかり木を外すこと。
    • イ 当該かかり木の胸高直径が20センチメートル以上である場合又はかかり木が容易に外れないことが予想される場合は、けん引具等を使用し、当該かかり木を外すこと。
    • ウ 当該かかり木の胸高直径が20センチメートル未満であって、かつ、当該かかり木が容易に外れることが予想される場合は、木回し、フェリングレバー、ターニングストラップ、ロープ等を使用して、かかり木を外すこと。
2 作業者はかかり木の処理について、次のアからオまでに掲げる事項を行ってはならない。
  • ア かかられている木を伐倒することにより、かかり木全体を倒すこと。
  • イ 他の立木を伐倒し、かかり木に激突させることにより、かかり木を外すこと。
  • ウ かかり木を元玉切りし、地面等に落下させることにより、かかり木を外すこと。
  • エ かかり木を肩に担ぎ、移動すること等により、かかり木を外すこと。
  • オ かかられている木に上り、かかり木又はかかられている木の枝条を切り落とすこと等により、かかり木を外すこと。

第3款 大径木・困難木の伐倒

(大径木の伐倒)
第71条
会員は、大径木の伐倒に従事する作業者に対し、次の事項を講じさせなければならない。
  • (1) 受け口を切るときは、必要に応じて芯切りを行うこと。
  • (2) 立木の状況に応じて追いづる切りにより伐倒を行うこと。
  • (3) 根張りが大きい場合は、追い口側以外の根張りを切り取った後に、伐倒を行うこと。
  • (4) 伐倒時の跳ね上がりを防ぐため、受け口を切り取った後に、伐倒方向にある根株のかどを切り落としておくこと。
(困難木の定義)
第72条
困難木とは次のいずれかの状態にあるものをいう。
  • (1) 偏心木又は二又木
  • (2) 枝がらみの木又はつるがらみの木
  • (3) 裂け易い木
  • (4) あばれ木又は腐朽木若しくは空洞木
  • (5) 被害木(転倒木、折損木、欠頂木)
  • (6) 急傾斜地にある立木等の伐木作業が困難な木
  • (7) 伐木作業を行うとき、けん引具、胴ベルト(U字つり)、移動式クレーン等、別途装備等の用意が必要な木
(偏心木の伐倒)
第73条
会員は、前条第1号の偏心木を伐倒する場合には、作業者に次の措置を講じさせなければならない。
  • (1) 伐倒方向は、重心の方向を避け、重心の方向から30度程度左右いずれかの方向とすること。
  • (2) 受け口は深めとすること。
  • (3) 追い口の高さは、通常の位置より高くすること。
  • (4) 追いづる切りによる方法を考えること。
  • (5) 裂け易い木は必要に応じ、裂け止めをすること。
(二又木の伐倒)
第74条
会員は、第72条第1号の二又木を伐倒する場合には、作業者に次の措置を講じさせなければならない。
  • (1) 互いに異なる方向に傾いている二又木は、割り木にして小さい木から伐倒すること。
  • (2) 同じ方向に傾いている二又木は、割り木にして下の木から伐倒すること。
  • (3) 高い位置で二又になっている木は、伐倒方向の選定に特に留意すること。
(枝がらみの木の伐倒)
第75条
会員は、第72条第2号の枝がらみの木を伐倒する場合には、作業者に、できる限り伐倒前にからんでいる枝を取り除かせなければならない。取り除くことができない場合には、次の各号に掲げる事項を行わせなければならない。
  • (1) 枝がらみの木が斜面の上下に位置しているときは、下方の木から伐倒すること。
  • (2) 枝がらみの木が斜面の左右に位置しているときは、小さい方の木から、枝がらみの反対の方向へ伐倒すること。
(つるがらみの木の伐倒)
第76条
会員は、第48条の調査の結果、伐採予定の森林内に第72条第2号のつるがらみの木がある場合は、作業計画に記載するとともに、伐採着手前につる類を根元から切り離し、つる類を枯らしておかなければならない。
2 会員は、つるがらみの木を伐倒する場合は、作業者にできる限り伐倒前につる類を取り除かせるとともに、つる類のうち、フジツル、ヤマブドウ、クズ等は、枯れても材質を保持しており、つるの根元を切っても数年間は腐らない点に注意するよう周知しなければならない。
3 会員は、つるが複数の木に跨がっている場合等、つるを取り除くことができない場合においては、作業者に単独で作業を行わせてはならず、第80条に基づき、同条第1号の業務に関して指名した者に判断させなければならない。
(裂け易い木の伐倒)
第77条
会員は、第48条の調査の結果、伐採予定の森林内に第72条第3号の裂け易い木がある場合は、作業計画に記載し、伐採着手前に当該木にテープ等により標示を行っておくとともに、作業者に対し次の事項を行わせなければならない。
  • (1) 必要に応じ、伐倒前に、ワイヤロープ、麻ロープ等を用いて、当該木の追い口の上部に5回程度強く巻き付けておくこと。
  • (2) 裂け易い木の伐倒方法は、追いづる切りによること。
2 裂け易い木とは、ホウノキ、ナラ、カシ、サクラ、ミズキ、クルミ、シイ、ウリハダカエデ、アベマキ、ハマセンダン、シオジ、セン、ケヤキ、クリ、キハダ、ミズメ、ウダイカンバ、ヤチダモ、ハンノキ、カラスザンショウ、ネムノキ、ケンポナシ等の樹木をいう。
(腐朽木、空洞木の伐倒)
第78条
会員は、第72条第4号の腐朽木又は空洞木の伐倒を行う場合には、作業者に次の措置を講じさせなければならない。
  • (1) 伐倒する木の伐根部や幹部をハンマー等で叩いて、腐朽の状態を確認すること。
  • (2) 腐朽の状態に合わせて、次に掲げる方法により鋸断方法を調整すること。
    • ア 腐朽部の高さを予測し、腐朽程度の少ない幹部を鋸断する。ただし、作業の安全のため、鋸断部分の高さは1メートル以下とする。
    • イ 腐朽が中心部まで広がっている木の受け口の深さは、つるの機能低下を防ぐため、伐根直径の5分の1から6分の1程度の深さとする。
    • ウ 根張り切りは、突然の倒木や追い口切りの途中の割れ等の要因になるため行わない。
    • エ つる幅は、腐朽程度に合わせて、幹の10分の1から10分の3程度を目安とする。
    • オ 腐朽木の下枝は落下し易いので特に注意する。
    • カ 追い口切りの途中でも急に木が倒れ出すことがあるため、伐倒中の回転や幹の割れ等、常に木の動きを注意する。
(被害木の処理)
第79条
会員は、第72条第5号の被害木の処理をする場合には、作業者に次の措置を講じさせなければならない。
  • (1) 曲がっている木の切り離しは、曲がりの内側から切れ目を入れ、次に外側から鋸断する。
  • (2) 跳ね返りのおそれのある場合は、跳ね返りに備えて、退避路を事前に確保しておく。
  • (3) 転倒木で根株が起きている木の切り離しに当たっては、根株の転動を見極め、それに応じた措置を講じた上で、作業を行う。
  • (4) 折損木又は欠頂木は、それぞれの状態に応じて注意深く、次に掲げる方法により伐倒する。
    • ア 折損木は、木材グラップル機のグラップル又は搭載されているウインチのワイヤロープ等で折れた部分を引き落とし、欠頂木として処理する。
    • イ 欠頂木は、重心が幹の中心部にあって、枝がないため、重心線の移動が行いにくいことから、受け口を大きく作り、必ずくさびを使用して伐倒する。
  • (5) 重なって倒れている転倒木は、切り離した材をウインチ等で順次引き出しながら作業を行う。
(指示を要する伐木)
第80条
会員は、第72条に定める困難木を伐倒する業務のうち、次の各号に掲げる業務に就かせる場合には、安衛則第36条第8号に係る特別教育修了者のうちから技能を選考のうえ、会員が指名した者に、伐倒による危害を防止するための必要な事項を指示させなければならない。
  • (1) 枝がらみの木、つるがらみの木の伐木の業務
  • (2) 裂け易い木の伐木の業務
  • (3) あばれ木又は腐朽木若しくは空洞木の伐木の業務
  • (4) 被害木(転倒木、折損木、欠頂木)の伐木の業務
  • (5) 重心が伐倒方向へ著しく偏心している木の伐木の業務
  • (6) 伐木作業を行うとき、けん引具、胴ベルト(U字つり)、移動式クレーン等、別途装備等の用意が必要な木の伐木の業務