災害事例研究 No.11 【木材製造業】
NCルータの主軸ヘッドと操作盤との間に挟まれる
NCルータの部材の切削作業において、入力された一連の動きを終えたルータの主軸ヘッドが最初の位置に戻ってきたとき、機械本体と操作盤を接続しているアームに腰掛けていた被災者が主軸ヘッドと操作盤との間に挟まれた。
災害発生の状況
労働災害が発生した工程は、パチンコ台の部材を切削加工するため、NCルータ(数値制御により切削、穴あけ、切断加工する自動加工機械で、今回の機械はルータ2軸、ドリル1軸、丸のこ1軸を備えるものである)のテーブルに加工材(900 mm×470 mm)をセットし、この加工材から330 mm×450 mmの部材2枚を切削加工するものである。
切削加工は、第1主軸ヘッドの主軸に取り付けられたルータピットで行うようものであり、プログラムされた作業工程(部材Aを加工後、同Bを加工して元の位置へ戻るものである)、仕上寸法により部材AおよびBが自動的に切削加工され、仕上がるものである。
労働災害発生当日の被災者の作業は、この切削作業中、操作盤とテーブルの間において、切削加工により出る端材の除去と切くずの清掃、加工状況の監視などを行うものであった。
被災者は、NCルータを起動(主軸ヘッドが図の左側から右側の位置に移動)し、切削加工された部材Aの端材の除去などを行った後、部材Bが切削加工されるまで少し時間がかかるため、操作盤のアームに腰かけてルータの切削状況を監視していた。部材A及びBの切削加工が終わり、主軸ヘッドが図の破線の位置から元の実線の位置(原点)に戻ってきたとき、操作盤のアーム上に腰掛けていた被災者が、操作盤と主軸ヘッドの部分に挟まれ、死亡したものである。
災害発生の原因
労働災害の発生原因としては、次のことが考えられる。
- 機械の稼動中、被災者が主軸ヘッドの移動範囲に立ち入り、操作盤のアーム上に腰掛けていたこと。
- 主軸ヘッドの移動範囲への立ち入りを防止する措置を講じていなかったこと。
- 作業者に対する機械の機能に関する教育が不十分であったこと。
- この切削加工作業について、作業手順(作業標準)が定められていなかったこと。
災害防止対策
- 主軸ヘッドが自動的に移動する機械では、主軸ヘッドの移動範囲を作業者に分かるように明確にするとともに、主軸ヘッドの移動範囲に作業者が入ることを防止するための囲い、柵等を設けること。
また、機械の稼動中は、囲い、柵等で囲った内部を立入禁止区域とし、作業者に徹底すること。 - 作業者を機械の操作に就かせるときは、その機械の機能、安全等についての教育を必ず行うこと。
特に、自動制御される機械の可動部は、複雑な動きをするものも多いので、作業手順を定め、安全作業を励行させることが重要である。 - 切削加工作業について、安全を含めた適正な作業標準を作成し、これに基づく安全教育の徹底を図ること。
その際、部材の加工方法(部材の設置位置、主軸ヘッドの移動範囲等)を検討し、機械が稼動中は、操作盤およびアームとテーブル間での作業を避ける必要がある。
関係法令
労働安全衛生法(抄)
(昭和47年法律第57号)
(事業者の講ずべき措置等)
第20条 事業者は、次の危険を防止するため必要な措置を講じなければならない。
一 機械、器具その他の設備(以下「機械等」という。)による危険
二 爆発性の物、発火性の物、引火性の物等による危険
三 電気、熱その他のエネルギーによる危険
【罰則】 第119条第1号及び第122条
第24条 事業者は、労働者の作業行動から生ずる労働災害を防止するため必要な措置を講じなければならない。
【罰則】 第119条第1号及び第122条
(安全衛生教育)
第59条 事業者は、労働者を雇い入れたときは、当該労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、その従事する業務に関する安全又は衛生のための教育を行なわなければならない。
2 前項の規定は、労働者の作業内容を変更したときについて準用する。
3 (省略)
【罰則】 第1項及び第2項 第120 条第1号及び第122条
労働安全衛生規則(抄)
(昭和47年労働省令第32号)
(雇入れ時等の教育)
第35条 事業者は、労働者を雇い入れ、又は労働者の作業内容を変更したときは、当該労働者に対し、遅滞なく、次の事項のうち当該労働者が従事する業務に関する安全又は衛生のため必要な事項について、教育を行わなければならない。(中省略)
一 機械等、原材料等の危険性又は有害性及びこれらの取扱い方法に関すること。
二 安全装置、有害物抑制装置又は保護具の性能及びこれらの取扱い方法に関すること。
三 作業手順に関すること。
四 作業開始時の点検に関すること。
五 当該業務に関して発生するおそれのある疾病の原因及び予防に関すること。
六 整理、整頓及び清潔の保持に関すること。
七 事故時等における応急措置及び避難に関すること。
八 前各号に掲げるもののほか、当該業務に関する安全又は衛生のために必要な事項。
2 (省略)