災害事例研究 No.143 【木材製造業】
トロリーフィーダーのメンテナンス作業中に、アームが落下して頭部に激突
トロリーフィーダーのアームの下部に潜り込み、減速機のオーバーホールのために固定ボルトを取り外したところ、アームの昇降ロックが外れて自然落下し、被災者の頭部に激突した。
災害の発生状況
トロリーフィーダーのアームを昇降させる駆動モーターにつながっている減速機をオーバーホールするために、アームの下に潜り込み減速機の固定ボルトを取り外したところ、減速機出力部分とシャフトをつなぐチェーンが外れ、アームが落下し被災者の頭部に激突した。
当該装置は、主に幅木等の長尺物を台車へと自動的に積み替えるための装置で、駆動モーター、減速機、チェーン及び動力伝達用シャフトを介し、アームを昇降させる構造で、減速された動力がチェーンでシャフトを回転させる仕組みとなっていた。
本件は、減速機の固定ボルトを取り外したことにより、チェーンがゆるんで外れ、アームの昇降ロックが効かないフリーの状態になり、重さ約350Kgのアームが約2m自然落下したものである。
また、災害当日は休日で、前日の作業終了後、アームは通常の作業習慣により、最高位置に停止されていた。
災害発生の原因
- トロリーフィーダーの機械の仕組み等について、把握しないままメンテナンス作業を行ったこと。
- トロリーフィーダーのアームの下部で作業をする場合に、アームが降下しないよう安全支柱等を使用するなどの安全な措置を講じなかったこと。
- トロリーフィーダーのメンテナンス作業に関する作業手順書を作成していなかったこと。
- トロリーフィーダーのメンテナンス作業に関するリスクアセスメントを実施していなかったこと。
災害の防止対策
- トロリーフィーダーのアームの昇降ロックの仕組みなど機械の特性等について、十分に把握したうえでメンテナンス作業を実施すること。
- トロリーフィーダーのアームの下部で作業をする場合は、アームが降下しないように、安全支柱や安全ブロックを設置してから、または、トロリーフィーダーのアームを最低下降位置に下げた状態で、減速機の取り外しの作業を行うこと。
- トロリーフィーダーの装置の仕組み等を踏まえたメンテナンスに関する作業手順書を作成すること。
- トロリーフィーダーに関するリスクアセスメントを実施すること。
[参考]
〈林業・木材製造業労働災害防止規程)
(林材業リスクアセスメントの実施)
第16条 会員は、作業方法又は作業手順を新規に採用し、又は変更した時は、関係法令に定めるところにより、建設物、設備、原材料、工具等による又は作業行動その他業務に起因する危険性又は有害性等の調査(以下この条において「リスクアセスメント」という。)を行い、その結果に基づいて、必要な措置を講じなければならない。
2 会員は、リスクアセスメント実践マニュアル等を活用して、定期的にリスクアセスメントを行うように努めなければならない。
(リスクアセスメントの実施)
第477条 会員は、第16条に定めるものの他、非定常作業実施に当たっては、作業内容と関連するリスクを事前に網羅的に把握し、抽出されたリスクに関する情報を関係者間で共有に努めなければならない。
なお、設備対策が困難なリスクに対しては、事前に把握した問題点を関係者間で共有し、必要に応じて管理的対策も検討に努めなければならない。
2 会員は、前項に定めるリスクアセスメント実施に当たっては、次の事項を念頭に実施に努めなければならない。
(1) 事故や災害は起こり得ることを前提にすること。
(2) 特に重篤な災害に対しては、十分な分析を行うこと。
(3) 人は誤り、機械は故障やトラブルを引き起こすことを前提にすること。
(4) 人と機械(危険源)の関わりを一連の流れに沿って把握すること。
(5) 絶対安全を目指すのではなく、残留リスクの明確化を重視すること。
(異常処理作業における作業手順書の作成)
第479条 会員は、異常処理作業の実施に当たり、あらかじめ作業手順書の作成に努めなければならない。また、必要に応じ作業手順書の見直し及び変更を行うように努めなければならない。
2 会員は、前項に定める作業手順書の作成に当たり、次の事項を念頭に作成に努めなければならない。
(1) あらかじめ想定される故障、作業の実態、災害事例等をもとに、対象となる非定常作業の危険性及び有害性の調査及び選定を行うこと。危険性および有害性の調査及び選定は、作業者も参加させ定期的に実施すること。
(2) 選定した異常処理作業について、災害要因の分析及び対応措置の検討を行うとともに、その結果を踏まえ、異常等の状況の確認、異常等の処置及び復帰の手順、注意事項及び禁止事項を含めた作業手順書を作成すること。