災害事例研究 No.144 【木材製造業】
ベルトコンベヤーとチェーンコンベヤーのすき間に巻き込まれて死亡
被災者は、チッパの入り口付近で原木が詰まったために、チェーンコンベヤーとベルトコンベヤーのすき間近くで、トビを使って原木の詰まりを解消するために作業を行っていたところ、チェーンコンベヤーとベルトコンベヤーの約5cmのすき間に両足を巻き込まれて死亡した。
災害の発生状況
被災者が作業を行っていたチップ工場の作業の流れは、車両系荷役運搬機械により原木を工場内のドラムバーカに投入し、ドラムバーカにより皮を剥き、皮剥きを終えた原木をベルトコンベヤーとチェーンコンベヤーによりチッパまで自動搬送し、チッパで原木を粉砕してチップを製造していた。
被災者は、災害当日は、チッパ操作盤の操作作業を担当しており、チッパの入り口付近で原木が詰まったために、チェーンコンベヤーを逆進運転し、ベルトコンベヤーは正進運転したまま、チェーンコンベヤーとベルトコンベヤーのすき間近くで、トビを使って原木の向きを変えて再投入しようとしたところ、チェーンコンベヤーとベルトコンベヤーの約5cmのすき間に両足を巻き込まれて死亡したものと推察される。
工場内の作業手順では、チッパに原木が詰まった場合は、ベルトコンベヤーを停止した上で、トビを使用して原木の向きを変えるよう決められていた。また、被災者から操作盤上のチェーンコンベヤー及びベルトコンベヤーの作動停止スイッチは1m、非常停止ボタンは、3mほど離れた場所に設置されていた。
災害発生の原因
- チェーンコンベヤーとベルトコンベヤーの外側に柵を設置していなかったことと、隙間付近に覆いを設置していなかったこと。
- チェーンコンベヤーとベルトコンベヤーのすき間付近で、トビを使い、当該原木の向きを変えて再投入をする作業は、コンベヤーの運転を停止するなどの措置が徹底されていなかったこと。
- コンベヤーの運転を停止することができる非常停止装置を作業付近に設置していなかったこと。
災害の防止対策
- チェーンコンベヤーとベルトコンベヤーの外側に柵を設置すること、チェーンコンベヤーとベルトコンベヤーの隙間に覆いを設置し、ベルトコンベヤーに巻き込まれる危険を排除すること。
- ベルトコンベヤーを停止した上でトビを使用して原木の向きを変えるなどの作業手順書の遵守を徹底するため、リスクアセスメントを実施して作業者全員がリスクを共有する。
- コンベヤーの運転を停止することができる非常停止装置を作業を頻繁に行う場所付近に設置すること。
〈労働安全衛生規則〉
(非常停止装置)
第151条の78 事業者は、コンベヤーについては、労働者の身体の一部が巻き込まれる等労働者に危険が生ずるおそれのあるときは、非常の場合に直ちにコンベヤーの運転を停止することができる装置(第151条の82において「非常停止装置」という。)を備えなければならない。
〈通達〉 昭和53年2月10日付け基発第78号を抜粋
(1) 本条は、労働者が作業中にコンベヤーに巻き込まれる等の災害が発生したときに、被災者自身又は他の労働者が元スイッチを切ることなしに直ちにコンベヤーを停止することができる装置の設置を義務づけたものであること。
(2) 「危険が生ずるおそれがあるとき」に該当しないと認められるのは、次の措置のいずれかを行っているとき等をいうものであること。
イ コンベヤーの周囲を全部プラスチック、鉄板等で覆ってあること。
ロ コンベヤーの外側に柵を作り、通常作業中は労働者が入ることができないようにすること。
ハ ベルトコンベヤー等でローラー部分に柵又は覆いがあり、巻き込まれるおそれのある部分と作業を行う者との間を遮断すること。
(3) 「身体の一部が巻き込まれる等」の「等」には、プッシャーコンベヤーにひかれること等が含まれること。
(4) 「非常停止装置」には、ロープ式非常停止装置のようにコンベヤーに沿ってロープが張られこのロープを引くことによってコンベヤーの運転を直ちに停止できるもの、巻き込まれるおそれのある箇所ごとに設置される非常停止スイッチ、コンベヤーの長さが短いときに送り出し側とコンベヤーの末端に設置する非常停止スイッチ等があること。