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災害事例研究 No.26 【木材製造業】

ダブルサイザーへ合板を挿入するローラーに巻き込まれる

 合板工場で、合板をダブルサイザーに挿入するローラー(長さ2m、直径15cm の円柱状、金属製)に作業者が巻き込まれて死亡した。

災害発生の状況

 災害発生の当日、作業者Aは、ホットプレス及びダブルサイザーを使用して圧締作業及び寸法裁断作業に従事していた。
 ホットプレスを使用した圧締作業は、午前中に予定数を終わったため、午後はダブルサイザーを使用して、圧締した合板を規定寸法に切断することになっていた。午後の作業を開始してから約1時間が経過したとき、合板をダブルサイザーに挿入するローラーに、裁断した端材や切削屑が詰まり、作業に支障が生じた。
 このため、Aはダブルサイザーを可動させたまま、ダブルサイザーの側面からローラーに詰まった端材や切削屑を取り除いていたところ、誤ってローラーに触れ、回転中のローラーに巻き込まれた。すぐに救出され、病院に搬送されたが、間もなく死亡した。
 ダブルサイザーの側面には、作業者が回転中のローラーに接触することを防止するためのガード等は設けられておらず、緊急時に直ちに停止させる非常停止スイッチ(装置)も設けられていなかった。
 Aが挟まれたダブルサイザーのローラーは、端材や切削屑の詰まりが一日に数回程度発生しており、その都度、除去作業を行っていた。この作業は、ダブルサイザーを止めて行うことが作業手順書に記載されていたが、Aは機械を止めずに除去作業を行っていた。
 また、端材や切削屑の除去作業を行うときは、専用の手工具を使用することになっていたが、この手工具はダブルサイザーから離れた場所に置かれていたため、Aは普段から手工具を使用せずに素手で行っていた。

災害発生の原因

この災害の発生原因としては、次のようなことが考えられる。

  1. 切断した端材や切削屑を吸塵するための集塵装置の能力が十分でなかったこと。
  2. 回転中のローラーに作業者が容易に接触する危険な状態であったこと。
  3. ローラーに詰まった端材や切削屑を除去する際、ダブルサイザーを停止しなかったこと。
  4. ローラーに詰まった端材や切削屑を除去する際、専用の手工具を使用せず、素手で行ったこと。

労働安全衛生規則(抄)

(昭和47 年労働省令第32 号)

(原動機、回転軸等による危険の防止)
第101条 事業者は、機械の原動機、回転軸、歯車、プーリー、ベルト等の労働者に危険をおそれのある部分には、覆い、囲い、スリーブ、踏切橋等を設けなければならない。
2 事業者は、回転軸、歯車、プーリー、フライホイール等に附属する止め具については、埋頭型のものを使用し、又は覆いを設けなければならない。
3 事業者は、ベルトの継目には、突出した止め具を使用してはならない。
4 事業者は、第1項の踏切橋には、高さ90センチメートル以上の手すりを設けなければならない。
5 労働者は、踏切橋の設備があるときは、踏切橋を使用しなければならない。

(そうじ等の場合の運転停止等)
第107条 事業者は、機械(刃部を除く。)のそうじ、給油、検査又は修理の作業を行う場合において、労働者に危険を及ぼすおそれのあるときは、機械の運転を停止しなければならない。ただし、機械の運転中に作業を行わなければならない場合において、危険な箇所に覆いを設ける等の措置を講じたときは、この限りではない。
2 事業者は、前項の規定により機械の運転を停止したときは、当該機械の起動装置に錠をかけ、当該機械の起動装置に表示板を取り付ける等同項の作業に従事する労働者以外の者が当該機械を運転することを防止するための措置を講じなければならない。

(刃部のそうじ等の場合の運転停止等)
第108条 事業者は、機械の刃部のそうじ、検査、修理、取替え又は調整の作業を行うときは、機械の運転を停止しなければならない。ただし、機械の構造上労働者に危険を及ぼすおそれのないときは、この限りでない。
2 事業者は、前項の規定により機械の運転を停止したときは、当該機械の起動装置に錠をかけ、当該機械の起動装置に表示板を取り付ける等同項の作業に従事する労働者以外の者が当該機械を運転することを防止するための措置を講じなければならない。
3 事業者は、運転中の機械の刃部において切粉払いをし、又は切削剤を使用するときは、労働者にブラシその他の適当な用具を使用させなければならない。
4 労働者は、前項の用具の使用を命じられたときは、これを使用しなければならない。

【参考】
(非常停止装置)
第151条の78 事業者は、コンベヤーについては、労働者の身体の一部が巻き込まれる等労働者に危険が生ずるおそれのあるときは、非常の場合に直ちにコンベヤーの運転を停止することができる装置(第151 条の82において「非常停止装置」という。)を備えなければならない。

災害防止対策

同種災害を防止するためには、次のような対策の徹底が必要である。

  1. 設置する機械が求める吸塵能力を有する集塵装置を設置すること。 一般に機械には、切削屑排出カードや集塵用フードが設けられているとともに、必要な吸塵能力が取扱説明書などに記載されているので、それに従って吸塵装置を設置することが大切である。
  2. 作業者が接触し巻き込まれるおそれのあるローラーには、ガード等を必ず設けること。
    ダブルサイザー等の機械の使用開始前に、リスクアセスメントを行い、作業者が接触し巻き込まれるおそれのある箇所には、作業者が可動部分に接触することを防止するためガード等を設ける。また、ガード等を開けたときは、直ちに機械が停止し、閉めた後でなければ再起動しない構造のものとすることが大切である。
    さらに、万一、ローラーに巻き込まれそうになっても、直ちに停止させることができる非常停止スイッチ(装置)を作業位置から離れずに操作できる場所に設置することも必要である。
  3. 機械の点検・清掃を行うときは、ダブルサイザー等の機械を必ず停止させて作業を行うことを作業者に周知徹底すること。
    機械の点検・清掃は、ダブルサイザー等の機械を必ず停止させて作業を行うことを作業手順書に盛り込むとともに、作業者に周知徹底する。
  4. 詰まった端材や切削屑を除去する際は、専用の手工具を用意し、作業者に使用させること。
    詰まった端材や切削屑を除去する際に、機械の可動部分に触れることを防止するため、手工具を作業者に使用させるとともに、このことは作業手順書にも盛り込んでおく。また、この手工具は、使用しやすい場所に保管しておくことも大切である。