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災害事例研究 No.178 【木材製造業】

原木の皮むき機(バーカー)の清掃・調整作業中、丸太に激突

不具合により停止した原木の皮むき機の清掃・調整作業を稼働状態のまま行い、排出された丸太に激突された。

災害の発生状況

 製材工場内において、皮むき機(バーカー)で原木(長さ約4.1m、直径40cm、重量約250kg)の皮むき作業を行っていた。皮むき機が不具合により停止したため、複数人で皮むき機の清掃・調整作業を行い、被災者は皮むき機の刃部に詰まった皮の除去作業を機械が稼働状態のまま行っていたところ、詰まった皮が取れて皮むき機から排出された丸太が激突し死亡したものである。

災害の発生原因

  1. 皮むき機の運転を停止させずに、刃部に詰まった皮の除去作業を行ったこと。
  2. 皮むき機の機械の付近で作業に従事する作業者に稼働状況が不明確であったこと。
  3. 皮むき機に生じた不具合等について、安全かつ適正に処理するための作業手順書を定めていなかったこと。
  4. リスクアセスメントを実施して、危険性や有害性等の調査及びその結果に基づく措置を講じていなかったこと。

災害の防止対策

  1. 皮むき機の不具合が発生し機械の清掃・調整作業を行うときは、機械を停止させること。
  2. 皮むき機の機械稼働中は危険範囲内に労働者が立ち入れないようにするための囲い等の設備を設けること。
  3. 皮むき機の機械の稼働状況を示すパトランプや材料搬出時の警報装置を取り付け、常時有効に保持されるよう日常点検を徹底すること。
  4. 皮むき機の不具合による異常処理作業についてあらかじめ作業手順書を定め、作業者に周知すること。
  5. 異常処理作業における作業手順書の作成等に当たっては、危険予知活動、リスクアセスメントを実施すること。リスクアセスメント実施の際は危険性や有害性の特定、リスクの見積り、優先度の設定、リスク低減措置を決定すること。

〈労働安全衛生規則〉
(刃部の掃除等の場合の運転停止等)
第108条 事業者は、機械の刃部の掃除、検査、修理、取替え又は調整の作業を行うときは、機械の運転を停止しなければならない。ただし、機械の構造上労働者に危険を及ぼすおそれのないときは、この限りでない。
2 事業者は、前項の規定により機械の運転を停止したときは、当該機械の起動装置に錠をかけ、当該機械の起動装置に表示板を取り付ける等同項の作業に従事する労働者以外の者が当該機械を運転することを防止するための措置を講じなければならない。
3 (略)
4 (略)

〈林業・木材製造業労働災害防止規程〉
(リスクアセスメントの実施)
第506条 会員は、第17条に定めるリスクアセスメントの実施の他、非定常作業実施に当たっては、作業内容と関連するリスクを事前に網羅的に把握し、抽出されたリスクに関する情報を関係者間で共有するよう努めなければならない。
なお、設備対策が困難なリスクに対しては、事前に把握した問題点を関係者間で共有し、必要に応じて管理的対策を講ずることも検討するよう努めなければならない。
2 (略)

(異常処理作業における作業手順書の作成)
第508条 会員は、異常処理作業の実施に当たり、あらかじめ作業手順書を作成するよう努めなければならない。また、必要に応じ作業手順書の見直し及び変更を行うように努めなければならない。
2  会員は、前項に定める作業手順書の作成に当たり、次の事項を念頭に作成に努めなければならない。
⑴  あらかじめ想定される故障、作業の実態、災害事例等をもとに、作業手順書作成の対象となる非定常作業の危険性及び有害性の調査及び対象となる作業の選定を行うこと。危険性及び有害性の調査及び作業手順書作成の対象となる異常処理作業の選定は、作業者も参加させ定期的に実施すること。
⑵  選定した異常処理作業について、災害要因の分析及び対応措置の検討を行うとともに、その結果を踏まえ、異常等の状況の確認、異常等の処置及び復帰の手順、注意事項及び禁止事項を含めた作業手順書を作成すること。
⑶ (略)

(異常処理作業の実施)
第509条 会員は、異常処理作業の実施に当たり、前条に定める非定常作業手順書に基づくとともに、特に次の事項に留意して実施するよう努めなければならない。
⑴  設備の異常発生時、会員は、異常処理作業を実施する者として作業者を指名し、指名した作業者(以下「指名者」という。)に、まず設備を停止し、電源スイッチを切りスイッチキーを抜き取らせること。それが困難な場合には、当該設備に操作禁止札を取り付けること。
⑵  設備の異常発生時、指名者以外の作業者は、設備又は作業を停止し、管理・監督者等に報告の上指示を待つこと。
⑶  発生頻度の多い異常処理作業は、定期的に作業手順書等の確認や見直しを、職場の安全活動の一部として継続すること。
⑷~⑸ (略)
⑹  非定常作業に当たっては、「止める、呼ぶ、待つ」を日頃から徹底すること。