災害事例研究 No.157 【木材製造業】
製材工場の壁に立て掛けた木材が強風により倒れ、被災者の背部に激突
手押台車へ木材廃材入りのかごを載せ、屋外通路を搬送していたところ、製材工場の壁に立て掛けてあった木材数本が強風に煽られ倒壊・飛来し、被災者の背部に激突した。
災害の発生状況
被災者は、製材工場(労働者数12名)で発生した木材廃材を外土場まで運搬するため、廃材かごを手押台車へ乗せ、風がやや強く吹く中、製材工場に沿って設けられた屋外通路を移動していた。その際に、製材工場の外壁に立て掛けてあった木材が強風を受けて倒れ、被災者の首から背中にかけて激突。製材工場の当該箇所は資材の仮置き場で外壁に立て掛けてあった木材は十数本であり、そのうちの1本(長さ1.8m、幅15cm、厚さ5cm)が倒れて、移動していた被災者の背部に激突し負傷した。
災害発生の原因
- 資材の仮置き場は、ペンキで区画表示されていたが、強風にさらされる屋外の仮置き場でもあるにもかかわらず、木材は単に立て掛けたままで、倒壊・飛来防止措置を講じていなかったこと。
- 仮置き場の木材の置き方などの作業計画と作業手順を作成していなかったこと。
- 保護帽を着用していなかったこと。
災害の防止対策
- 製材工場の壁に木材を立て掛けて仮置きする場合は、木材が倒壊・飛来を防止するための設備等を設けること。
具体的には、強風等の気象条件下においても危険が生じないよう材の長さ、重さ、材質等に応じ、①必要な間隔ごとに十分な強度を有した腕木を設けること、②木口部分の滑り止め措置やロープ等による「鉢巻き」などにより、ほかの固定物へ緊結するなど木材の倒壊・飛来を防止するための措置を行うこと。
併せて工場内の整理整頓に努めること。 - 屋外通路等の一区画を資材類の置場として利用する場合には、通路を通る作業者に資材が倒壊・飛来することがないよう、あらかじめ一定の設備要件を満たしておくこと。
- 物置き場には置場の表示のほか、関係労働者に労働災害発生の危険性、倒壊・飛来防止措置の確実な実施などの安全教育を実施すること。
- 製材工場壁面への木材仮置き場については、作業計画と作業手順を作成し、関係作業者へ周知・徹底を図ること。
- 飛来等のおそれのある作業については、保護帽を着用すること。
〈 労働安全衛生法:労働安全衛生規則 〉
(物体の飛来落下による危険の防止)
労働安全衛生規則第538条
事業者は、作業のため物体が飛来することにより、労働者に危険を及ぼすおそれのあるときは、飛来防止の設備を設け、労働者に保護具を使用させる等当該危険を防止するための措置を講じなければならない。
「飛来防止の設備」は、物体の飛来自体を防ぐべき措置を設けることを第一とし、この予防措置を受け難い場合、もしくはこの予防措置を設けるもなお危害のおそれのある場合に、保護具を使用せしめること。
(昭23・5・11基発第737号、昭33・2・13基発第90号)
(安全衛生推進者等の選任)
労働安全衛生法第12条の2、
労働安全衛生規則第12条の3
製造業において、常時10人以上50人未満の労働者を使用する事業場は、安全衛生推進者を選任し、その者に労働安全衛生法第10 条第1項各号の業務を担当させなければならない。
労働安全衛生法第10条第1項各号とは、
一 労働者の危険又は健康障害を防止するための措置に関すること。
二 労働者の安全又は衛生のための教育の実施に関すること。
三~五 略
さらに、安全衛生推進者の具体的な職務は、
① 施設、設備等の点検及び使用状況の確認並びにこれらの結果に基づく必要な措置に関するすること。
② 作業環境の点検及び作業方法の点検並びにこれらの結果に基づく必要な措置に関すること。
③ 健康診断及び健康の保持増進のための措置に関すること。
④ 安全衛生教育に関すること。
⑤~⑧ 略
(昭63・9・16 基発第602号)
〈 災防規程 〉
第262条(3)(作業帽等の着用)
第263条(整理整頓)