災害事例研究 No.8 【木材製造業】
のこ屑集じん装置のダクトを点検中、スレート葺き屋根を踏み抜いて転落
被災者は、工場内に設置している自動送材車式帯のこ盤ののこ屑集じん用ダクトの吸い込みが悪くなったので、スレート葺き屋根に上り、のこ屑が詰まっていると思われるダクトのフランジ部分を点検・掃除していたところ、厚さ約5mmのスレートを踏み抜き、7m下のコンクリート床に転落し、脳挫傷により死亡した。
災害発生の状況
- 被災者は当日、同僚と2人で自動送材車式帯のこ盤を運転し、住宅建築用の製材を行っていた。この自動送材車式帯のこ盤を稼働させる際は、のこ屑が大量に発生するので、集じん装置を作動させ、ダクトに吸い込んで工場屋根上から別棟ののこ屑サイロまで搬送していた。
- 自動送材車式帯のこ盤の集じん装置の吸い込みが悪くなったので、被災者は当該機械の運転を停止し、集じん装置の電源スイッチを切って、工場内のダクトの詰まりやすい部分を点検したが、のこ屑が詰まるなどの異常は認められなかった。
- このため被災者は、「工場の屋根上に設置されているダクトののこ屑が詰まりやすいカーブ状になっているフランジ部分を点検する必要がある」と同僚に告げ、事務所のトタン葺き屋根を伝って、厚さ5mmの波形スレートで葺かれている工場屋根(中央部の高さ9mで軒先の高さ6mまでの傾斜がある)に上った。
ときどきダクトが詰まって点検・掃除する必要があったことから、被災者が上った工場の屋根上には、ダクトに沿って「歩み板」が敷かれてあり、被災者はこの「歩み板」の上から工具を用いてフランジ部分の点検・掃除を行った。 - 被災者は点検・掃除を終了後、工場と隣接している事務所のトタン葺き屋根上から被災者の作業状況を見守っていた同僚に、「集じん装置の電源スイッチを入れてみてくれ」と指示した。
- 同僚は地上に下り、工場内の集じん装置の電源スイッチを入れ、どんな具合なのかと被災者に確認しようと工場を出ようとしたところ、突然、「バリッ」と大きな音がして、被災者がスレート板を踏み抜き、約7m下のコンクリート床面に落下し、病院に運ばれたが、脳挫傷により、約10 時間後に死亡した。
災害発生の原因
被災者がダクトの点検、掃除を行っていた工場の屋根の骨組みは、鉄骨梁にスレート板が葺かれていたが、鉄骨の縦梁は60cm、横梁は3m80cm間隔で敷かれているにすぎず、スレート板を踏み抜くおそれがあったにもかかわらず、敷かれていた「歩み板」の幅は約15cmで、法定基準(30cm以上)の「歩み板」が設けられておらず、「防網を張る」等の踏み抜きによる危険を防止する措置が講じられていなかったこと。
災害防止対策
- スレート板で葺かれた屋根上での作業は、踏み抜きにより労働者に危険を及ぼすおそれがあることから、「幅が30cm以上の歩み板を設け(安全な通路の確保)、防網を屋根の下に張る、労働者に安全帯を着用させる」(労働安全衛生規則第524 条)等の措置を講じること。
- スレート葺き屋根上での作業は、常にスレートの踏み抜きによる墜落・転落のおそれがあるので、スレート葺き屋根上でのダクトの点検作業マニュアルを作成し、当該マニュアルについての安全教育を実施したうえで作業に就かせること。