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災害事例研究 No.108 【林業】

ブル・ドーザーにより2本のかかり木を処理しようと作業していたところ、かかり木がはずれ被災者に激突

 2本のかかり木を同時に処理しようとして、1本目のかかり木の根元にスリングロープを取り付け、2本目のかかり木に向かって歩き出したところ、1本目のかかり木が倒れ、被災者に激突した。

災害の発生状況

 被災者は、トドマツとアカマツの人工林の間伐作業を実施していた。
 災害当日、伐倒作業者とブル・ドーザー運転手各1名がセットとなり、2班で尾根の北側と南側の斜面に分かれ、被災者は南面を担当していた。
 昼の休憩後、被災者は、8本をブル・ドーザーに集材させ、さらに5本の木を伐倒したところ、かかり木が2本発生した。
 かかり木は、斜面中程にかかり木A、それから約30m離れた斜面下方にかかり木Bが位置していた。
 ブル・ドーザー、かかり木A及びかかり木Bは、ほぼ一直線上の位置にあったことから、被災者は2本の立木を同時に処理しようと、ブル・ドーザーのウインチロープを引いてかかり木A(トドマツ、樹高20m、胸高直径25cm)に行き、かかり木の元口から約30cmの位置にスリングロープを取り付け、ウインチロープをスリングロープの輪に通し、そのままウインチロープを引きながらかかり木Bに向かって約17m歩いたところで、かかり木Aが倒れ、被災者の頭部から背部に激突した。
 被災者が着用していた保護帽はひび割れ、防寒着の背部には右肩口から腰部にかけて斜めに幅8センチメートルの激突した跡が認められた。

災害発生の原因

  1. かかり木が発生した都度処理をせず、まとめて処理をしようとしたこと。
  2. かかり木が発生しているにもかかわらず、常に注意を払うことを怠ったこと。
  3. かかり木のかかり具合の観察が不足し、かかり木が倒れるおそれのある所を歩いていたこと。

災害防止対策

  1. かかり木が発生した場合は、放置せず速やかに処理をすること。
  2. かかり木は、1本ずつ、安全に処理すること。
  3. かかり木は、細心の注意を払い、慎重に処理すること。
  4. かかり木は、かかり具合をよく観察して、安全な場所、安全な作業方法により処理すること。
  5. 安全な場所が見当たらない場合は、観察者(誘導者)を配置するなど、安全に作業できる方法を検討すること。
    casestudy108

<参考>

林業・木材製造業労働災害防止規程参照条文

(かかり木の処理)

第54条 かかり木が生じた場合には、作業者に当該かかり木を速やかに処理させるとともに、次の各号に掲げる措置を講じなければならない。
(1) 略
 ア 当該かかり木の径級、状況、作業場所及び周囲の地形等の状況を確認すること。
 イ 当該かかり木が生じた後速やかに、当該かかり木により危険を生ずるおそれのある場所から安全に退避できる退避場所を選定すること。
 ウ 当該かかり木の処理の作業の開始前又は開始後において、当該かかり木がはずれ始め、作業者に危険が生ずるおそれがある場合、イで選定した退避場所に作業者を退避させること。
 エ かかり木が生じた後、やむを得ず当該かかり木を一時的に放置する場合を除き、当該かかり木の処理の作業を終えるまでの間、当該かかり木の状況について常に注意を払うこと。