メニュー

災害事例研究 No.114 【林業】

伐倒作業中にチェーンソーのガイドバーが挟まり、くさびを取りに行って戻ってきた時に突風が吹き、立木が倒れ激突

 皆伐作業において、作業者Aはヒノキ(胸高直径約26cm、樹高約21m)を伐倒するため、チェーンソーで追い口切りをしていた時に、チェーンソーのガイドバー(以下「ガイドバー」という。)が挟まれてしまったので、携帯していたくさびを1本打ち込んだが、ガイドバーを外せなかった。
 そのためくさびを取りに車に戻った際、たまたま現場写真を撮りに被災者がきており、Aは被災者と一緒にガイドバーの挟まっている立木の作業現場へ戻り、立木に近づいた時に突風が吹いて、ガイドバーが挟まっていた立木が二人の方向に倒れかかり、被災者に激突した。

災害の発生状況

 災害発生当日Aは作業道開設予定地の支障木を伐採するため、傾斜40°以上の斜面のヒノキの伐倒を始めた。
 立木の受け口を切った後、追い口を切っていたところ、ガイドバーが挟まり動かせなくなった。
 携行していたくさび1本を打ち込んでガイドバーを外そうとしたが、外せなかったので作業を中断した。
 Aは300m程離れた車までくさびを取りに戻った。
 車まで戻った際、その現場の写真を撮りにきていた被災者と合流し、一緒に中断していた伐倒現場に向かった。
 伐倒現場に近づいた時、突然突風が吹いて、ガイドバーが挟まっている立木が倒れて きた。
 Aは咄嗟にかわすことができたが、2m程後方を歩いていた被災者は避けきれずに倒れてきた立木に激突した。
 その後、救出作業が始まり、ドクターヘリにより病院へ搬送されたが、その後、死亡が確認された。

災害発生の原因

  1. 伐倒時に1本しかくさびを携行していなかったことから、挟まれたガイドバーを外すことができずに、伐倒作業を途中で中断してしまったこと。
  2. 伐倒作業で禁止している伐倒木の樹高の2倍以上の範囲内に作業者以外の者が立ち入ったこと。
  3. Aは①追い口の位置が受け口の高さの3分の2より低かったこと。②追い口を切り進める際、ガイドバーが下側に下がり、受け口と同じ高さになってしまったこと。③つるの幅がわずかしか残っていなかったことから、ガイドバーが挟まれたこと。

災害防止対策

  1. くさびは、同一形状かつ同じ大きさのものを組にして、複数本以上携行すること。
  2. 伐倒作業者以外の者は、伐倒木の樹高の2倍の作業範囲内への立ち入りを禁止すること。
  3. ①追い口の位置は、受け口の高さの下から3分の2程度の高さとし、②水平に切り込むこと。③つるの幅は、伐根直径の10分の1程度残すようにすること。
    casestudy114

自己流儀の作業の点検・改善

 今回の災害の教訓は、伐倒作業を中断したことが災害の原因である。
 伐倒作業を中断することがないように、普段からくさびは同一形状かつ同じ大きさのくさびを複数本以上携行すること。
 また、伐倒作業中に燃料切れのないように、燃料の残量をチェックすること。
 伐木作業の基本である追い口切りは、①受け口の高さの3分の2の高さを、②水平に切り、③つるの幅は伐根直径の10分の1程度残すことを徹底することが必要である。

林業・木材製造業労働災害防止規程〈抜粋〉

(くさびの使用)
第62条 会員は、チェーンソーによる伐木の作業を行う場合において、伐倒しようとする立木の重心が偏しているもの、あるいは、胸高直径が20センチメートル以上のものを伐倒しようとするときは、作業者に、同一形状かつ同じ厚さのものを組みにして、くさびを2本以上用いること等立木が確実に伐倒方向に倒れるような措置を講じさせなければならない。

(近接作業の禁止)
第50条 会員は、立木を伐倒する場合は、近傍の他の作業者を立木の樹高の2倍以上離れさせなければならない。

(受け口及び追い口)
第61条 会員は、チェーンソーによる伐木の作業を行う場合には、作業者に、それぞれの立木について、次の各号に掲げる事項を行わせなければならない。
(3) 追い口の位置は、受け口の高さの下から3分の2程度の高さとし、水平に切り込むこと。
(4) 追い口切りの切り込みの深さは、つるの幅が伐根直径の10分の1程度残るようにし、切り込み過ぎないこと。