災害事例研究 No.118 【林業】
ヒノキを伐倒中、追い口を切りすぎ、つるを残さなかったため、伐倒方向が90度変わり同僚に激突
40%の切り捨て間伐作業中、ヒノキを伐採したところ、つるを残していなかったため90度伐倒方向が変わり同僚に激突した。
災害の発生状況
午前8時に現地に集合し、班長指揮の下、KY活動と打合せをした後、被災者は同僚2名と間伐現場に入り、切り捨て間伐作業を開始した。同僚とは等高線の並びで7メートル程度離れて谷側へ伐倒をしながら下りていった。午前10時45分頃、ヒノキ(胸高直径15センチメートル、樹高13.6メートル)の伐倒を始め、まず受け口を作り、追い口を入れたところ切りすぎてつるを切ってしまったため90度伐倒方向が変わり、7メートル離れた同僚の頭部に激突した。救急車、ドクターヘリにて病院に搬送されたが、頸椎損傷、頭部打撲にて亡くなった。
伐倒したヒノキは胸高直径15センチメートルと細かったが、枯れていなければ、かかり木になるような周囲の状況であった。しかし枯れていたため枝葉がほとんど無く、また、つるを切ってしまったため被災者に向かって勢いよく倒れた。なお、被災者は事故時、自身が伐倒した木が、かかり木となり、かかり木処理をしていたところであった。
災害の発生原因
- 樹高の2.5倍以上離れて作業をしていなかったこと。
- 受け口は作られていたが追い口を切りすぎ、つるが残されていなかったこと。
- 伐倒時の合図がされていなかったこと。
再発防止対策
- 同時に伐倒作業をする場合は高い方の樹高の2.5倍以上離れて作業すること。
- つるを直径の10分の1残して伐倒すること。
- 伐木の作業を行うときは、伐倒については一定の合図を行うこと。
林業・木材製造業労働災害防止規程〈抜粋〉
(近接作業の禁止)
第50条
1 略
2 会員は、近接して伐倒作業を行う場合は、高い方の樹高の2.5倍以上離れて作業させなければならない。
(受け口及び追い口)
第61条 会員は、チェーンソーによる伐木の作業を行う場合には、作業者にそれぞれの立木について、次の各号に掲げる事項を行わせなければならない。
(1)~(3) 略
(4) 追い口切りの切り込みの深さは、つるの幅が伐根直径の10分の1程度残るようにし、切り込み過ぎないこと。
(伐倒合図)
第63条 会員は、チェーンソーによる伐木の作業を行う場合には、伐倒について予備合図、本合図、終了合図を定め、かつ、作業者に、これらの合図を周知させなければならない