災害事例研究 No.121 【林業】
沢をまたいで倒した伐倒木の上を歩いて、足を滑らせて墜落し頭部を強打
被災者は林道近くの伐倒木を集材中、集材ロープを持って沢をまたいで倒した伐倒木の上を梢端部側から元口方向へ渡ろうとし、元口から9m付近の沢の真上でバランスを崩し、足を滑らせて約3mの高さから沢へ墜落した。
災害の発生状況
災害発生当時は、班長以下4名の作業者が列状間伐作業の現場に午前8時には集合して作業を開始した。
班長他1名は、災害発生した場所から離れたところに移り、プロセッサーの移動や作業道の開設の準備に取り掛かった。
被災者Aと同僚Bは、傾斜40度の斜面で列状に伐倒した伐倒木をグラップルに付属したウインチを使って、谷を挟んで向かい側に作設した集材道まで集材する作業を始めた。
最初は、被災者Aがウインチ操作、Bは傾斜地にある伐倒木の荷掛け作業に分かれて作業をしていた。
集材作業は順調に進んで、10時の休憩を経て、被災者の意向でウインチの操作をBに、荷掛け作業を被災者Aに交代した。
被災者Aは伐倒木(スギ樹高16.4m、胸高直径20 cm)の梢端部に荷掛けをした後、Bへ合図を行い、Bは伐倒木をウインチのところまで引き寄せた。
Bは荷掛けしたロープを外したところ、被災者Aが伐倒木の上を根元側から渡って来て、突然ロープを持って、梢端部から元口側へ向かって渡りはじめた。
元口側から約9mの沢の真上付近で、バランスを崩して足を滑らせ、伐倒木をまたぐように股間を打った後、体が反転し、頭を下にした逆さまの状態で、高さ3mの位置から沢(水は枯れていた)まで墜落して頭部を強打した。
すぐにBは駆け寄ったが、被災者の意識はあるものの、指先や足はしびれて動かせない状態であった。
消防署まで救急手配をした、防災ヘリにより病院へ搬送された。
災害の発生原因
- 墜落防止措置を講じることなく、高さ3mの不安定な集材木(胸高直径20cm)の上を渡ったこと。
- 被災者は最初に元口側から渡っているが、伐倒木はそばの立木に寄り掛かっていたこともあって安定していたと思われるが、反対の梢端側から渡る場合には幹が細く不安定になっていることを予想せずに無謀な行動をしたこと。
- 災害発生前までは、ウインチ操作者が荷外しをして、ロープを傾斜地側にいる作業者へ投げる方法により実施していたが、被災者がこれを無視して行動したこと。
- 作業開始時に、現場での打ち合わせでは、安全を確保して歩行するように指示をしていたが、具体的な方法や禁止事項までは指示していなかった。また、KY、RA活動が定着されていなかったこと。
災害の防止対策
- 安全が確保される歩行動作について作業開始時に確認し、これを厳守するように指導すること。
- 沢をまたぐように伐倒した木の高さが2mを超える木の上を歩行する場合、墜落により作業者に危険が生じないよう墜落防止措置を講じること。
また、墜落防止措置を講じることが困難な場合には、伐倒した木の上を歩行しないことを徹底すること。 - 作業者独自に作業方法を決定させることはせずに、予想される作業に対して安全な作業手順を事前に示すこと。
- 普段からKYやRA活動を行い、危険を危険と判断できるように教育し、危険な行動をしないようにルール化すること。
不安全行動の防止
被災者は自らロープを取りに行けば作業が早く進むと考えての行動と思われるが、極めて危険な行動であり、予想外の行動であった。
後日、この現場で墜落防止措置を講じた上で検証しているが、梢端側から渡ることは不安定すぎて渡ることは不可能であった。
しかし、このような不安全行動による災害が多く見られ、中には全く予想できないような行動もみられる。
普段からの危険を危険と認識ができるように安全教育が重要である。