災害事例研究 No.128 【林業】
風倒木の根元をチェーンソーで切断したところ根元が反発し激突
かかり木状になっていた風倒木の根元をチェーンソーで切断したところ、根元が反発し、被災者に激突した後、その下敷きとなった。
災害の発生状況
災害発生当日の人員等
- 使用機械: ブル・ドーザー2台 ドラグ・ショベル3台
- 人員配置:土場4名 重機オペレーター5名(責任者を含む) 伐木作業者:1名(被災者)
- 作業内容は、
- ドラグ・ショベルは、風倒によるかかり木等を完全に倒す作業に従事。
- ブル・ドーザーは、風倒木を集材、運搬する作業に従事。
- 伐木作業者は、風倒被害が少ない箇所で倒した木の根元をチェーンソーで切断する作業に従事。
- 土場の4名は、風倒木を玉切し、集積する作業に従事。
災害発生当日
- 午前7時30分頃、作業を開始。被災者は、重機等により既に横倒しされた被害木の根元を切断する等の作業を行った。
- 午前9時頃、被災者が作業していた箇所責任者が来て、ドラグ・ショベルを用いて、根むくれしていた被害木を倒す等の作業を行うので、重機との接触防止のため、被災者に対し作業場所を変え、皆伐区域の立木を伐採するよう指示した。
- 午前11時30分頃、休憩時刻になっても土場に被災者が戻ってこなかったため、責任者らが被災者の作業箇所付近を探したところ、伐倒木の下敷きとなっていた被災者を発見した。
風倒により根むくれとなって倒れたトドマツ(胸高直径28cm、樹高約21m)は、欠頂木(立木)にかかり木の状態となっていた。被災者は、この根むくれしたかかり木状の木の根元を切断したときに反発し、反発した木に激突された後、その下敷きとなったものと推測される。当該木の幹は、弓なりに変形していた。- 欠頂木には、かかり木の状態となった風倒木が当該木を含めて3本かかっており、被災者はこれら3本の根元を順次切断していたものと思われる。
- 欠頂木には、かかり木の状態となった風倒木が当該木を含めて3本かかっており、被災者はこれら3本の根元を順次切断していたものと思われる。
災害発生の原因
- 根むくれで応力が掛かり弓なりとなっている風倒木を応力を弱めたり、反動を抑えることなく根元部をチェーンソーで切断したこと。
- 根むくれで応力がかかっている風倒木の処理に当たって、車両系木材伐出機械のウインチ及びガイドブロック等を用いた安全な作業方法を選択しなかったこと。
- かかり木の状態になった複数の風倒木を、順次かかり木の状態を解消しなかったこと。
災害の防止対策
- かかり木、風倒木等の危険木については、できるだけ車両系木材伐出機械のウインチ等を使用して処理すること。
- 根むくれで応力がかかっている木の切断は、作業指揮者の指示の下、変形部分の力を開放したり、反動を弱めたりして切断すること。
- 一本の木に複数の木がかかり木の状態となったときは、上から順次にかかり木を外すこと。
- 作業はできるだけ2人以上の組となるよう調整すること。
- かかり木、風倒木等の危険性について、現地の事前調査を踏まえた作業計画作成の段階で、リスクアセスメントを実施し、関係労働者に周知・徹底すること。
林業・木材製造業労働災害防止規程〈抜粋〉
(指示を要する伐木)
第53条 会員は、次の各号に掲げる業務に就かせる場合には、安衛則第36条第8号に係る特別教育修了者のうちから技能を選考のうえ、会員が指名した者に、伐倒による危害を防止するための必要な事項を指示させなければならない。
(1)~(5) 略
(6) かかり木の処理の業務
(かかり木の処理)
第54条 会員は、かかり木が生じた場合には、作業者に当該かかり木を速やかに処理させるとともに、次の各号に掲げる措置を講じなければならない。
(1)当該かかり木の処理の作業について安全な作業をさせるため次のアからオまでの事項を行わせること。
ア 当該かかり木の径級、状況、作業場所及び周囲の地形等の状況を確認すること。
イ~オ 略
(2)作業は、できるだけ2人以上の組となるように調整すること。
(3)機械器具等は、次のアからウまでに掲げる場合に応じて使用し、安全な作業方法により処理すること。
ア 略
イ 当該かかり木の胸高直径が20センチメートル以上である場合又はかかり木が容易に外れないことが予想される場合は、けん引具等を使用し、当該かかり木を外すこと。
ウ 車両系木材伐出機械(伐木等機械、走行集材機械及び架線集材機械(機械集材装置又は簡易架線集材装置の集材機として用いている場合を除く。)をいう。以下同じ。)、機械集材装置、簡易架線集材装置等を使用できる場合には、原則として、これらを使用して、当該かかり木を外すこと。
2 略(合図等)