災害事例研究 No.134 【林業】
立木の伐倒作業中に落下した枝が頭部に激突
枝絡みの立木を伐倒する際に、退避場所の選定が適切でなく、折れた伐倒木の枝が頭部に激突した。
災害の発生状況
民間森林の間伐搬出現場において、被災者と同僚Aの2名で造材作業を行った後、同僚Aはフォワーダで集材作業を行い、被災者はチェーンソーを使用してスギの伐木作業を開始した。
被災者は、胸高直径80~100cm、樹高約40mのスギをチェーンソーにより伐倒した際、隣接木と枝絡みになっていた伐倒木の枝が折れて約18m落下した。被災者は、伐倒方向の反対側2.7mに退避していたが、落下してきた枝が、保護帽に激突し、保護帽が3cm割れ、頭蓋骨骨折等により死亡した。
なお、被災者が着用していた保護帽は、型式検定合格の物体の飛来・落下用・墜落時保護用保護帽であった。
被災者の頭部に激突した枝は、直径8cm、長さ4.3m、重量10kgであった。
災害発生の原因
- 伐倒前に枝絡み等の上方確認をしなかったこと。
- 枝絡みの枝が落下した場所を退避場所と選定したこと。
災害の防止対策
- 伐倒する立木について、重心、つる絡みや枝絡みの状態、頭上に落下しそうな枯れ枝の有無等を確認して伐倒方向及び退避場所を選定すること。
- 枝絡みの木の伐倒は、枝絡みの状態に応じた伐倒方向とすること。
枝絡みの木は伐倒時にかかり木になったり、回り木となって伐倒方向がずれたり、材が裂けたりして危険である。
木登りをして、かかられている枝を取り除くことができない場合は、次の方法で作業するようにすること。
① 枝絡みの木が斜面の上下に位置している場合は、下の木から伐倒すること。
枝絡みの木が斜面の左右に位置している場合は、細い木の方から、枝絡みの反対方向へ伐倒すること。
② 受け口は深め、追い口は高め、くさびを打つときは慎重に、予定した方向へ確実に倒すよう手段を尽くすこと。
追い口切りのとき、つるの幅は作業者側を小さくし、反対側を大きくすると作業者側に倒れず安全性が増すこと。 - 枝絡みの木では、思いがけず、枝枯れや折れた枝が飛来、落下することがあるので、退避場所にいるときも、また、退避場所から出るときも、落下物、飛来物に特に注意すること。
【労働安全衛生規則】
(伐木作業における危険の防止)
第477条 事業者は、伐木の作業(伐木等機械による作業を除く。以下同じ。)を行うときは、立木を伐倒しようとする労働者に、それぞれの立木について、次の事項を行わせなければならない。
一 伐倒の際に退避する場所を、あらかじめ、選定すること。
二 かん木、枝条、つる、浮石等で、伐倒の際その他作業中に危険を生ずるおそれのあるものを取り除くこと。
三 伐倒しようとする立木の胸高直径が20センチメートル以上であるときは、伐根直径の4分の1以上の深さの受け口を作り、かつ、適当な深さの追い口を作ること。この場合において、技術的に困難である場合を除き、受け口と追い口の間には、適当な幅の切り残しを確保すること。
2 立木を伐倒しようとする労働者は、前項各号に掲げる事項を行わなければならい。
【参考(頭部への衝撃)】
例えば50cmの高さから鉄板の上に転倒したときの衝撃荷重は、保護帽なしでは17kN。この衝撃は脳しんとうを超えて頭蓋骨骨折を引き起こすほどの値。飛来・落下用保護帽を着用していた場合の衝撃荷重は約2/3に減少するが脳に障害を与える可能性がある。衝撃吸収ライナーの入った墜落時保護用保護帽の場合は5kNを下回る。