災害事例研究 No.135 【林業】
かかられた木を伐倒しようとしたところ、かかっている木がはずれて被災者に激突
間伐現場において、かかり木が発生し、被災者はかかられた木を伐倒しようとしたところ、かかっていた木がはずれて被災者に激突して下敷きとなり、死亡した。
災害の発生状況
被災者は、同僚3人と計4名で、間伐作業を行っていた。チェーンソーによる伐倒作業は、被災者のみが行っていた。他の3人は、一人がブルドーザーによる集材、2人が玉切り作業を行っていた。被災者の操作するチェーンソーのエンジン音が聞こえなくなったため、同僚が様子を見に行ったところ、伐倒されたカラマツの下敷きになっている被災者が発見された。以下、推測である。
- 災害発生当日午後、被災者はカラマツ(胸高直径24センチメートル、樹高23.6メートル)を斜面下方向に伐倒するため、チェーンソーにより斜面下方の根元部に受け口を作り、斜面上方の根元部に追い口を切って伐倒した。
- 伐倒方向の約14メートル先、斜面にほぼ平行に並立(間隔2.3メートル)しているカラマツ2本の間に倒れたものの、そのうちの1本のカラマツ(胸高直径28センチメートル)にかかり木状態となった。
かかり木をはずそうとして、被災者は、かかり木となっているカラマツのほぼ真下に入り、かかられているカラマツを伐倒する作業にとりかかった。 - かかられているカラマツの斜面下方の根元部に受け口を切り、斜面上方の根元部にチェーンソーで追い口を切る作業中、かかり木となっていたカラマツが、突然被災者の左肩部に落下し激突した。
災害発生の原因
- かかり木の処理において、禁止されているかかられている木の伐倒を行ったこと。
- かかり木処理に車両系木材伐出機械等を使用しなかったこと。
- かかり木処理等、チェーンソーによる伐木作業に係る安全教育が不十分であったこと。
災害の防止対策
- かかり木の処理において、かかられている木を伐倒させないこと。
- かかり木の処理は、できるだけ車両系木材伐出機械等を使用すること。しかし、車両系木材伐出機械等を使用できずに、胸高直径20センチメートル以上のかかり木をはずすときは、できるだけ2人以上の組で、けん引具等を使用して、かかり木をはずすようにすること。
- 労働安全衛生規則第478条の「かかり木の処理の作業における危険の防止」及び「チェーンソーによる伐木等作業の安全に関するガイドライン」の周知を図り、かかり木処理作業に関わる安全対策を徹底すること。
〈労働安全衛生規則〉
(かかり木の処理の作業における危険の防止)
第478条 事業者は、伐木の作業を行う場合において、既にかかり木が生じている場合又はかかり木が生じた場合は、速やかに当該かかり木を処理しなければならない。ただし、速やかに処理することが困難なときは、速やかに当該かかり木が激突することにより労働者に危険が生ずる箇所において、当該処理の作業に従事する労働者以外の労働者が立ち入ることを禁止し、かつ、その旨を縄張、標識の設置等の措置によって明示した後、遅滞なく、処理することをもって足りる。
2 事業者は、前項の規定に基づき労働者にかかり木の処理を行わせる場合は、かかり木が激突することによる危険を防止するため、かかり木にかかられている立木を伐倒させ、又はかかり木に激突させるためにかかり木以外の立木を伐倒させてはならない。
3 第一項の処理の作業に従事する労働者は、かかり木が激突することによる危険を防止するため、かかり木にかかられている立木を伐倒し、又はかかり木に激突させるためにかかり木以外の立木を伐倒してはならない。
〈チェーンソーによる伐木等作業の安全に関するガイドライン〉
別添2
かかり木の処理の作業における安全の確保に関する事項
2-(2)
ウ 適切な機械器具等の使用
車両系木材伐出機械、機械集材装置及び簡易架線集材装置(以下「車両系木材伐出機械等」という。)の使用の可否の別、かかっている木の径級、かかり木の状況により、次により機械器具等を使用すること。
(ア) 車両系木材伐出機械等を使用できる場合
車両系木材伐出機械等を使用できる場合においては、車両系木材伐出機械等を使用して、かかり木をはずすようにすること。
① かかっている木の胸高直径が20センチメートル以上である場合又はかかり木が容易に外れないことが予想される場合けん引具等を使用して、かかり木をはずすようにすること。
また、けん引具等を使用する場合には、ガイドブロック等を用い、安全な方向に引き倒すようにするとともに、かかっている木の樹幹にワイヤロープを数回巻き付け、けん引具等によりけん引したときに、かかっている木が回転するようにすること。
エ かかり木の処理の作業における禁止事項の遵守
かかり木の処理の作業においては、次に掲げる事項を行ってはならないこと。
なお、下記(ア)及び(イ)については、安衛則第478条第2項により禁止されるものであること。なお、同条に定める措置を履行しないことは、労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)第119条第1号(第21条第1項に係る部分に限る。)の規定に違反するものであること。
(ア) かかられている木の伐倒
かかられている木を伐倒することにより、かかり木全体を倒すこと。なお、かかられている立木を伐倒する場合、かかり木の処理の作業を行う労働者には、かかられている木又はかかっている木に激突される等の危険があること。
〈災防規程〉
(かかり木の処理)
第54条
(2)作業は、できるだけ2人以上の組となるように調整すること。