災害事例研究 No.13 【林業】
造材作業中、跳ね上がった造材木を避けようとして転倒した被災者の足に造材木が落下
利用間伐における玉切り作業中、予期せぬ造材木の動きに影響されて身体のバランスを崩し、滑らせた足の上に造材対象木が落下した。
災害発生の状況
林地の平均傾斜約15 度、林齢65年のヒノキ人工林の間伐作業で、伐採対象木(胸高直径32 cm、樹高26m)をかかり木とならないよう、ほぼ水平方向約5mの位置に隣接する片枝状態の保残木の山側に伐倒した。
伐倒後、葉枯らし期間2週間をおいて造材作業に入った。このとき、当該造材対象木は、元口から4 . 5mのところで保残木の根張りに山側から接触し、梢端部側は倒伏しているものの、樹幹は玉切の位置で林地から若干浮いている状態であった。
枝払いに引き続いて元口から7 . 8mの位置でつなぎ材のまま玉切りを開始した。まず、チェーンソーガイドバーの下側で切り下げ、続いて上側で切り上げた。作業の進行に伴って、一度は沈んだ鋸断面、すなわち元玉丸太の末口部が、玉切り作業を終えた瞬間、保残木の根張りに乗った部位を支点として跳ね上がり、切り離された「つなぎ丸太」は斜面を転がり落ちた。
予期せぬ動きをした「つなぎ丸太」末口の直撃を避けようとした被災者は、身体のバランスを崩し、尻餅をつきながら足を滑らせ、落下しつつ枝葉部の反発で伸びてきた鋸断部元口の先端部分が左足第一指根部を直撃し、骨折したものである。
災害発生の原因
- 保残木に山側から当っている造材作業対象木に加わっている力(外力、内部応力)の状態把握が不十分であった。
- 一番玉(4m材)の採寸表示位置が、保残木に接していたことから、保残木の損傷を回避しようと二番玉(3m材)の末口部で鋸断したものであるが、不安定な状態であった造材木に杭止め処理等をせず、作業を行ったこと。
- 足元の障害物(緩やかな窪地に落葉等が堆積していた)の除去が不十分であった。
災害防止対策
- 造材作業に入る前に、作業の支障となるかん木などの障害物は取り除いておくこと。
- 玉切りは、無理な作業姿勢、無理な作業方法で行わないこと。
- 玉切りは、材の安定を確認の上、足場を確保してから作業に着手することが鉄則である。つなぎ材での処理を選択した今回の場合、材に加わっている力の状態を正確に判断する必要があり、支柱等による処理時の安定措置が不可欠であったこと。