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災害事例研究 No.163 【林業】

浴びせ倒しによるかかり木処理を行い、伐倒木が激突

かかり木を外すため、隣接のコナラの立木を浴びせ倒ししたところ、コナラの伐倒木がかかり木に当たった反動で跳ね返り、被災者に激突。

災害の発生状況

 広葉樹の皆伐作業において、被災者は、同僚2名とチェーンソーを用いて、コナラ等の伐木造材作業(皆伐)を行っていた。
 各作業者は、50m以上離れて作業を進めていたところ、同僚の一人が被災者のチェーンソーの音がしないことから不審に思い、被災者を探したところ、うつ伏せで倒れている被災者を発見し、救急車を要請した。その後、現場に駆けつけた救急隊員によって搬送されたが死亡が確認された。
 被災者は、かかり木となったことから、かかり木を外すため、当該かかり木の斜面上部のコナラ(直径28cm、樹高約15m)をかかり木に向け浴びせ倒しをしたところ、伐倒木が当該かかり木に当たった反動で跳ね返り、被災者の後頭部に激突したものと考えられる。
 当日は作業初日で、現場は傾斜約40度の急斜面、前日の雨により林地はぬかるんでいる状態であった。

災害の発生原因

  1. かかり木を外すために、浴びせ倒しを行ったこと。
  2. 作業計画を作成していなかったこと。

災害の防止対策

  1. かかり木処理の作業を行う場合には、次に示した方法により安全に処理すること。
    (1) 車両系木材伐出機械等を使用できる場合には、これらを使用してウインチ及びガイドブロックを用いて運転者以外の方向に引き倒すこと。
    (2) 車両系木材伐出機械等を使用できない場合には、けん引具等を使用することとし、ガイドブロック等を用い、当該かかり木を安全な方向に引き倒すようにすること。その際は、かかっている木の樹幹にワイヤロープを数回巻き付け、けん引具等によりけん引したときに、かかっている木が回転しかかり木が外れるようにすること。
  2. 伐木作業は、事前調査を行い、その結果に基づく作業計画を作成するとともに、作業指揮者を選任し作業計画に基づく作業の指揮を行わせること。

〈 労働安全衛生規則 〉
(かかり木の処理の作業における危険の防止)
第478条 事業者は、伐木の作業を行う場合において、既にかかり木が生じている場合又はかかり木が生じた場合は、速やかに当該かかり木を処理しなければならない。(以下略)
2 事業者は、前項の規定に基づき労働者にかかり木の処理を行わせる場合は、かかり木が激突することによる危険を防止するため、かかり木にかかられている立木を伐倒させ、又はかかり木に激突させるためにかかり木以外の立木を伐倒させてはならない。
3 第1項の処理の作業に従事する労働者は、かかり木が激突することによる危険を防止するため、かかり木にかかられている立木を伐倒し、又はかかり木に激突させるためにかかり木以外の立木を伐倒してはならない。

〈チェーンソーによる伐木等作業の安全に関するガイドラインの別添2〉(令和2年1月31日付け基発0131第1号)
2−(2)
ウ 適切な機械器具等の使用
(略)
(ア)車両系木材伐出機械等を使用できる場合
車両系木材伐出機械等を使用できる場合においては、車両系木材伐出機械等を使用して、かかり木をはずすようにすること。
また、車両系木材伐出機械等を使用する場合には、ガイドブロックを用い、安全な方向に引き倒すようにするとともに、急なウインチの操作、走行、ワイヤロープの巻取り等を行わないようにすること。
(イ)上記(ア)以外の場合
① かかっている木の胸高直径が20センチメートル以上である場合又はかかり木が容易に外れないことが予想される場合
けん引具等を使用して、かかり木をはずすようにすること。
また、けん引具等を使用する場合には、ガイドブロック等を用い、全な方向に引き倒すようにするとともに、かかっている木の樹幹にワイヤロープを数回巻き付け、けん引具等によりけん引したときに、かかっている木が回転するようにすること。
② (略)
エ かかり木の処理の作業における禁止事項の遵守
(略)
(ア)かかられている木の伐倒
(イ)かかり木に激突させるためにかかり木以外の立木の伐倒(浴びせ倒し)
(ウ)かかっている木の元玉切り
(エ)かかっている木の肩担ぎ
(オ)かかり木の枝切り