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災害事例研究 No.138 【林業】

弓状になって応力のかかった伐倒木を玉切り作業中、跳ねて被災者の膝に激突した

 立木を伐倒したところ、伐倒木が立木の間を縫うような形で倒れたため、応力がかかった状態となった。伐倒木の玉切りを行ったところ、伐倒木が跳ねて被災者の膝に激突した。

災害の発生状況

 当日は作業指揮者を含め4名で間伐作業を行っていた。作業開始前には体調管理、安全装備の確認、作業の流れ、段取り、KYを実施した。搬出路を開設するため作業指揮者がバックホウに乗車、経験の浅い被災者と同僚は搬出路作設に支障となる立木の伐採を行っていた。
 伐倒作業中は作業指揮者が被災者の後方でバックホウに乗車していたが、必要な時には下車して作業の指揮を行っていた。
 被災者は、立木(ヒノキ、樹高23m、胸高直径30cm)を伐倒したところ、他の立木の間を縫うような形で倒れたため、作業指揮者は、伐倒木に応力がかかった状態となった危険木と認識し、応力のかかった伐倒木の造材作業がいかに危険であるか、どのように安全に処理すべきかについて説明した。
 その後、被災者が下準備に取りかかり、元口側から玉切りを開始したところ、打合せとは違った作業位置で切ってしまったため、伐倒木が跳ねて被災者の左膝に直撃し靭帯を損傷した。
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災害発生の原因

  1. 玉切る時の作業者の立ち位置が反対側(曲がりの外側)だったこと。
  2. 応力を開放する切断の手順に問題があったこと。
  3. 経験の浅い者の理解が不十分な状態で造材作業を行わせたこと。
  4. 作業指揮者が指導したとおり作業をしていないにもかかわらず、作業指揮者が注意をしなかったこと。

災害の防止対策

  1. 応力が働いて弓状になっている伐倒木の玉切りは、圧縮側(曲がりの内側)に立って玉切ること。
  2. 応力が働いて弓状になっている伐倒木の玉切りの手順は、圧縮側にイラストのように切り込みを入れて反発力を弱めてから、引張り側を切ること。
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  3. 経験の浅い者に危険な作業をさせるときは、作業手順、作業方法を理解しているか確認してから、作業を行わせること。
  4. 経験の浅い者に危険な作業を行わせる場合は、作業指揮者はその場で指導するように、作業場所から離れないこと。
  5. 経験の浅い者に作業を行わせる場合は、作業者の技量に応じた作業を行わせること。

〈チェーンソーによる伐木等作業の安全に関するガイドライン〉(該当項目抜粋)

6 作業計画等
(1)調査及び記録
(2)リスクアセスメント及びその結果に基づく措置の実施等
(3)作業計画
(4)作業指揮者
8  チェーンソーを用いて行う造材の作業
(1)造材作業に伴う基本的な安全確保対策
(2)枝払い作業
(3)玉切作業

〈林業・木材製造業労働災害防止規程〉(抜粋)

第2章 チェーンソーによる作業
 第3款 チェーンソーによる造材作業
(作業者の指名)
第 65 条 会員は、安衛則第36 条第8号に係る特別教育修了者のうちから技能を選考のうえ、会員が指名した者でなければ風雪等により転倒した木、又は折損した木であって、乱積(やがら)になったものの造材の業務に就かせてはならない。
(原木の転落防止)
第 66 条 会員は、造材の作業を行う場合には、作業者に、造材しようとする原木が転落する危険がないかを点検させ、転落する危険が予想されるときは、杭止め等の措置を講じさせなければならない。
2  会員は、玉切りした原木が転落するおそれがある場合には、作業者に、その原木を安定した位置に移すこと等の措置を講じさせなければならない。
(障害物の取り除き)
第 67 条 会員は、造材の作業を行う場合には、作業者に、おの、のこぎり、チェーンソー等の操作を阻害するおそれのあるかん木、枝条等を、あらかじめ、取り除かせなければならない。
(作業者の位置等)
第 68 条 会員は、斜面で玉切りの作業を行う場合において、原木を切り落とすときは、作業者に、原木の上方で作業を行わせ、かつ、作業者に、足先を原木、チェーンソーの下に入れさせてはならない。
(枝払い作業)
第 69 条 会員は、枝払いの作業を行う場合には、作業者に、地面に接して原木を支えている枝は、玉切りをし、原木を安定させた後に、切り払わせなければならない。
2  会員は、複数の作業者に、同時に同一の原木の枝払い作業をさせてはならない。