災害事例研究 No.140 【林業】
不整地運搬車がバックして法面に乗り上げて横転し、運転者が投げ出され、下敷きになった
不整地運搬車の荷台を上げながらバックして、右側のクローラを法面に乗り上げて横転し、運転者が投げ出されて運搬車の下敷きに。
災害の発生状況
当日、被災者は他の作業者と作業道開設のため先行伐倒をしていたが、作業道の掘削残土を尾根筋の作業道へ盛土を行う作業を行うことになった。
被災者は、バケット2~3杯分(推定1.5トン)の残土を積んだ「走行集材機械」(最大積載量4トン)を運転して作業道を登りながら荷台を上げ残土を下ろしていた。
ただ、このとき使用していた「走行集材機械」は、支柱の内側に鉄板のあおりを入れ土砂を運搬できるようにしていたことから、災害発生時は走行集材機械ではなく、不整地運搬車に該当するものであった。
残土を降ろした後、荷台を上げたままその残土の上を後進したところ、不整地運搬車の右側(山側)のクローラが法面に乗り上げて左側に転倒した。
横転した反動で運転席から投げ出された被災者が車体の下敷きとなり、地面と運転席のフレームの間に腰を挟まれて出血性ショックで死亡した。
不整地運搬車を運転していた被災者は、走行集材機械の運転の業務にかかる特別教育は修了していたものの、不整地運搬車(最大積載量1トン以上)にかかる技能講習は修了していなかった。
〈参 考〉
走行集材機械で不整地運搬車と同等の機能を有するものを土砂運搬用に使用する場合は、車両系荷役運搬機械等の不整地運搬車となり、最大積載量が1トン未満は特別教育(安全衛生特別教育教育規程第8条の3)、1トン以上は技能講習の修了が必要(不整地運搬車運転技能講習規程第2条)です。
災害発生の原因
- 不整地運搬車を後進させる際、右側のクローラを法面に乗り上げてしまったこと。
(不整地運搬車の荷台を上げたまま後進したため、運転席から車体後部が見えにくかったこと、また重心が高かったこともその要因と考えられる。) - 不整地運搬車を運転するために必要な資格を有していなかったこと。
- 走行集材機械及び作業道開設に係る不整地運搬車の作業計画を定めていなかったこと。
- シートベルトを着用していなかったこと。
(シートベルトを着用していれば、運転席から投げ出されなかった可能性が高い。)
災害の防止対策
- 不整地運搬車を走行させる場合は、荷台を下げること。
また、走行路の幅をできるだけ広くとり、狭いところについては表示をすること。後進する場合は、運転者が周囲を十分確認するか、必要であれば誘導者を配置すること。 - 不整地運搬車の運転に必要な資格を取得させ、車両系荷役運搬機械等に関する安全措置を講じさせること。
- 走行集材機械及び作業道開設に係る不整地運搬車の作業計画(作業内容や転倒防止等)及び作業指揮者を定め、作業指揮者に作業計画に基づき、作業の指揮を行わせること。
- シートベルトを着用すること。
〈労働安全衛生規則)
(作業計画)
第151条の3 事業者は、車両系荷役運搬機械等を用いて作業(不整地運搬車又は貨物自動車を用いて行う道路上の走行の作業を除く。以下第151条の7までにおいて同じ。)を行うときは、あらかじめ、当該作業に係る場所の広さ及び地形、当該車両系荷役運搬機械等の種類及び能力、荷の種類及び形状等に適応する作業計画を定め、かつ、当該作業計画により作業を行わなければならない。
2 前項の作業計画は、当該車両系荷役運搬機械等の運行経路及び当該車両系荷役運搬機械等による作業の方法が示されているものでなければならない。
3 事業者は、第1項の作業計画を定めたときは、前項の規定により示される事項について関係労働者に周知させなければならない。
(作業指揮者)
第151条の4 事業者は、車両系荷役運搬機械等を用いて作業を行うときは、当該作業の指揮者を定め、その者に前条第一項の作業計画に基づき作業の指揮を行わせなければならない。
(転落等の防止)
第151条の6 事業者は、車両系荷役運搬機械等を用いて作業を行うときは、車両系荷役運搬機械等の転倒又は転落による労働者の危険を防止するため、当該車両系荷役運搬機械等の運行経路について必要な幅員を保持すること、地盤の不同沈下を防止すること、路肩の崩壊を防止すること等必要な措置を講じなければならない。
2 事業者は、路肩、傾斜地等で車両系荷役運搬機械等を用いて作業を行う場合において、当該車両系荷役運搬機械等の転倒又は転落により労働者に危険が生ずるおそれのあるときは、誘導者を配置し、その者に当該車両系荷役運搬機械等を誘導させなければならない。
3 前項の車両系荷役運搬機械等の運転者は、同項の誘導者が行う誘導に従わなければならない。