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災害事例研究 No.142 【林業】

伐木作業中にチェーンソーバーが挟まったので、木材グラップル機で立木を押して抜こうとしたところ、立木が突然倒れて地面に当たって跳ね返り、被災者に激突

 スギ皆伐現場において、追い口を切断中にチェーンソーバーが挟まり抜けなくなったことから、バーを抜くために木材グラップル機の作業ヘッドで当該立木を受け口方向に押したところ、立木が腐朽していたこともあって、突然倒れて地面に当たった反動で跳ね返り、被災者に激突した。

災害の発生状況

 当日は2名のチェーンソーマンが離れて伐倒作業をし、木材グラップル機による集材、枝払い、玉切り、運材等を他の3名が実施していた。
 被災者は、チェーンソーにより胸高直径40cm、高さ約30mのスギ立木を緩やかな斜面の上方に伐倒するために、受け口を切り、追い口を切断していたところ、チェーンソーバーが挟まって抜けなくなってしまった。
 その状況を見ていた木材グラップル機の運転者がチェーンソーマンに合図し、チェーンソーのバーを抜こうとして、当該立木に近づき木材グラップル機のアームを伸ばして当該立木を追い口方向から受け口方向に押したところ、当該立木が受け口方向に突然倒れ、地面にバウンドして元口が下方に1m以上引き戻されるように跳ねて被災者に激突した。
 伐倒木は中心部分が腐朽する芯腐れの状態であり、受け口の会合線も合致しておらず、受け口も伐根径の半分程度まで深く切り込まれていた。
 現場における車両系木材伐出機械作業計画の作成、作業指揮者の選任等は行われておらず、危険範囲への立入禁止措置も実施されていなかった。
casestudy142

災害発生の原因

  1. 伐倒木の芯腐れの状態が事前に十分確認されていないこと。
  2. 芯腐れしている立木であるのに、受け口の深さが伐根径の半分程度まで切られており、受け口と追い口の間の切り残し(つる)幅が少ないことと、受け口の水平切りと斜め切りが不一致であり、不適正な伐倒を行っていたこと。
  3. 芯腐れの程度にもよるが、くさびを使用してノコ道を開く等、くさびによる伐倒をしなかったこと。
  4. 木材グラップル機で伐倒木を押すなどの行為は、車両系木材伐出機械の主たる用途以外の使用であること。
  5. 車両系木材伐出機械作業の下方等、原木等の転落、滑落等の危険のある箇所に労働者を立ち入らせたこと。
  6. 車両系木材伐出機械作業を行う場合について、あらかじめ作業計画を策定し、関係労働者に周知する等を行わなかったこと。

災害の防止対策

  1. 腐朽が疑われた場合は、伐根部や幹部をハンマーでたたく、或いは幹部にチェーンソーを突き刺してみる等により確認すること。
  2. 腐朽が中心部まで広がっている場合は、受け口の深さは伐根直径の1/5~1/6程度とし、つるの機能の低下を防ぐこと。また、つる幅は、腐朽の程度に合わせて、幹の1/10~3/10程度を目安とすること。
  3. 芯腐れの状況がくさびを使用できる場合は、くさびを使用してノコ道を開き、またくさびにより伐倒すること。
  4. 車両系木材伐出機械で伐倒木を押し倒す等の主たる用途以外の使用を行わないこと。
  5. 車両系木材伐出機械作業の下方等、原木等の転落、滑落等の危険のある箇所には労働者を立ち入らせないこと。
  6. 車両系木材伐出機械作業を行う場合については、あらかじめ作業計画を策定し、関係労働者に周知すること。

〈安衛則)

(伐木作業における危険の防止)
第477条 事業者は、伐木の作業(伐木等機械による作業を除く。以下同じ。)を行うときは、立木を伐倒しようとする労働者に、それぞれの立木について、次の事項を行わせなければならない。
 一  伐倒の際に退避する場所を、あらかじめ、選定すること。
 二  かん木、枝条、つる、浮石等で、伐倒の際その他作業中に危険を生ずるおそれのあるものを取り除くこと。
 三  伐倒しようとする立木の胸高直径が二十センチメートル以上であるときは、伐根直径の四分の一以上の深さの受け口を作り、かつ、適当な深さの追い口を作ること。この場合において、技術的に困難な場合を除き、受け口と追い口の間には、適当な幅の切り残しを確保すること。
2 略
(主たる用途以外の使用の制限)
第151条の103 事業者は、車両系木材伐出機械を、木材グラップルによるワイヤロープを介した原木等のつり上げ等当該車両系木材伐出機械の主たる用途以外の用途に使用してはならない。
2  前項の規定は、ウインチ及びガイドブロツクを用いて運転者以外の方向にかかり木を引き倒すことによりかかり木を処理する場合等、労働者に危険を及ぼすおそれのない場合には、適用しない。
(立入禁止)
第151条の96 事業者は、車両系木材伐出機械を用いて作業を行うときは、物体の飛来等により労働者に危険が生ずるおそれのある箇所(当該作業を行っている場所の下方で、原木等が転落し、又は滑ることによる危険を生ずるおそれのある箇所を含む。)に労働者を立ち入らせてはならない。
(調査及び記録)
第151条の88 事業者は、車両系木材伐出機械を用いて作業を行うときは、当該車両系木材伐出機械の転落、地山の崩壊等による労働者の危険を防止するため、あらかじめ、当該作業に係る場所について地形、地盤の状態等並びに伐倒する立木及び取り扱う原木等の形状等を調査し、その結果を記録しておかなければならない。
(作業計画)
第151条の89 事業者は、車両系木材伐出機械を用いて作業を行うときは、あらかじめ、前条の規定による調査により知り得たところに適応する作業計画を定め、かつ、当該作業計画により作業を行わなければならない。
2  前項の作業計画は、次の事項が示されているものでなければならない。
 一 使用する車両系木材伐出機械の種類及び能力
 二 車両系木材伐出機械の運行経路
 三 車両系木材伐出機械による作業の方法及び場所
 四 労働災害が発生した場合の応急の措置及び傷病者の搬送の方法
3  事業者は、第一項の作業計画を定めたときは、前項第二号から第四号までの事項について関係労働者に周知させなければならない。

〈災防規程)

(受け口及び追い口)第61条
(くさびの使用)第62条
(用途以外の使用の制限)第92条
(立入禁止)第97条
(作業計画)第72条