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災害事例研究 No.146 【林業】

不整地運搬車で林道に砂利を敷き均す作業中、路肩から川床に転落

 幅員3.6メートルの林道が降雨のために傷みが酷く、伐採現場へ向かう途中に窪みが随所にできたため、被災者は不整地運搬車を使って近くの川から砂利を採取して窪みに敷き均す作業をしていた。林道が川を渡って直ぐの所で90度に曲がっていて狭隘な所にある窪みに砂利を敷いて、不整地運搬車を前後に動かして転圧をしていた時、不整地運搬車の履帯が路肩からはみ出して、バランスを崩して約10メートル下の川床へ転落した。

災害の発生状況

 災害発生当日、現場に7時30分頃に班長他3名が集合して作業開始前のミーティングをした。
 その後、班長は造材作業、被災者と同僚Aは傷んだ林道の補修作業、同僚Bは伐採作業に分かれて作業を始めた。
 現場は面積約7ヘクタールの間伐作業で、広範囲に作業箇所が分かれており、班長と同僚Bは被災者と同僚Aからは離れた所で作業を行っていた。
 Aは現場に続く林道に沿うように流れる川床で、バックホウにより川砂利を採取して不整地運搬車の荷台に積み込む作業をしていた。
 被災者は不整地運搬車(最大積載荷重5トン)を運転して砂利を林道の窪んだ所へ運び、敷き均す作業をしていた。
 11時40分頃に被災者は4回目の砂利を補修箇所へ運んでおり、その箇所は幅員が3.6メートル程で川に架かる橋を渡って、直ぐに90度に曲がる所であった。砂利を下ろして、狭隘な所で不整地運搬車を方向転換して、前後左右に移動させながらの均し作業をしていた(被災者の行動は現認されていないので推定)。
 川側の路肩部分はコンクリート擁壁で堅固なものであったが、この上部に土や草が被さって路肩が見えにくくなっていた。
 被災者がバック走行をした時、履帯が路肩部分からはみ出て、荷台側から後ろ向きに、約10メートル下の川床へ転落した。
 被災者は転落時投げ出され、川床に横転した不整地運搬車の下敷きになった。

災害発生の原因

  1. 災害発生は狭隘な所での均し作業中であり、路肩からの転落危険があるにもかかわらず、誘導員を配置せずに作業をしていたこと。
  2. 不整地運搬車を使用する作業では作業計画を作成して、この補修作業に対する安全確保を検討すべきであるが、綿密な打ち合わせができていないままで作業をしていたこと。
  3. シートベルトを着用していなかったために運転席から投げ出されたこと。
  4. 砂利の敷き均し作業ではバックホウを使った計画をしていたものの、バックホウ運転者が休んだため、被災者が判断して不整地運搬車を使って敷き均し転圧作業をしていたが、狭い林道で大型の不整地運搬車で均し作業をするには、後方の視界等が悪く、危険な状況であったこと。
  5. 朝礼時のミーティングで、KY活動ができてなく、当日の作業に対する安全確認が徹底できていなかったこと。
    casestudy146

災害の防止対策

  1. 転落の危険のある所での不整地運搬車を使った作業は誘導員を配置して、綿密な安全確認の下で作業を行うこと。
  2. 車両系建設機械または車両系木材伐出機械等を使用する場合にはリスクアセスメントを実施し、作業計画を作成して、事前に安全確認を徹底すること。
  3. 運転席から投げ出されないためにもシートベルトを着用すること。
  4. 被災者の発見が災害発生時から8時間程経過していることから、現場での異常事態が発生したことが早期に分かるように、作業現場内の定時の連絡体制を構築すること。
  5. 被災者の単独判断による単独行動が災害の要因になっていることから、作業開始時に各作業者の作業内容を確認し、不安全な作業を行わないようにすること。
  6. 均し作業等は機械の特性や現場の環境に応じたものを選択して、安全確保を徹底すること。

〈労働安全衛生規則〉

(作業計画)
第151条の3 事業者は、車両系荷役運搬機械等を用いて作業(不整地運搬車又は貨物自動車を用いて行う道路上の走行の作業を除く。以下第151条の7までにおいて同じ。)を行うときは、あらかじめ、当該作業に係る場所の広さ及び地形、当該車両系荷役運搬機械等の種類及び能力、荷の種類及び形状等に適応する作業計画を定め、かつ、当該作業計画により作業を行わなければならない。
2  前項の作業計画は、当該車両系荷役運搬機械等の運行経路及び当該車両系荷役運搬機械等による作業の方法が示されているものでなければならない。
3  事業者は、第1項の作業計画を定めたときは、前項の規定により示される事項について関係労働者に周知させなければならない。
(作業指揮者)
第151条の4 事業者は、車両系荷役運搬機械等を用いて作業を行うときは、当該作業の指揮者を定め、その者に前条第1項の作業計画に基づき作業の指揮を行わせなければならない。
(転落等の防止)
第151条の6 事業者は、車両系荷役運搬機械等を用いて作業を行うときは、車両系荷役運搬機械等の転倒又は転落による労働者の危険を防止するため、当該車両系荷役運搬機械等の運行経路について必要な幅員を保持すること、地盤の不同沈下を防止すること、路肩の崩壊を防止すること等必要な措置を講じなければならない。
2  事業者は、路肩、傾斜地等で車両系荷役運搬機械等を用いて作業を行う場合において、当該車両系荷役運搬機械等の転倒又は転落により労働者に危険が生ずるおそれのあるときは、誘導者を配置し、その者に当該車両系荷役運搬機械等を誘導させなければならない。
3  略