災害事例研究 No.14 【林業】
小径木を斜め切りで伐倒して方向が変わり、退避中に転倒してチェーンソーで被災した
被災者は当日、民有林においてヒノキ小径木の切り捨て間伐作業に従事していた。間伐対象木が小径木であったことから、いわゆる「斜め切り」で切り倒していたところ、切り倒した伐倒木の伐倒方向が、突然変わって被災者側に倒れてきたので逃げようとしたとき、つまずき転倒、その際、回転していたチェーンソーの刃先で右膝を切傷したもの。
災害発生の状況
作業者3名は、自動車1台に同乗して午前7時10 分に現場に到着した。その後、全員で作業準備と作業打合せを行ったが、現場責任者からの安全に関する指示はなかった。
午前中の作業は、チェーンソーによる伐木、チェーンソーによる枝払い、グラップルの操作を午前11時過ぎまで分担して行った。作業中の天候は降雪であった。
午後0時30分から午後の作業に着手し、午後の作業時は晴れていた。
午後も同じ作業分担で行われたもので、被災者は午後2時30分頃に作業場所の近くの道端に移動して、約10分、ソーチェーンの目立てを行った後、再び伐木作業を行っていた。
- 被災者は当日、民有林のヒノキの切り捨て間伐作業に同僚3人で従事していた。間伐対象木は元口が10 cm前後の小径木だったことから、正規の伐倒方法はとらず、受け口、追い口を設けないで直接、伐倒方向の反対側にチェーンソーを当て切り倒す、いわゆる「斜め切り」により間伐を行っていた。
- 当日、午前10 時頃、胸高直径8㎝、樹高8mのヒノキの間伐をいわゆる「斜め切り」により行っていたところ、チェーンソー操作の弾みで、一気に切り込んでしまい、チェーンソーを引き抜いて切り離したところ、直立していた立木が予定していた方向と正反対の被災者側に傾き倒れ始めた。このため被災者は身の危険を感じ、慌てて退避したが、退避路上の小枝等につまずき転倒、回転していたチェーンソーの刃先が右膝に接触し切創した。
災害発生の原因
- 小径木であったことから、正規の伐倒方法によらず、禁じ手である「斜め切り」で伐倒したため、伐倒方向が狂ったこと。
被災者は当日、民有林においてヒノキ小径木の切り捨て間伐作業に従事していた。間伐対象木が小径木であったことから、いわゆる「斜め切り」で切り倒していたところ、切り倒した伐倒木の伐倒方向が、突然変わって被災者側に倒れてきたので逃げようとしたとき、つまずき転倒、その際、回転していたチェーンソーの刃先で右膝を切傷したもの。 - 正規の伐倒方法でなかったため、ツルが機能せず、瞬時に倒れてきたため退避の余裕もなかったこと。
- 事前に退避場所を特定せず、加えて退避路の確保も行っていなかったこと。
- アイドリング状態で、ソーチェーンが回転するような調整を行っていたこと。
- 伐倒が終わった時点でエンジンのスイッチを切っていなかったこと。
- チェーンソー作業用防護衣が支給されていたが着用していなかったこと。
災害防止対策
- 小径木といえどもあなどらず、正規の伐倒方法(受け口、追い口、つるの確保)により、確実に行うこと。
- 伐倒前に退避場所及び退避路の確保を行っておくこと。
- スロットルレバーを離している状態(アイドリング状態)のときは、ソーチェーンが回転しないように調整すること。
- チェーンソー稼働時以外はエンジンのスイッチをその都度切っておくこと。
- チェーンソー作業防護衣は大変有効であり、是非着用すること。