災害事例研究 No.148 【林業】
路肩から走行集材機械ごと転落し、キャビンから放り出された
被災者は走行集材機械で原木玉切り材を積んで林道を走行中、路肩から転落し、キャビンから放り出され、その上に積載した原木が激突して死亡した。
災害の発生状況
当日は、午前8時30分から、4名でチェーンソー伐倒、ハーベスタ集材、造材、木材グラップル機とフォワーダで集材、バックホウでの作業道作設等を行っていた。
被災者は、フォワーダを運転し、集材箇所から作業道を約600m下って、林道をさらに進行して土場に向かっていたが、途中の直線道路で路肩からフォワーダごと転落した。当日1回目の集材作業であったことから、災害発生時間は午前9時30分と推定されている。
転落距離は路肩から約17mであり、途中で被災者はキャビンから放り出され、その上に運搬していた材(ナラ、クリ等で径20cm程度、長さ2~3m、約60本)の一部が覆いかぶさり、下敷きとなったものである。
フォワーダの幅は2.5m、長さは5.0mであるが、平成4年頃の製造であり、シートベルトは備わっていなかった。また、転落後、当該機械は履帯を上にした状態であったが、キャビンは潰れていなかった。
転落箇所の林道はほぼ直線、かつ平坦であり、幅は3.3m、路肩は長さ14mに亘って堅固なコンクリート擁壁となっていた。
被災者以外の3名は、チェーンソー作業、集造材作業、作業道作設作業等を先山で行っており、休憩も昼食も別々に取ることとなっていたため、被災者の災害発生に気付くのが遅れる原因となった。
作業箇所は携帯電話の通信圏外であり、また、トランシーバー等の無線機器も配備されていなかった。
その後、現場責任者は被災者を探しつつ下山し、午後3時頃に材の下敷きになっている被災者を発見した。
災害発生の原因
- 運行経路を走行中に何らかの原因でフォワーダごと路肩から転落したこと。
- シートベルトを具備している走行集材機械を使用するように努めていなかったこと。
- 現場の状況に応じた緊急連絡体制が確立されていなかったこと。
- 作業計画が策定されていなかったこと。
災害の防止対策
- 転倒時保護構造を有し、かつ、シートベルトを具備している車両系木材伐出機械を使用するように努めること。また、運転者はシートベルトを適切に装着すること。
- 林業現場では、携帯電話の通信圏外となる状態が多いことから、トランシーバー等現場の状況に応じた通信機器を配備すること。
また、定期的に連絡を入れる等により無事を確認する等、不測の事態に備えること。 - 車両系木材伐出機械作業を行うときは、あらかじめ作業計画を策定し、災害が発生した場合の応急の措置、搬送の方法等も検討して明確にし、関係労働者に周知すること。
- 車両系木材伐出機械の運行経路について、転落等による危険を防止するため、幅員、路肩の状況、岩石等の障害物、運転能力、車両の性能、健康状態等に係るリスクアセスメント等によるリスク低減対策に努めること。
〈労働安全衛生規則〉
(作業計画)
第151条の89 事業者は、車両系木材伐出機械を用いて作業を行うときは、あらかじめ、前条の規定による調査により知り得たところに適応する作業計画を定め、かつ、当該作業計画により作業を行わなければならない。
2 前項の作業計画は、次の事項が示されているものでなければならない。
一 使用する車両系木材伐出機械の種類及び能力
二 車両系木材伐出機械の運行経路
三 車両系木材伐出機械による作業の方法及び場所
四 労働災害が発生した場合の応急の措置及び傷病者の搬送の方法
3 略
(転落等の防止等)
第151条の93事業者は、路肩、傾斜地等であって、車両系木材伐出機械の転倒又は転落により運転者に危険が生ずるおそれのある場所においては、転倒時保護構造を有し、かつ、シートベルトを備えたもの以外の車両系木材伐出機械を使用しないよう努めるとともに、運転者にシートベルトを使用させるように努めなければならない。
〈林業の作業現場における緊急連絡体制の整備等のためのガイドライン〉
3 緊急時における連絡体制等の整備
(1)緊急時における連絡の方法等の決定、周知
事業者は、作業現場の位置、作業内容、作業方法、作業現場に持ち込む通信機器、作業現場で利用できる連絡の手段等を勘案し、あらかじめ、緊急時(労働災害の発生時、労働者の所在不明時等をいう。)に対処するため必要な次の事項について定めるとともに、その内容を関係労働者に周知させること。
ア 移動体通信(携帯電話(スマートフォンを含む。)及びPHS(以下「携帯電話等」という。))又は無線通信(トランシーバーを含む。以下同じ。)による通信が可能である範囲
イ 伐木等の作業を個々の労働者が行う場所(以下「作業場所」という。)における作業中の労働者相互の連絡の方法
ウ 緊急時における作業場所と山土場、休憩場所、通信機器設置場所等連絡の際の拠点となる場所(以下「山土場等」という。)との連絡の方法
エ 労働災害発生時における山土場等から事業場の事務所、消防機関等救急機関への連絡の方法
オ 緊急車両の走行が可能である経路
カ 労働災害発生時における被災労働者である傷病者(以下「傷病者」という。)が緊急車両に乗車することが可能である場所