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災害事例研究 No.150 【林業】

トラッククレーンで丸太の積込作業中、抜け落ちた丸太に激突し、斜面を転落

 作業道の路肩に集材された丸太をトラッククレーンで積込作業中、吊り荷(丸太)が抜け落ち頭部に激突し、そのはずみで作業道路肩より、6メートル下方へ転落した。

災害の発生状況

 被災者は、作業道の路肩に造材された丸太(ヒノキ材:直径35cm、長さ3メートル)を運搬するため、トラッククレーン(小型移動式クレーン)を使用して丸太の積込作業にとりかかった。トラッククレーンは吊り上げ荷重2.8トン、荷台の最大積載重量は4トンであった。被災者は1人で丸太2本を吊るために、ナイロンスリング(玉掛用具)1本により丸太2本を玉掛けして一端をクレーンのフックに掛けた後、手持ちのクレーン操作用ラジコンスイッチを押し、高さ1.8メートル程まで吊り上げ、荷台方向へ旋回操作をした。その直後、やや傾きながら吊り上がった丸太が旋回操作で1本が抜け落ち、丸太の一端が被災者の頭部に激突し、そのはずみで作業道路肩より下方へ約6メートルを転がり落ち重傷を負ったものである。
casestudy150

災害発生の原因

  1. 安全な場所まで退避せずにクレーンを操作したこと。
  2. 吊り上げた時に丸太がやや傾きながら吊り上がった状態であったにもかかわらず、そのまま旋回させたこと。
  3. 被災者は、小型移動式クレーン運転技能講習の資格はあったが、玉掛け技能講習の資格は有していなかったこと。
  4. トラッククレーンによる作業の方法等を、あらかじめ定めていなかったこと。
  5. 作業道上でのトラッククレーンによるクレーン作業であったのに、アウトリガーを張り出して固定していなかったため、吊り荷が安定性を欠き、クレーン旋回時に振れやすかったこと。

災害の防止対策

  1. クレーンを操作する時は、安全な場所に退避してから操作すること。
  2. 丸太が地面を離れたら一旦停止し、吊り荷の状態が安全であることを確認し不安定な状態となっている場合は、一旦地上に降ろして木直しをして安定させること。
  3. 丸太を旋回させる時は、丸太が安定していることを確認した後に、徐々に旋回させるように操作をすること。
  4. 玉掛け作業には、十分な知識を有する玉掛け技能講習の資格を有する者を就けること。
  5. トラッククレーンによる丸太の積込作業を行うときは、あらかじめ作業方法を定めて関係労働者に周知しておくこと。
  6. 作業道の路盤の状況に応じて、トラッククレーンのアウトリガーの張り出し、鉄板等の敷設の措置を講じて、吊り荷の安定性を確保すること。

〈労働安全衛生法 : クレーン等安全規則〉

(作業の方法等の決定等)
第66条の2 事業者は、移動式クレーンを用いて作業を行なうときは、移動式クレーンの転倒等による労働者の危険を防止するため、あらかじめ、当該作業に係る場所の広さ、地形及び地質の状態、運搬しようとする荷の重量、使用する移動式クレーンの種類及び能力等を考慮して、次の事項を定めなければならない。
 一 移動式クレーンによる作業の方法
 二 移動式クレーンの転倒を防止するための方法
 三 移動式クレーンによる作業に係る労働者の配置及び指揮の系統

 「移動式クレーンの転倒等」の等には、移動式クレーンの上部旋回体によるはさまれ、荷の落下が含まれること。「作業の方法」には、一度につり上げる荷の重量、荷の積卸し位置、移動式クレーンの設置位置、玉掛けの方法、操作の方法等に関する事項があること。(平4・8・24基発第480号)

(立入禁止)
第74条の2 事業者は、移動式クレーンに係る作業を行う場合であって、次の各号のいずれかに該当するときは、つり上げられている荷の下に労働者を立ち入らせてはならない。
 一 〜二  略
 三  ワイヤロープ等を用いて一箇所に玉掛けをした荷がつり上げられているとき。
 四~六 略

(就業制限)
第221条 事業者は、令20条第16号に掲げる業務(制限荷重が1トン以上の玉掛の業務)については、次の各号のいずれかに該当する者でなければ、当該業務に就かせてはならない。
 一 玉掛け技能講習を修了した者
 二~三 略