災害事例研究 No.165 【林業】
草刈中に蜂に刺され、重症アレルギー反応で死亡
公道脇で草刈り作業を行っていたところ、蜂に刺されたため、市販薬を塗って作業を続けていた。数時間後、再び蜂に刺され、同様の処置をしたが、容体が急変し、搬送した病院で死亡した。
災害の発生状況
1m程の高さの草木が生い茂っている公道脇において、同僚数名と刈払機を使って草刈り作業を行っていたところ、左腕を蜂に刺されたため、市販薬を塗って、作業を続けていた。3時間程経過後、再び右腕を刺されたことから、同様の処置をしたが、せきや嘔吐の症状が出るなど容体が急変し、病院へ搬送したが、死亡した。死因は、重症アレルギー反応(アナフィラキシーショック)を引き起こしたものである。
被災者は、薄手の長袖シャツと長ズボン、手袋を着用していた。
災害の発生原因
- 刈払機のエンジン音で蜂が発する威嚇音が聞こえなかったため、近くに蜂がいることに気づかなかったこと。
- 被災者が医師の検査により、アナフィラキシーショック症状者であるかどうか把握していない状況の中で、最初に蜂に刺された段階で医師の診療を受けなかったこと。
- 予め医師による自己注射器の処方(エピペンの所持)を受けていなかったこと。
災害の防止対策
- 防蜂網、防護手袋を着用する。
- 医師の検査結果から自己注射器の処方(エピペンの所持)を受けていない者が蜂に刺された場合は、直ちに作業を中止し、医師による診療を受けること。
- 下刈り作業のように蜂に刺されるおそれが高い作業では、しかるべき医師の検査結果から自己注射器の処方(エピペンの所持)を予め受けて携行すること。
- 発疹、流涙、せき、嘔吐等アナフィラキシーショックの症状が出たときには、直ちに自己注射器(エピペン)を使用するとともに、注射後は直ちに医師による診療を受けること。
蜂に刺されたときの処置
1 蜂に刺された場合は、木陰等に避難し、蜂の毒針が残っていたら、直ちに引き抜く。
2 できるだけ早く蜂毒吸引器で毒を吸い出す。
3 刺された箇所をきれいな水で洗う。
4 抗ヒスタミン軟膏を塗る。
5 発疹、流涙、せき、嘔吐等の症状がある場合は、一刻も早く医師の手当てを受ける。
6 アナフィラキシーショックが疑われる場合は、速やかに自己注射器を使用する。
〈林業・木材製造業労働災害防止規程〉
第233条 会員は、造林作業を行う場合には、作業者に、次の各号に掲げる事項を守らせなければならない。
(1) 略
(2) 保護帽を着用すること。
(3) 必要に応じ、呼子を携帯させるとともに、防蜂網、保護眼鏡、すね当て、防護衣等を着用すること。