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災害事例研究 No.168 【林業】

かかり木に浴びせ倒しを行い、浴びせ倒しをした木に激突

スギの伐倒作業を行っていたところ、かかり木となり、かかり木に、別のスギを浴びせ倒したところ、浴びせ倒した木の元口が跳ね上がり、被災者に激突した。

災害の発生状況

 被災者は、人工林の皆伐のため、スギA(伐根直径28cm、樹高27m)の伐倒作業を行っていたところ、別のスギにかかり木となった。
 そこで、被災者は、スギB(伐根直径26cm、樹高25m)を伐倒し、スギAに浴びせ倒しをしたところ、スギBがスギAに激突し、その反動でスギBの元口が跳ね上がり、被災者に激突したと推定された。被災位置は、スギBの伐根から約1.3m離れた地点であった。
 スギBの伐倒時には、くさび1本を使用した形跡があった。
 スギAの受け口底部と追い口の間の高さは約5cm、残されたつる幅は約1cmと狭かった。
 地形はほぼ平坦で、前日までに、事故現場手前までは皆伐が終了し開放地となっていたが、かかり木となったスギAは立木が残っている側に受け口が切られ、伐倒されていた。
 なお、被災者は年齢60歳代、経験年数13年であった。

災害の発生原因

  1. かかり木を浴びせ倒しにより外そうとしたこと。
  2. 迅速な退避を行わなかったこと。
  3. かかり木となった木の伐倒時に、受け口と追い口の間のつる幅が十分に残されていなかったことから、つるが機能せず、伐倒方向が変わってかかり木となったこと。
  4. 皆伐を行ってきた開放地側に伐倒することが可能であったのに、立木が残っている側に伐倒方向を選定し、かかり木を発生させたこと。

災害の防止対策

  1. かかり木を外すために、別の木による浴びせ倒しを行わないこと。
  2. 事前に適切な退避場所を選定し、倒れ始めたら直ちに迅速な退避を行うこと。
  3. 受け口と追い口の間のつる幅は伐根直径の10分の1程度を目安として切り込み過ぎないようにすること。
  4. 伐倒方向をかかり木が発生しにくい開放地側にする等、事前にリスクアセスメント等を実施し、安全な伐倒方向を選定すること。

〈労働安全衛生規則〉
(伐木作業における危険の防止)
第477条 事業者は、伐木の作業(伐木等機械による作業を除く。以下同じ。)を行うときは、立木を伐倒しようとする労働者に、それぞれの立木について、次の事項を行わせなければならない。
一 伐倒の際に退避する場所を、あらかじめ、選定すること。
二 略
三 伐倒しようとする立木の胸高直径が20センチメートル以上であるときは、伐根直径の4分の1以上の深さの受け口を作り、かつ、適当な深さの追い口を作ること。この場合において、技術的に困難である場合を除き、受け口と追い口の間には、適切な切り残しを確保すること。
2 立木を伐倒しようとする労働者は、前項各号に掲げる事項を行わなければならない。

(かかり木の処理の作業における危険の防止)
第478条
1 略
2 事業者は、前項の規定に基づき労働者にかかり木の処理を行わせる場合は、かかり木が激突することによる危険を防止するため、かかり木にかかられている立木を伐倒させ、又はかかり木に激突させるためにかかり木以外の立木を伐倒させてはならない
3 略

〈林業・木材製造業労働災害防止規程〉
(かかり木の処理)
第54条
1 略
2 作業者はかかり木の処理について、次のアからオまでに掲げる事項を行ってはならない。
ア 略
イ 他の立木を伐倒し、かかり木に激突させることにより、かかり木を外すこと
ウ~オ 略

(退避場所の選定)
第59条 会員は、伐木の作業を行う場合には、作業者に、あらかじめ、退避場所を選定させ、かつ、伐倒の際に迅速に退避させなければならない
2 略

(受け口及び追い口)
第61条 会員は、チェーンソーによる伐木の作業を行う場合には、作業者に、それぞれの立木について、次の各号に掲げる事項を行わせなければならない。
(1)~(3) 略
(4) 追い口切りの切り込みの深さは、つるの幅が伐根直径の10分の1程度残るようにし、切り込み過ぎないこと。