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災害事例研究 No.21 【林業】

刈払機による下刈り作業中、キックバックを起こした刈刃で左足脹脛(ふくらはぎ)を切創

 過去の台風により発生した風倒木被害跡地に植栽したスギ3年生の下刈り作業に従事中、新生植栽木の近くにあった風倒木伐根に刈払機刈刃の手前側が接触しキックバックが発生。このため左足脹脛の内側を切創、全治1カ月の傷を負った。

災害発生の状況

  1. 当日、被害者は、外径230 mm のチップソーを装着した肩掛式ツーグリップ刈払機を用いて、林地の平均傾斜約15度、林齢35年の人工造林地に発生した風倒木被害跡地に、新植したスギ3年生の下刈り作業を1人で実行していた。
  2. 作業は植栽木のやや上側を歩行線とし、山側約80cm、谷側約50cmの刈幅で等高線方向に刈り進み、平均樹高55cmに成長した植栽木の周縁は操作捍手前で木を押圧しつつ、刈刃を反時計回りに一周させて処理していた。
    なお、この作業の便を図ろうとして、飛散防護カバーは外した状態であった。
  3. 被災時、前記2の周縁処理対象の植栽木の手前30cmの位置に直径25cm、高さ30cmの伐根があることから、作業がスムーズに行えないと判断。立ち位置を約40 cm下方に移して刈払機を肩掛け金具から外し、ほうき状に持ち替え操作した。
  4. その際に、飛散防護カバーを外していた刈刃の手前側が伐根に当たって、キックバックを起こし、やや踏み出していた左足すね当てを外れ、脹脛(ふくらはぎ)内側を切創した。

災害発生の原因

  1. 飛散防護カバーを外した状態で作業をしたこと。当該カバーは、切削物が作業者側に飛散することを防止すると同時に、刈刃手前側が異物と接触する事態をも防いでいる。
  2. 刈払機を肩掛け金具から外して使用したこと。さらに、右手掌を上向き、左手掌を下向きにしたほうき状に持った状態であったこと。
  3. 刈り払い作業を切損してはならない植栽木と、堅い伐根がある間の狭い場所であったにも関わらず、キックバックやスベリを誘発しかねない状況で操作するに当たって、立ち位置の選択、刈刃を当てる方向等に慎重を欠いたこと。

災害防止対策

  1. 飛散防護カバーを正しく装着すること。雑草等の切削物が刈刃との間に詰まることを軽減しようと装着位置を刈刃から相当離している例も見受けられるが、飛散防護カバーを外したり装着位置をずらしたりしてはいけない。
  2. 刈払機の装着に当たっては、肩掛け装具を正しく着用して、金具に吊るすこと。肩掛けバンド、腰バンドは確実に固定する必要がある。ツーグリップ刈払機では、しばしば両手保持状態でほうき状に持ち替えて操作を行う場合があるが、絶対に行ってはならない。
  3. 植栽木と雑草との競合状態によっては、歩行線を植栽木の中間にとって植栽木の直近は敢えて雑草を刈り残す作業方法の選択も検討すること。
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