災害事例研究 No.170 【林業】
間伐木を集材しようとスイングヤーダのウインチで牽引したところ、前に伐り捨てられた間伐木が引っ掛かり跳ね上がって被災者に激突
間伐木を下げ荷集材するため、被災者は荷掛け作業を同僚はスイングヤーダのウインチにより集材作業を行っていた。スイングヤーダの運転者は、被災者が荷掛けをして退避したことを確認したとしてウインチにより巻取りを行ったところ、台付けワイヤロープとの間に以前に伐り捨てされた間伐木が引っ掛かったが、運転者からは集材木の枝葉等により見えなかったため、ウインチによる牽引を続けたところ、間伐木が立木に当たって、立木を支点に跳ね上がって、退避していた被災者に激突した。
災害の発生状況
間伐木を林道まで傾斜地を下げ荷集材するため、被災者は林内で荷掛けを行い、スイングヤーダの運転者がスイングヤーダのウインチにより集材を行っていた。
運転者は、被災者が集材木に荷掛けを行い退避を確認したとして、ウインチにより巻取りを開始した。集材開始後、集材木と台付けワイヤロープとの間に、10数年前に伐り捨てられた間伐木が引っ掛かってしまったが、運転者からは集材木の枝葉等の陰になり見えなかったため、ウインチによる操作を続けた。
その後、間伐木は立木の根元に引っ掛かった状態となったが、運転者は前述の集材木の枝葉で確認できない状況であったのでウインチによる操作を続けたため、立木を支点に間伐木が跳ね上がり、退避していた被災者の頭部に激突した。
災害の発生原因
- 荷掛け者の合図が最優先なのに、荷掛け者による合図は行われず、運転者独自の判断で作業を行ったこと。
- 集材に支障となる地表障害物(以前に伐り捨てられた間伐木)を事前に処理していなかったこと。
- 集材作業に支障となる状況や障害物に当たるなどが発生したにもかかわらず、そのまま牽引し続けたこと。
- 荷掛け者が安全な退避場所を選定していなかったこと。
- 集材木が立木、切株等の障害物に当たることも予想され、また、下げ荷集材であるのに、ガイドブロックの使用等により集材木を迂回させる措置がとられていなかったこと。
- 事前調査に基づく作業計画を作成していなかったこと。
災害の防止対策
- 荷掛け者からスイングヤーダ運転者に対し、集材木の状況等の必要連絡や合図を行えるよう、トランシーバー等を使用させること。
- 集材に支障となる地表障害物(以前に伐り捨てられた間伐木)は、集材作業の支障とならないよう事前に処理すること。
- 集材作業中に障害物等が引っ掛かったときは、集材作業を停止して、引っ掛かりの状態を外してから安全を確認の上、退避してから再開すること。
- 集材作業は、荷掛け作業者が下げ荷材の上方の安全に退避できる場所を選定すること。
- 傾斜地での下げ荷集材の場合には、集材木の伐根等との接触や滑落のおそれがあることも想定して、作業前に事前調査を行い、安全に作業できる作業計画を作成するとともに、当該作業の指揮者を定め、その者に作業計画に基づく作業の指揮を行わせること。
〈労働安全衛生規則〉
(調査及び記録)
第151条の88 事業者は、車両系木材伐出機械を用いて作業を行うときは、当該車両系木材伐出機械の転落、地山の崩壊等による労働者の危険を防止するため、あらかじめ、当該作業に係る場所について地形、地盤の状態等並びに伐倒する立木及び取り扱う原木等の形状等を調査し、その結果を記録しておかなければならない。
(作業計画)
第151条の89 事業者は、車両系木材伐出機械を用いて作業を行うときは、あらかじめ、前条の規定による調査により知り得たところに適応する作業計画を定め、かつ、当該作業計画により作業を行わなければならない。
2 前項の作業計画は、次の事項が示されているものでなければならない。
一 使用する車両系木材伐出機械の種類及び能力
二 車両系木材伐出機械の運行経路
三 車両系木材伐出機械による作業の方法及び場所
四 労働災害が発生した場合の応急の措置及び傷病者の搬送の方法
3 事業者は、第一項の作業計画を定めたときは、前項第二号から第四号までの事項について関係労働者に周知させなければならない。
(作業指揮者)
第151条の90 事業者は、車両系木材伐出機械(伐木等機械を除く。)を用いて作業を行うときは、当該作業の指揮者を定め、その者に前条第一項の作業計画に基づき作業の指揮を行わせなければならない。
(立入禁止)
第151条の96 事業者は、車両系木材伐出機械を用いて作業を行うときは、物体の飛来等により労働者に危険が生ずるおそれのある箇所(当該作業を行つている場所の下方で、原木等が転落し、又は滑ることによる危険を生ずるおそれのある箇所を含む。)に労働者を立ち入らせてはならない。
〈林業・木材製造業労働災害防止規程〉
(合図)
第124条 会員は、架線集材機械による作業について、作業者に、次の各号に掲げる事項を行わせなければならない。
(1) トランシーバー又は電話等の通信装置を使用する作業者に指名された者は、当該装置により必要な連絡と合図を行うこと。
(2) 合図は荷掛け者が主導権をもって行い、運転者はそれに従うこと。この場合、運転者は必ず応答の合図として復唱を行うこと。
(3) 略