災害事例研究 No.172 【林業】
積み込み作業中のフォワーダがバランスを崩し転落
作業道上でスギ丸太をフォワーダに積み込む作業を行っていたところ、フォワーダのバランスが崩れ、横転し、路肩から3m転落し、崩れたスギ丸太の下敷きとなった。
災害の発生状況
スギ人工林において、被災者は同僚3人と伐木造材及び運搬作業を行っていた。当日、被災者は、作業道上において、フォワーダの木材グラップル装置を使い、造材されたスギ丸太をフォワーダへ積み込む作業を行っていた。
スギ丸太をフォワーダの荷台に半分程度積み込んで作業を続けていたところ、フォワーダのバランスが崩れ、横転し、作業道の路肩から3mほど下方へフォワーダとともに転落した。被災者は、運転席から投げ出され、荷台に積んでいたスギ丸太が崩れ、その下敷きとなった。
災害の発生原因
- 被災者は、「走行集材機械の運転業務特別教育」が未修了者であったこと。
- 荷積みのバランスを欠いたことと木材グラップル装置で急激な旋回操作を行ったことから、フォワーダが横転したこと。
- 作業位置が谷側の路肩に寄りすぎていたこと。
- フォワーダへの荷積み方法を定めた作業計画を作成していなかったこと。
災害の防止対策
- フォワーダの運転手は、「走行集材機械の運転業務特別教育」修了者を作業に就かせること。
- 積み荷のバランスを十分に考慮して安定するよう積み込むこと。
- グラップル装置は急激な旋回操作は行わないこと。
- フォワーダへの積み込み作業は、作業道の谷側の路肩から少し距離をおいた水平な場所で行うこと。
- 作業計画を定め作業指揮者に作業の指揮を行わせなければならない。
〈労働安全衛生規則〉
(安全衛生教育)
第59条 事業者は、労働者を雇い入れたときは、当該労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、その従事する業務に関する安全又は衛生のための教育を行なわなければならない。
2 (略)
3 事業者は、危険又は有害な業務で、厚生労働省令で定めるものに労働者をつかせるときは、厚生労働省令で定めるところにより、当該業務に関する安全又は衛生のための特別の教育を行なわなければならない。
〈労働安全衛生規則〉
(特別教育を必要とする業務)
第36条 法第上第59条第3号項の厚生労働省令で定める危険又は有害な業務は、次のとおりとする。
六の三 走行集材機械(車両の走行により集材を行うための機械であって、動力を用い、かつ、不特定の場所に自走できるものをいう。以下同じ。)の運転(道路上を走行させる運転を除く。)の業務
(作業計画)
第151条の89 事業者は、車両系木材伐出機械を用いて作業を行うときは、あらかじめ、前条の規定による調査により知り得たところに適応する作業計画を定め、かつ、当該作業計画により作業を行わなければならない。
2 前項の作業計画は、次の事項が示されているものでなければならない。
一 使用する車両系木材伐出機械の種類及び能力
二 車両系木材伐出機械の運行経路
三 車両系木材伐出機械による作業の方法及び場所
四 労働災害が発生した場合の応急の措置及び傷病者の搬送の方法
3 事業者は、第一項の作業計画を定めたときは、前項第二号から第四号までの事項について関係労働者に周知させなければならない。
(使用の制限)
第151条の102 事業者は、車両系木材伐出機械を用いて作業を行うときは、当該車両系木材伐出機械の転倒若しくは逸走又はブーム、アーム等の作業装置の破壊による労働者の危険を防止するため、当該車両系木材伐出機械についてその構造上定められた安定度、最大積載荷重、最大使用荷重等を守らなければならない。
〈林業・木材製造業労働災害防止規程〉
(特別教育・職長教育の実施)
第20条 会員は、危険又は有害な次の業務に作業者を就かせるときは、関係法令に定めるところにより、特別の教育を行わなければならない。
(1)~(4) 略
(5) 走行集材機械の運転の業務
(6) 以下、略
(就業の制限)
第86条 会員は、次の各号に掲げる業務を行う場合には、それぞれ当該各号に掲げる特別教育を修了した者でなければ、当該各号に掲げる業務に就かせてはならない。
(1) 略
(2) 走行集材機械(車両の走行により集材を行うための機械であって、動力を用い、かつ、不特定の場所に自走できるものをいう。以下同じ。)の運転(道路上を走行させる運転を除く。)の業務(安衛則第36条第6号の3)安全衛生特別教育規程第8条の3
(3) 略
(積込み作業)
第137条 会員は、走行集材機械による作業を行う場合には、積込み作業について、作業者に、次の各号に掲げる事項を行わせなければならない。
(1) 走行集材機械に搭載している木材グラップル装置による積込み作業においては、以下の事項を守ること。
ア 車両は、水平にし、駐車ブレーキをかけた状態とすること。
イ 急激な旋回操作はしないこと。
ウ 木材グラップル装置の積込荷重の定格範囲内で作業を行うこと。
エ 原木をつかむ位置は、原木の重心点の近くとすること。
オ 原木を荷台に下ろすときは、他の作業者と連携を密にし、静かに下ろすこと。
(2)~(3) 略