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災害事例研究 No.176 【林業】

走行集材機械の荷台から降りた際に同機械の履帯の前に滑り落ち、それに気付かずに前進させた同機械に轢かれた

昼食休憩のため、先山にてチェーンソー伐倒していた2名の伐木作業者を走行集材機械(以下「集材車」という。)の荷台の搬出材の上に乗せ、土場近くまで下山させ、被災者は荷台から降りる際に集材車の履帯の前に滑り落ち、それを知らずに前進した集材車に轢かれた。

災害の発生状況

 伐木、搬出等作業を行っていた。午前中、先山で伐木等作業をし、昼の休憩のために土場に駐車した車両内で昼食、休憩をとるために、伐木作業者2名が11時40分頃集材車の荷台上の搬出材の上に乗って下山した。
 土場の近くで集材車が停止し、除雪した雪壁の上に当該2名は降車した後被災者が何らかの原因で雪壁の上から滑り落ち、集材車の履帯の前方に転落した。
 運転者は、そのことに気付かず、集材車を1m程度前進させたところ、悲鳴があり、直ぐに1m程度後進させたが、被災者は履帯で轢かれた。

災害の発生原因

  1. 集材車の荷台に作業者を乗せたことにより、集材車からの墜落、乗降時の転落、発進時の接触等の危険が生ずるおそれが増大していたこと。
  2. 集材車の運転者が行うべき合図を指差し呼称で確認し、他の作業者の退避を確認した後、クラクションの合図で発進を行う等がなされていないこと。
  3. 調査及び記録、作業計画に基づく運行経路や作業方法等を定め、関係作業者に周知していなかったこと。

災害の防止対策

  1. 集材車の荷台に労働者を乗せて走行させてはならないこと。
  2. 作業又は休憩時の移動に車両を利用する必要がある場合には、作業用車両の不適切な搭乗等を防止するため、その用途に適した車両を用意し、安全な使用方法を定めて利用させること。
  3. 集材車の運転者が行うべき合図を指差し呼称などで確認し、他の作業者の退避を確認した後、クラクションの合図を鳴らして、車両の発進をすること。
  4. 事前調査、リスクアセスメント等の実施結果を踏まえた車両系木材伐出機械の作業計画を作成するとともに、関係作業者に周知すること。
  5. 作業指揮者を定め、作業計画に基づき、作業の指揮を行わせること。

〈労働安全衛生規則〉
(合図)
第151条の117 事業者は、走行集材機械のウインチの運転について、一定の合図及び合図を行う者を定め、運転に当たっては、当該合図を使用させなければならない。
2 前項の走行集材機械のウインチの運転者は、同項の合図に従わなければならない。

(荷台への乗車制限)
第151条の119 事業者は、荷台を有する走行集材機械を走行させるときは、当該走行集材機械の荷台に労働者を乗車させてはならない。
2 労働者は、前項の場合において同項の荷台に乗車してはならない。

(接触の防止)
第151条の95 事業者は、車両系木材伐出機械を用いて作業を行うときは、運転中の車両系木材伐出機械又は取り扱う原木等に接触することにより労働者に危険が生ずるおそれのある箇所に労働者を立ち入らせてはならない。

(調査及び記録)
第151条の88 事業者は、車両系木材伐出機械を用いて作業を行うときは、当該車両系木材伐出機械の転落、地山の崩壊等による労働者の危険を防止するため、あらかじめ、当該作業に係る場所について地形、地盤の状態等並びに伐倒する立木及び取り扱う原木等の形状等を調査し、その結果を記録しておかなければならない。

(作業計画)
第151条の89 事業者は、車両系木材伐出機械を用いて作業を行うときは、あらかじめ、前条の規定による調査により知り得たところに適応する作業計画を定め、かつ、当該作業計画により作業を行わなければならない。
2 前項の作業計画は、次の事項が示されているものでなければならない。
一 使用する車両系木材伐出機械の種類及び能力
二 車両系木材伐出機械の運行経路
三 車両系木材伐出機械による作業の方法及び場所
四 労働災害が発生した場合の応急の措置及び傷病者の搬送の方法
3 事業者は、第一項の作業計画を定めたときは、前項第二号から第四号までの事項について関係労働者に周知させなければならない。

(作業指揮者)
第151条の90 事業者は、車両系木材伐出機械(伐木等機械を除く。)を用いて作業を行うときは、当該作業の指揮者を定め、その者に前条第一項の作業計画に基づき作業の指揮を行わせなければならない。

〈林業・木材製造業労働災害防止規程〉
第130条 会員は、走行集材機械による作業の合図については、作業者に、次の各号に掲げる事項を行わせなければならない。
(1) 走行集材機械の運転者は、合図を指差し呼称などで確認し、他の作業者が安全な位置に退避していることを確かめた後に、クラクションを鳴らして、ウインチの運転、車両の発進等を行うこと。

(搭乗の制限)
第132条 会員は、走行集材機械の走行時に乗車席以外の箇所(荷台を含む)に他の作業者を搭乗させてはならない。