災害事例研究 No.29 【林業】
グラップルが路肩に寄りすぎ石積擁壁が崩壊、運転者と搭乗者がグラップルとともに谷へ転落
グラップルを用い林道を整備中(同僚を重機に取り付けたグラップルに乗せチェンソーで枝払い中)、林道路肩の石積擁壁が崩れ、運転者と搭乗していた同僚がグラップルとともに25m下に転落、被災者と同僚は途中で投げ出され被災した。
災害発生の状況
- 当日、午前8時頃から幅員約4mの林道を間伐材の搬出に使うための補修(主に路面整地及び路面を被さっている枝条の整理)を3名で行っていた。
- 作業は被災者がグラップルを運転。同僚A が重機に取り付けたグラップルに乗り、チェンソーを使って林道に被さったスギの枝払いをする作業を行っていた。なお、同僚Bはグラップルの後ろから、枝条の片付けを行っていた。
- 10時10分頃作業を進めるうちに、林道路肩側の古い石積擁壁が重機の重量により崩壊し、林道(幅4m)が、がけ側から奥行き1.5m、長さ7.6mにわたってえぐれるように崩落し、グラップルが25m下に転落した。
このとき、運転者である被災者は搭乗していた同僚Aとともに斜面(傾斜45度)の途中に投げ出されて受災(被災者は死亡、同僚も肋骨を折る重傷)。
災害発生の原因
- 林道路肩側にある古い石積み擁壁がグラップルの重量により崩壊したこと。
- 崩壊の恐れがある地盤にもかかわらず、路肩に寄りすぎたこと(山側に1.5m寄れた)。
- 崩壊の恐れのある地盤にもかかわらず、必要な措置を講じなかったこと。
- 労働安全衛生規則第162条(とう乗の制限)及び同第164条(主たる用途以外の使用の制限)を守らなかったこと。
災害防止対策
- 車両系建設機械を用いて作業を行う時は、転落による危険を防止するため、あらかじめ地形、地質の状態を調査し、調査により知り得たところに適応する運行経路、作業方法を示した作業計画を定め、関係労働者に周知すること。
- 車両の転倒または転落による労働者の危険を防止し、路肩の崩壊を防止するためガードレール、標識等を設置すること、運行経路について十分な幅員を確保すること。また、転倒または転落により労働者に危険が生じるおそれのある時は、誘導員を配置し、その者に誘導させること。
- グラップルの使用に当たっては、関連法令を遵守すること。
- 運転者に対して作業開始前に危険予知活動を行うとともに、安全衛生教育を実施すること。
搭乗の制限(労働安全衛生規則)
(とう乗の制限)
第162条 事業者は、車両系建設機械を用いて作業を行うときは、乗車席以外の箇所に労働者を乗せてはならない。
(主たる用途以外の使用の制限)
第164条 事業者は、車両系建設機械を、パワー・ショベルによる荷のつり上げ、クラムシェルによる労働者の昇降等当該車両系建設機械の主たる用途以外の用途に使用してはならない。
2 (略)