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災害事例研究 No.30 【林業】

かかり木を外すため浴びせ倒しを行ったところ二重のかかり木となったため、かかられた木を伐倒していたところ、2本のかかり木が落下し激突された

 被災者は伐倒した木が、かかり木になったため、かかった木を外そうと続けてもう1本の木をかかり木に浴びせ倒した。しかし、その木もかかってしまい二重のかかり木となってしまった。さらに被災者は、かかられた木を伐倒しようと追い口を入れたが、かかった木が動き出し、同僚が大声を出して危険を知らせたが、待避する途中にかかった木2本が被災者を直撃した。

災害発生の状況

  1. 当日、被災者は国有林の40年生ヒノキの間伐、搬出作業のため6人で現場に入り3人一組で作業を始めた。作業内容は、チェーンソーで伐倒したあと、枝払い、玉切り造材してフォワーダで搬出作業を行っていた。被災者は同僚A、Bと3人で作業を行っていたが、災害時、同僚Bは伐倒木を引き寄せるワイヤーロープを取りに行って伐採現場を離れていた。
  2. 被災者が伐倒したヒノキの伐倒木(直径30cm、樹高約20m)が、かかり木となったため、被災者は最初、これを元玉切りで外そうとかかった木の1メートル50センチ程の高さのところに追い口を入れた。しかし途中で、このかかり木を元玉切りで外すのは無理と判断して元玉切りを中止し隣接しているヒノキ(直径約30cm、樹高約20m)を伐倒してかかり木に激突させて外す、いわゆる「あびせ倒し(投げ倒し)」を行ったが、それでもかかり木は外れず、あびせ倒したその木もかかってしまい二重のかかり木となってしまった。
  3. このため被災者は二重になってしまったかかり木を外すため、さらにかかられている木(ヒノキ40年生)を伐倒してかかり木を外そうとチェーンソーでかかられた木に追い口を入れ始めたところ、作業状況を見守っていた同僚Aがかかり木が動いていることに気づき大声を上げて被災者に危険を知らせた。被災者もそれに気づいたが、さらに上を見ながら追い口を切り続け、待避しようとしたところに、かかった伐倒木2本が落下して被災者を直撃した。

災害発生の原因

  1. かかり木処理作業において、禁止されている「あびせ倒し」を行ったこと。
  2. さらに、禁止されている「かかられている木の伐倒」作業を行ったこと。
  3. かかり木が動いているのにもかかわらず速やかに待避しなかったこと。
  4. かかり木にならないよう伐倒方向を確実にするためのくさびを使用しないで伐倒していたこと。

※ 本件災害は、かかり木が動いているにもかかわらず、即刻、退避しておらず、また、かかり木の「元玉切り」「浴びせ倒し」作業も行っており、危険作業であるかかり木処理についての危険意識が極めて乏しいことが災害要因の背景として上げられる。

災害防止対策

  1. かかり木が発生した場合には、かかっている木の径級、かかり木の状況、作業場所の状況、周囲の地形等を踏まえ、当該かかり木の処理作業について安全な作業方法で行うこと。
  2. かかっている木の直径が20cm程度未満の場合は、木回し、フェリングレバー、ターニングストラップ等を使用し、20cm程度以上の場合は、チルホール等のけん引具等を使用して外すこと。なお、場所、状況等によっては林内作業車や架線等の使用も検討すること。
  3. かかり木の発生後速やかに、当該かかり木の場所から安全に退避できる退避場所を選定し、当該かかり木が外れ始めたときは、速やかに退避すること。
  4. かかり木処理作業においては、かかられている木の伐倒、他の立木の浴びせ倒し、かかっている木の伐倒、肩担ぎ、枝切りは行ってはならないこと。
  5. かかり木の危険性、かかり木の処理方法、作業手順等について徹底した安全教育を実施すること。
casestudy030